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セールストークの力

4月2日、今日は夕方に両親が旅行から帰ってくる。

そして、マジックバックの返却日だ。

そのため、今日は新宿ダンジョンに行って、換金作業とマジックバックの中の物を全て出して返却する必要がある。

当然の如くカイムも付いてくると言い、電車が嫌なカイムだけは俺より先に飛び立っていた。



そして事件はヨドバシキャメラの前を通りかかった時に起きた。

大空より獲物を狙うハヤブサのようにカイムが急降下し俺の肩にとまる。

そして、左の翼を広げ、店の一角を指差した。


『主、儂はあれが欲しい。』


カイムが指?差したのはノートパソコンの一角だ。

カイムのおねだりに俺の顔が引きつる。


金の話ではない。

そうではなく、実は俺は極度の機械音痴なのだ。

完璧超人と比喩される俺の唯一の弱点、それが機械だ!

スマホの機能も電話とメールしか使えなかった。

最近ようやく検索が出来る様になった。

そもそもスマホは昔は無かったものだ。

無くても生きていける。

故に俺は自然派、ネイチャーの道を突き進む!


『儂はあれがいい。』


俺の妄想を打ち砕き、カイムが指差したのは世界のゾニーが出しているノートパソコンの最高級ランクのものだ。

値段は驚きの55万円。


『儂はあれがいい。』


再び繰り返されるカイムの言葉に、確固たる意志が込められているのが分かる。

俺が駄目だと言えば、こいつはここで何かをする。

それが何かは分からないが、間違いなく俺にとっては良くない事だ。

短い付き合いだが、こいつの行動が俺には分る。


「か、帰りでいいか?今だと荷物になる。」


『儂のアイテムボックスに入れれば済む話だ。』


交渉ごとで鳥に勝てない・・・。


「い、今は手持ちが無いんだよ!言わせるなよ!」


『おお、これは儂としたことが失礼した。無論、帰りで問題無い。』


とりあえず、新宿ダンジョンに向う。

もはや、自衛隊の人とも顔見知りだ。

挨拶をすませ、中に入ると小さなおっさんが暇そうにしている。

待ってろ!今、働かせてやるからな・・・。


挨拶して部屋に入る。

カイムはさっそく俺のスマホをいじりだしたので、そのまま放っておく。

マジックバックからまずは今回のダンジョンアタックのために購入しておいた、食料や水を纏めて部屋の隅に出す。

そして、机の上にボスの魔石と宝箱から手に入れたアイテムを取り出す。

紫、黒、黄色と机の上に毒々しい色の液体の入った瓶が並ぶ。

圧巻は21階のボスであったシャークスネークという蛇とサメの合体した魔物の所で出たアイテムだ。

こいつは何と暗闇で光るのだ。

青くボゥとした感じで・・・。



「大石さん、マジックバックの返却と魔石とアイテムの買取お願いします。」


段ボール箱に気味の悪い液体と魔石を詰め、マジックバックと一緒に小さいおっさんに渡す。


「これは・・・再生薬があるって事は24階までは行ったんだ!いいよ!ちょっと待ってて!」


「あっ!すみません、これもお願いします。」


俺は15階のボスの宝箱から出た唯一液体じゃない物を渡した。

見てくれは、その辺の道に転がってる石だが全体が緑で滑らかだ。

宝箱から出たんだ、ただの石じゃないよな。


「これは清浄石だね!15階のボスの当りの宝だ!おめでとう、直道君!」


「清浄石?」


たいそうな名前だが高く売れるならそれでいい。

当りと言ってるなら安くは無いはずだよな。

500・・・800、いや、1000万くらいにならないかな・・・。


「いいよ!これは!これ1つで3000万円だからね!」


マジかよ!流石、当りアイテム!なんに使うのかさっぱりだが高いぞ!!!


「これは高性能な空気清浄機なんだ!」


「なんに使うんですか、そんなの?」


「使うところは多いよ!密閉空間で空気がこもるところに置いておくのが主な使いかただけど、

潜水艦や宇宙ステーションで使われてるね。1つで1年しかもたないから飛ぶように売れるよ!」


ちょっと使われ方はあれだけど、売れてるならいいや。


「魔石の方は全部で・・・127,700円だね!そして、さっきの清浄石が3000万円で、

ポーション類がまとめて・・・1312万円だ!合計で4324万7700円だね!」


よ~し!!やったぞ、俺!!!


「それと、マジックバックの保証金の5000万円も返却されるから・・・こっちの方は手続き終わってだから、1週間前後かかるからね!」


やったぜ!!!一気に1億近いぞ!!!

冒険者が勝ち組職業って言われるわけだぜ!


「やったね!本当ならパーティー組んで潜るから、いいとこ取り分は5分の1なんだよ!直道君はソロで潜ってるから報酬額だけ見たらBランク冒険者の中でもずば抜けてるよ!」


小さいおっさんが興奮気味に何かまくし立ててるが、そんなのもうでもいい。

俺にとっては目の前の1憶の方が大事だ。


「それで、換金した分は口座へ振り込むでいいのかな?」


夢見心地だったため、危うく頷きそうになったが、帰りにカイムにパソコンを買ってやる必要がある。

忘れたら暴れそうだし、100万ほど現金で持って行こう。


「わかった!現金で100万円、後は振込だね!」


その日、俺は受け取った100万を持ってカイムとヨドバシキャメラで買い物をして帰った。

くっそ、店員め!・・・周辺機器なぞ勧めやがって、おかげで持っていた100万がほとんど消えやがった。

恐るべきセールストークに敗北した俺は、喜びのポーズで固まるカイムを頭に乗せ、人々の注目を集めながら帰宅した。


PVとかユニークアクセスの数が凄いです。

ビビりながら確認したりしてますが、未だ伸び続けています。

こんなにたくさんの方に見て頂いていると思うと感無量です。

本日1本目の投稿をさせて頂きます。

有難う御座いました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公がケチ臭い。
[一言] まだ何の役にも立っていない上に危険行為で迷惑を掛ける癖に、こんな金額の物を集る勝手に契約してきた鳥……マジックバックの代わり以外にこいつ役に立つのか?(汗)
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