Sランク冒険者は総じて厨二病。
「じゃあ、さっそく清算するよ。大クロカタゾウムシの魔石が5つとキラーマンティスの魔石が2つ、これは24,400円だ!そして溶解液2つと硬化薬が5つで254万円!しめて2,564,400円だよ!」
YES!!
これで借金は無くなったぞ、64,400円だけ現金でもらい借金を返済し200万は口座に振り込んでもらったぜ。
「今日はもう帰る?6時までいたら注文してた防具が届くけど・・・!」
小さいおっさんの言葉に悩む。
今の時刻は4時半だ。
オーダーメイドの防具だし、すぐにでも着てみたい気持ちはある。
だけど、借金を返して安心したら凄く腹が減ってきた。
さっき少しだけ現金で受け取ったのは、豪華な飯を食べようと思ってたからだ。
悩んだ末、腹の虫に厨二病の悪魔が勝利した。
近くの定食屋に駆け込み、無難なから揚げ定食を食べて急いで戻ってきた。
防具が届いたか質問する俺に呆れた顔で小さいおっさんが指し示す時計を見る。
デジタル表示の時計は5時少し前を表示している。
届いたら呼びに行くから部屋で待っていろという小さなおっさんの言葉を辞退し、俺はガランとした広場で大石さんと駄弁りながら時間を潰す。
「じゃあ、大石さんってSランク冒険者だったんですね。」
「まあね!これでも風の大石って言われて有名だったんだよ!」
ドヤ顔で胸を張るが腹の方が出ている。
あの小太りの体形で風の大石だと・・・今なら小石の大石とかの方が頓智が利いていていいんじゃないか。
そもそも、冒険者の特集ってTVや雑誌でよくやってたが、風の大石なんて聞いたことないぞ。
「ああ、僕の場合は国家公務員もしてたからTVとかの露出は出来ないんだよ!」
俺の疑いの眼差しに気付いた小さなおっさんが慌てて言い訳をしてくる。
露出が無いのにどうやって有名になるんだよ。
まぁ、現状がこれなら過去の栄光にすがりたくなるのは分かるが、このまま年を取ると老害とかになりそうだ。
「今後も何か分からない事があったら僕に相談しなよ!後輩の面倒を見るのは先輩の務めだからね!」
キリっとした顔をしてるつもりなのだろうが、二重あごでそれは無理だろう。
どこまで伸びるか摘まんでみたい衝動に駆られる。
だが、せっかくの上機嫌を崩す必要も無いので愛想笑いでお茶を濁す。
自称元Sランク冒険者はそれで満足したらしく、タバコを取り出し火を付けた。
誰が小人用のタバコを作ってるんだ!!
小さいおっさんが元Sランク冒険者だったという事よりも、そっちの方が興味深い。
俺が驚き固まっていると不意に小さいおっさんが立ち上がりドームの入り口の方を向いた。
そうすると自衛隊の人が大荷物を持って入ってくる。
何故、分った!
「直道君、来たみたいだよ!」
自衛隊の人と受け取りの書類作業をする大石さんを尻目に、俺の視線は今きた荷物から放す事が出来ない。
俺の防具は木箱に緩衝材と一緒に入れられていた。
二の腕と太腿までカバーする黒い皮鎧。
胴体部分には白っぽい金属の胸当てのようなものが付いて内臓を守っている。
それに同じ素材で出来た黒い脛当と黒いヘッドギアのような兜、これが俺の新しい防具だ。
全てダンジョン産の素材で出来たこの鎧は、戦車の砲弾でも耐えるほどの防御力がある。
ただ、本当に打たれた場合は着ている俺は死んでしまう。
昔、事故っても車は壊れず運転手だけが死ぬ頑丈な車を走る棺桶と言っていたと聞いたが、さしずめこの鎧もその類のものだろう。
「着てみるかい?」
小さなおっさんの言葉に無言で頷き、手伝ってもらいながら着てみる。
前面の金属板を外すと皮鎧の前方が割れており、そこから体を潜り込ませて、胴体部を装着する。
前面の割れ目は付属の革ひもで靴を結ぶように閉じ、その上に外した金属板を再装着して体の部分は完成だ。
これに脛当とライオンイーターの手甲を付け、ヘッドギアのような兜をかぶれば完成だ。
俺は部屋から白い脇差を持出し、大石さんにスマホで写メを撮ってもらう。
何枚か取ってもらったので後で大輔にメールして自慢しよう。
ニヤニヤしながら写メを確認しているとあっという間に時間が過ぎた。
急いで部屋に戻り鎧を脱ぐ。
独りでも脱着可能で使い勝手もいい。
ダッシュで新宿ダンジョンを後にしたときはもう8時すぎだった。
電車に揺られながら、俺の鎧姿を大輔にメールすると、何のコスプレだ、と帰ってきた。
この男には一度現実という物を思い知らせる必要があるようだ。
明日、宿題を写しに行くから首を洗ってまっていろ!そうメールを送るとOK!とアホな返事が返って来た。
その後、電車内で爆睡してしまい家に帰る時間がさらに1時間後ろにずれ込んだ。
ローファンタジー日間5位になってる!
ちょっとマジで吃驚です。
応援してくれる皆様のお陰です。
有難う御座います。




