黒の鳥
体育館程の広さの部屋の中央にいた俺はとりあえず、辺りを見渡した。
さっきのあの感覚には覚えがある。
五反田ダンジョンのダンジョンコアに触った際、外に飛ばされた時と同じ感覚だ。
ということは、俺は地上のどこかに跳ばされたのだろうか。
10mくらいある天井を見上げるが、照明器具のようなものは見えない。
部屋の一角が1段高くなっていて王様の席のような椅子がある。
そして、前後左右見渡す限り扉が無い。
・・・閉じ込められてる!!!!!
マズイ!ここってダンジョンのどこかだ!
壁の周りを一周してみるが、継ぎ目すらない!
となると、あの王様の椅子が怪しい・・・。
恐る恐る椅子の後ろから近き観察する。
王様の椅子は石造りのようで非常に座り心地が悪そうだ。
夏は暑く、冬は冷たく、そして硬い。
こんな椅子に長時間座ってたら確実に痔になりそうな椅子だ。
そして、俺は椅子の上に一羽の黒い鳥がいる事に気が付いた。
カラスのように黒いが大きさはカラスほど大きくはない。
寝ているのか目を閉じていて微動だにしない。
そして鳥の胴体にベルトのような物がまかれ、腰にボールペンのような物が括りつけられている。
もしかして人形か?
ゆっくり手を伸ばして触ろうとすると、鳥が目を開け、俺と視線がぶつかった。
初志貫徹して指で頭を撫でると鳥はくすぐったそうに目を細めた。
良く馴れてる、ペットの鳥かなにかか?
『挑戦者だな。』
この不思議な鳥について考えていると、いきなり声をかけられた。
辺りをキョロキョロ見回すが何もいない!
お化けか!!!
鳥を抱き上げ、壁際に逃げる。
敵ならきっと俺のスキルが攻撃してくれるはずだ。
『お前は挑戦者だろ。』
ヒイィイイィ!!!!
また、声がきこえた。
「なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ・・・・・」
『これ、やめんか!』
俺の念仏攻撃が効かない!
おかしいぞ、爺さんはこれでお化けを撃退したと言っていたのに!
いや、効き目があるから、止めさせようとしているのかもしれない!
「なんまんだぶ!なんまんだぶ!なんまんだぶ!なんまんだぶ!なんまんだぶ!なんまんだぶ!・・・・」
『やかましい!!おかしな呪文を耳元で唱えるのをやめろ!!!』
ヒイィイイィ!!!!
だめだぁああ!!!
ん!耳元・・・。
俺が恐る恐る下を向くと、迷惑そうな顔をした鳥と目が合った。
『ふむ、それと儂を下に降ろせ!』
鳥を放すと二、三度羽ばたいて地面に着地した。
そして、トコトコと俺の前に歩いていくと、こちらを向き直り口を開く。
『お主は挑戦者だろ。』
しゃ、しゃべる鳥だ!!
いや、オウムもしゃべるな・・・こいつ九官鳥なのか?
『儂は九官鳥では無い!それより、お前は挑戦者だな!』
どうやら口に出して言っていたようだ。
しかし、会話が出来るだと!
こいつ只の九官鳥じゃないぞ!!
『もう、よい!お前を挑戦者として認めよう。儂の力を借りたくば力を示せ!』
なんだよ!
黙ってたら勝手に話が進んだぞ!
この鳥、スキップ機能が内臓されてんのかよ!
『儂は空より高見の見物とさせてもらおう!』
鳥が羽ばたき、宙に舞うと部屋の中央に光が集まりだした。
光りが消えるとそこに1体の化物があらわれた。
身長は5~6mだが頭と腕がいっぱいあって気色悪さが半端ない。
『それはヘカトンケイルだ。むろん本物ではない劣化版のコピーといったところだがな。』
鳥が何か言っているが、それどころじゃない。
化物の顔についてる目が一斉にこっちをむいた。
こっち、見んなぁああ!!!
化物が俺に向き直り、一歩を踏み出す。
俺は壁沿いをダッシュして逃げだした。
いくら身体能力が上がっていても、化物は巨体のため1歩がデカい。
みるみるうちに俺は追い詰められたが、化物は俺との追いかけっこの途中で消えた。
この間恐らく十数秒。
だが、恐怖からくる追いかけっこは俺の体力を奪い。
終ると同時に俺は尻もちをつき崩れ落ちた。
『・・・た、たかが人の身で、あれを降すだと・・・業腹だが仕方が無い!お前を主と認め、儂の力を貸そう!』
座り込んだ俺の前に鳥がおりてきて、右手を出せと言ってきた。
何かくれるのかと思って手の平を上にして出したら、指先を口ばしで突かれた。
痛っ!!
突かれた指先を見ると血が出ている。
これが俺のダンジョンでの初の負傷だ。
このくらいの怪我でポーションは使えないので、リュックの中から救急箱を取り出し傷バンを張る。
「なにすんだよう!」
『古の習いに従い契約したまでだ。これでお前は儂の主となった。儂の名はカイムだ。今後ともよろしく。』
どうやら、この鳥は俺についてくるみたいだ。
だが、まずはこの部屋からの脱出方法を見付けなければならないし、なにより疲れた。
今日はここで一泊して全ては明日考えよう。
誤字報告、本当に助かってます。
有難う御座います。
PVやブックマークや評価の増え方が最近凄くてどうしていいのか分かりません。
感想も頂けて単純に凄く嬉しいです。
本日3本目を投稿をさせて頂きます。
有難う御座いした。




