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冒険者にも普通の日はある。

1月5日、俺は大輔と一緒に宿題を写している。

場所はカラオケ屋の4人用の個室。

そこに陣取り驚異のスピードで宿題を写しているのだ。

大輔の担当は筆跡のバレにくい数学等の宿題だ。


「直道、俺の方は終わったぞ。そっちはどんな感じだ?」


「こ、こっちも・・も、もうすぐだ。」


「お前!感想文は写すんじゃねえ!!絶対バレるだろ!!!」


「大丈夫だ!現文の相模は既にボケている!名前と原稿用紙が埋まってれば、あいつは満足する!」


現代文の相模先生は現在63才。

定年を迎えてもボケて学校にくるため、非常勤教師に収まった強者つわものだ。

ボケてはいるが長年刷り込まれた行動により、ロボットのように授業だけは出来る困った人だ。

学校側も辞めさせたいらしいが授業だけはちゃんとするので、辞めさせる口実が無いらしい。


光りの速度で宿題を写し終えた俺はコーラを飲みながら、大輔にスマホの写真を見せる。


「見ろ!大輔!この俺の雄姿を!!」


「なんのアニメだ?それともゲームのコスプレか?」


脳筋戦士は頑なに俺の写メをコスプレだと言い張る。

馬鹿め、本物と偽物の区別がつかんとは、どれだけ濁った眼玉をしていやがるんだ。


「お前、そもそも後衛職だから鎧着たりしないだろ。」


次の瞬間、大輔が放った何気ない一言に俺の体が固まる。

そうだ!俺は後衛職だった!!!


「普通、後衛職だともっと動きやすい服だろ。」


反論を許さぬ脳筋戦士の攻撃に、俺は反撃の機会を失う。

大石ぃいぃいい!!!俺を騙したなぁあぁああ!!!あの、偽コロポックルめぇえぇええ!!!


「な、何、赤い顔して興奮してんだよ。鼻息凄いぞ。ちょっと落ち着けよ。」


大魔神のように仁王立ちになり、いきり立つ俺を大輔が鎮める。

手渡されたコーラを飲み干すと、大輔がフロントにコーラのお替りを注文してくれた。


「軽く、食うか?」


無言で頷く俺を見て、ピザとポテトも追加する。

腹がふくらんでくると俺も徐々に冷静になってきた。

大輔に加藤兄弟の事を話す。


「その話、本当かよ。本当なら加藤の奴は痩せればイケメンになるって事だぜ。」


大輔の言葉に俺も首を傾げる。

加藤君がイケメンになるなど、明日地球が爆発するという予言より信じられない。

そもそも、推定体重120キロの加藤君だが、70キロくらいは脂肪のはずだ。

そうなると、もはや加藤君の本体は脂肪と言っても過言ではない。

脂肪の塊がイケメンになれるはずが無いので、加藤君がイケメンになる事も無い。


ピザとポテトを食べ切ったところでカラオケをしようか迷ったが、大輔と別れ新宿に繰り出した。

目的はもちろん、小さいおっさんの犯行の動機を確かめるためである。


ドームの入り口をくぐると、おっさんは呑気に帳簿付けをしていた。


「あれ!直道君、今日こないって言ってなかった?」


すっとんきょうな声をあげる小人に近づき、素早く両手で捕まえる。


「な、直道君、僕はノーマルなんで、そういうのはちょっと・・・い、痛い!痛いよ!力抜いて!」


「俺って後衛職なんですが・・・防具って必要ですか?」


暴れる小人に構わず、質問を投げかける。


「前衛、後衛に限らず防具は必要だよ!それより、直道君って後衛職なの?後衛職なら刀いらないでしょ!売ってよ!」


「男には刀が必要なんです。それより、後衛職は鎧は着ないと言われたんですが・・・俺のあれって鎧ですよね?」


まだ余裕があるようなので、更に両手に力を込める。


「ぎゃあぁあぁああぁああ!!!ぎ、ギブ!ギブ!・・な、直道君はソロで活動してるじゃないか!ソロなら防御固めるのは当然だよ!」


話し辛そうだったので少し力を緩めたが、俺の聞きたい話はそこじゃない。

両腕に力を込める。


「つ、潰れるぅうぅうう!!!こ、後衛職が何を着るかなんて、ひ、人によるよ!現にAランクの後衛職は鎧着てる人の方が多いよ!」


なるほど・・・それなら俺が鎧を着こんでるのは、あながち間違いじゃないんだな。


「すみません。つい、暗黒面に呑まれそうになりました。」


小さいおっさんを机の上に置いて非礼を詫びる。

大石さんは大の字で倒れながらゼェーゼェー言っていた。


「なんで、つい暗黒面に呑まれるのさ!直道君の目には殺意がこもってたよ!」


オコ状態の小さいおっさんを無視し、途中のヨドバシキャメラで買ってきたボイスレコーダーのスイッチをoffにする。

必要の無い装備を俺に売りつけた事を自供した際の証拠を残すために購入してきたものだ。

今回は役に立たなかったが今後はこの小さいおっさんとの会話は常に録音しておこう。


その後も小さいおっさんの追及が続いたが、全てを『つい出来心で』で押し通した結果、俺への追及を諦めた。

その代わり今後は誤解が起きないように詳しく説明するからと言っていたが・・・。

ローファンタジー日間2位に躍り出した。

間違い無く読んで頂いている方のお陰です。

いい思い出を有難う御座います。

本日2本目を投稿させて頂きます。

暇つぶしにでも読んで頂けたら幸いです。


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― 新着の感想 ―
[一言] おっさんの言っている事は、全然間違ってないだろう! 後衛職が、紙装甲なのはほぼゲーム制作会社や作者の偏見や都合だろう。 プレイヤーは、自分自身がダンジョンに入るなら、保険として良い装備…
[一言] 小さなおじさんが言っているとおりでしょう。一人で攻略していて、後衛職?何それって言う感じです。後衛職であり前衛職かつ中間も担当しているのでしょう。一人だから装備に力入れるのごく当たり前だと思…
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