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ボス戦より辛い戦い。

1月6日、俺は朝から新宿ダンジョンにいた。

正確に言うなら、自撮り棒を持ち3階のカマキリモドキとのツーショットを撮ろうとボス部屋の前にいた。

ボス部屋の扉を開けると同時にドアストッパーで抑えて、自撮り棒を使い写真を撮る。

使える時間は十数秒、失敗したら1時間待ちなので必死である。


余裕の表情を見せたいがため、さも何でもない風を装うのが難しい。

それにカマキリモドキまで距離が遠いので米粒のようにしか写らない。

結局撮れた写真は3枚だったが、カマキリモドキのアップも1枚撮ったから、これで我慢しよう。

何故、俺がこんな事をしているかというと、話は昨日の夜にさかのぼる。

俺がもう後は寝るだけの状態で自分の部家にいると大輔からメールがあった。

内容は、1月7日に遊びに行こうという話だった。

これだけなら俺がこんな事をする必要は無い。

話しの続きに宮沢さんも友達を連れてくるから、ちゃんとアピールしろと書かれていたのだ。


よくやった、大輔!

宮沢さんあたりの発案な気がしないでも無いが、それはこの際、目を瞑ろう。

宮沢さんが友達を連れてくるらしいので俺は彼女を相手にすればいい。

人生勝ち組の冒険者を俺がしっかりやっているところをアピールしたらもはや勝利は疑うべくも無い。

その後、俺は6階のボスの写真も撮り帰宅した。



1月7日、今日は冬休み最後の日だ。

そして、俺の彼女いない歴が終わる日でもある。

待ち合わせ場所は、渋谷駅のハチ公口だ。

20分前について、そわそわしながら待っていると声をかけられた。


「菅原君、待たせてしまいましたか?」


俺がそちらを見ると奇跡のガスタンク加藤君がいた。


「えっ!か、加藤君?」


混乱した頭で確認する。

何故、ここに加藤君がいるんだ。

しかも、俺との待ち合わせだと・・・・!!!


あの野郎!俺にドッキリを仕掛けやがったな!!


「2人とも早いな。」


その時、いきり立つ俺の背後から声がかかった。

この声は大輔だ!


「大輔ぇえぇええ!!!・・・遅かったじゃないか。」


叫びながら振り返った俺の声はすぐに普通の大きさになり、怒りの形相は爽やかな笑顔に変換された。

何故ならば、大輔の後ろに2人の見目麗しい女性が・・女性が・・・。


「高橋ぃいぃいい!!!何故、お前がそこにいる!!!」


そこにいたのは大輔の彼女の巨乳女王、宮沢楓みやざわかえでさん。

そして、もう1人が高橋望たかはしのぞみ

この女は俺とも、大輔とも顔見知りだ。

というか、中学の同じクラスで高校でも同じクラスだ。

そして、俺と大輔とも普通に話す間柄で、紹介してもらうまでも無い。

見た目は背が低く、髪もショートでそれなりに可愛らしいのだが、その子供じみた風貌のせいか、この女は絶壁なのだ。

頭がでは無い・・・お胸様がだ。


「なによ、菅原!菅原の分際でアタシに指図する気なの?」


更に空手をやっているので、このように気が強い。

俺の理想の全て真逆を突っ走っている女なのだ。


俺は高橋の質問には答えず、大輔に殺意の籠った目を向ける。

俺との付き合いが長い大輔は俺の好みも把握している。

つまり、これは罠だ!


「菅原!こっち見てアタシの質問に答えなさいよ!」


もはやチンピラだ。

巨乳女王と並ぶと悲しいほどその差が目立つ。

俺が悲しい目を向けると、その横で大輔が必死に目で合図を送ってる。

横・・・そのための加藤君か!

あれは加藤君をスケープゴートに使えという意味だ。


「ごめんなさい。本当はもう1人くるはずだったんだけど、急に体調崩しちゃったみたいで急に来れなくなっちゃったの。」


俺が逃走経路を考えていると宮沢さんが謝ってきた。

頭を下げると胸が凄い事になってる。


大輔、俺を睨むのはやめろ!

男ならこれは仕方がないんだ!


「いいよ。今日は俺はおまけみたいなもんだし。・・・そうだろ、加藤君!」


「ぼ、僕は・・だ、大丈夫です。」


女性にだけコミュ障発生させるの止めろ!

そんなんで良く彼女作ろうと思ったな。


高橋は誰に対しても差別などはしない、男らしい女だ。

一度振られてるはずだが、きっとここで印象を良くしておけば、加藤君のことも分かってくれるはずだ。


こうしてその日1日、俺は必死に空気になろうと努力し、加藤君のサポートにまわった。

だが、加藤君のコミュ障は想像以上に酷かった。

基本的に「はい」、「大丈夫」、「平気」の3つの言語しか使わないのだ。

そして、学年でもトップクラスの学力を誇るくせに応用力がまるで無い。


「加藤君、つぎに話す機会が出来たら、何でもいいから褒めるんだ。」



「き、今日は、空がき、綺麗ですね。」


「加藤、お前、実は馬鹿だろ。」


スーパーサポートの俺が入れ知恵しても、こんな感じで本人が場外目掛けて走っていくのだ。

馬鹿だと直球でなじる高橋も酷いが、加藤君の言動は酷すぎてフォローしきれない。


夕方になり、そろそろ解散しようという流れになった。

これまでの言動により、メンタルモンスターの加藤君がグロッキー気味だ。

フラフラする加藤君を気遣いながら駅を目指す。


「加藤、お前、冒険者のくせに体力無いんだな。駄目駄目じゃん!」


そして、高橋のこの一言が加藤君に止めを刺した。

明日には復活してくれる事を祈って加藤君と別れる。

それにしても、今日は疲れたぜ。

ダンジョンでボス戦マラソンやってるより疲れた気がする。

家に帰るとスマホに大輔から、『スマン。』と書かれたメールが送られてきていた。

テンション上がりまくりの1日でした。

5位から2位に上がるとは思ってませんでした。

感謝を込めて、本日3本目の投稿をさせて頂きます。

これからもご愛読して頂けるよう頑張ります。

有難う御座いました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] まじで好き笑 今日読み始めで、車の信号待ちで読んでたんだけど 家に帰ってしっかり読もうと思うくらい好きだわ。 今27話目、大サソリ二匹の喧嘩で勝って喜んでるサソリが消えちゃうとことか、職員…
[一言] 主人公がアホ過ぎる気がする…
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