ペット枠
俺が目を覚ますとお騒がせ鳥は、興奮した様子で俺が持ち込んだ漫画を読んでいた。
その漫画は改造された仮面の人が悪の秘密結社を倒す、誰もが知ってるヒーローの話しだ。
「カイム、お前、日本語分かるのか?」
『うむ、儂は日本語が分かる。しかし、人間は侮れんな。少し見ない間にこんな風になってるとは。』
どうやら漫画を真実だと思っているようだ。
「少し見ない間って、前見た時はいつなんだ?」
『・・・う~む・・・3000年ほど前か・・・。』
どうやらカイムはかなりのお年寄りなようだ。
「なぁ、今日、手続きしたらお前を外に連れてってやれるけど、3つだけ約束してくれ。」
『いいだろう。』
「まず1つは、俺かお前以外に危害が加わらない限り、攻撃したりしない事。」
『儂は蛮族では無い。こちらから手を出すなという事だな。承知した。』
「召喚も駄目だからな。」
『分かっている。次を言え。』
「人前では普通の鳥の真似をしてくれ。しゃべるのもその腰の剣も預けてもらう。」
『剣を預ける事は出来ぬ。だが仕舞っておけばよいのだろう。』
カチャ、カチャと器用に翼を使ってベルトごと外すと、黒い穴の中に入れてしまった。
「おい!今の黒い穴はなんだ?」
『アイテムボックスだ。見た事は無いのか主よ。』
「カイムのアイテムボックスって容量どのくらいなんだ?」
『無論、無限だ。これは別次元を魔力で構成される・・・・。』
ヤバっ!スイッチ入った!
「待て!カイム!その話は後にしろ!」
『う、うむ。では最後の要求を言え。』
「トイレは決められた場所でしてくれ。俺の背中をフンで汚すのは勘弁してくれ。」
『儂は糞尿など漏らさん!』
一昔前のアイドルのような事を言うカイムを残し、小さいおっさんの元に行く。
ペット枠でカイムを登録するためだ。
書類は2枚あり、1枚はカイムの事を書く書類だ。
悪魔と素直に書くと不味そうなので種族は九官鳥と偽装しておく。
写真も撮らないといけないのだが、それは後で大石さんがカメラを貸してくれるという事になった。
もう1枚は俺の審査書類だ。
こちらはアンケートみたいなもので色々な質問が書かれている。
小さいおっさんが言うには、精神鑑定の一種で俺がサイコ野郎じゃない事を検査する意味合いがあるそうだ。
嘘を書くとバレたら通らないから全て本当の事を書くようにと念を押され、アンケート用紙の質問を次々と埋める。
尊敬する人物 ・・・キャプテン・ケ〇オス。
本年度の目標 ・・・巨乳の可愛い彼女をつくり、一緒に旅行に行く。
今、一番欲しい物は・・・巨乳で可愛くて殴らない彼女。
嫌いな物は ・・・お化け、ナメクジ、ミミズ、パセリ、人参、ウニ、キノコ・・・etc。
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スタンピードが発生しました。貴方はどうしますか?・・・先頭に立って戦う。
「直道君、本当の事を書くんだよ!」
スタンピードが発生しました。貴方はどうしますか?・・・逃げる。
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貴方の目の前にとても強い魔物がいます。貴方はどうしますか?・・・逃げる。
後半は殆どが逃げるか、隠れるになった。
見栄を張って別な答えを書くと、小さいおっさんが文句を言うのだ。
何故、分かるんだ。
嘘発見機のような力でも持っているのだろうか。
「これでいいよ!後はカイム君の写真だけだけど、僕が行くと怒りそうだから、直道君、お願いね!」
大石さんからデジカメを受け取り部屋に戻るとカイムは漫画を熱心に読んでいた。
年寄にはカルチャーショックがデカいのだろう。
時々、妙な泣き声をあげている。
「カイム、写真撮るからこっちきて。」
『写真か・・・あの精巧な絵の事だな。良かろう、書き写すが良い。』
漫画を置くと翼を広げ口ばしを上に向けポーズを決める。
それにしても、鳥が威嚇してるようなポーズだ。
なにか意味があるのか。
本人が乗り気な内に終わらせる。
写真を撮り終り確認していると、カイムがひょこひょこ寄ってきた。
カイムにもデジカメの画面を見せると、口ばしを開けて固まっていた。
写真を理解していたのは驚きだが、流石に文明の利器にまでは詳しく無かったようだ。
俺も見てみるが、威嚇しているというより、机の上で解剖を待つ鳥のように見える。
本人に意見を聞いてみるも写真よりデジカメに夢中だ。
デジカメを放さないので、後で買ってやると言い含め、むしり取って大石さんに返却する。
その後、ダラダラと待っていると2時間ほどして大石さんが仮登録も終わり、あとは審査待ちなので帰ってもいいと言われた。
帰り際にヨドバシキャメラに寄り、子供用の安いデジカメを買って帰る。
水色のプラスチックのボディーで豚をかたどった、おもちゃのようなカメラだが、一応はちゃんと使える。
すぐに壊すだろうと思い安上がりなもので済ましたが、カイムは首から下げて御満悦だ。
肩に鳥を乗せている奴などいないため注目度が半端ない。
特に子供と女性からの視線が熱い!
これはカイムをネタに女性とお近づきになるチャンスなのではと思い、去り気なく立ち止まったりしていたが、悲しい事に女性より物怖じしない子供達に先に群がられた。
新宿を後にしようとすると鳥かごに入れないと駄目だと言われ、入場拒否されたカイムは飛んでついてくる事になった。
誰もいない自宅に着くと、カイムがTVに興味を示し、TVの前から離れなくなった。
それを見ながら、明日からのスケジュールを練り直し、101階の報告をしていなかった事を思い出した。
もう、面倒臭いから無かった事にしてしまおう。
バレた時は忘れてた事にすればいいだろう。
歌番組を見ながら翼をバタつかせるカイムを見て、家の主の母になんと説明しようかと頭を悩ませるが、
今日は頭を使いすぎたせいか既に眠くなってきた。
もう、全部明日でいいや。
そう思いながら俺は意識を手放した。
皆さんのお陰でいつの間にかローファンタジー日間1位に躍り出ていました。
自分なんぞがこの位置にいていい存在とは思えませんが、素直に嬉しく思います。
誤字報告も相変わらず頂いて感謝しています。
それだけ誤字が多い小説であるのですが、感想などでも教えて頂いているので助かってます。
本日2本目の投稿をさせて頂きます。
有難う御座いました。




