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12月30日、俺は今日から1月1日までは大輔と一緒に友達の家に泊まると言って家を出た。

折角できた拠点なので、フルに使って借金を返済するつもりだ。


朝一で新宿の拠点に荷物を置き、大石さんに挨拶して3階のボス部屋に行く。

途中の道で出来るだけ落ちている魔石を拾いつつボス部屋に急ぐと、まずは挨拶代わりに呪殺する。

虚空を見つめたまま消えるカマキリモドキが何故か哀愁を誘う。


魔石と宝箱の中身を回収すると、そのまま取って返し2階で魔石拾いを再開する。

スズメバチも高くは無いが数さえ集まれば相当なものだし、拠点に物をそろえたり、俺の飯代として活用できる。

40分ほど魔石を拾い集め、また3階のボスを呪殺する。

祈る様に鎌を構えるカマキリモドキが不憫にも思えるが、ここは俺の為と心を鬼にして死んでもらう。


午前中に3度カマキリモドキを殺し、宝箱を開けたが全て紫色の瓶だった。

物欲センサーが働いているのだろうか。

最低1つは赤い薬がでて欲しい。

昼食休みでボス部屋の前で座っている時、いいことを閃いた。


2階のスズメバチにも女王バチがいるのだ。

回復苔は無いかもしれないが、何か別の物を持っているかもしれない。

大石さんにもらった地図には女王バチの居場所が4か所書かれている。

ここを襲撃してなにかいい物を手に入れたい。


午後一で復活したカマキリモドキを呪殺して、俺は行動を開始した。

地図では一番近い女王バチの元まで全力で走って20分ってところだ。

途中の魔石を拾いさえしなければ、次のカマキリモドキの復活までに十分間に合う。


俺は覚悟を決めて階段を駆け上がった。

途中、何度かスズメバチを見たが、体長1mくらいあるハチがこっちに向かって来る様は、軽くトラウマになりそうな光景だった。

黒目の無い複眼でガチガチ牙を鳴らす顏は滅茶苦茶怖い。

逃げるように走っていると前方に女王バチが見える。

元々、女王アリより巨大なのだが、真直ぐに座っているせいで小山のような感じだ。


これも女王の例にもれずブヨブヨした巨大な腹を持っている。

ただ、その顔は普通のスズメバチを巨大にしただけなので普通に怖い。

全力で走っていると前方にいた巨体が消えた。

スキルの力で死んだのだろう。


俺は更に力を足に込めて、100m走のように後先考えず走った。

女王バチがいた辺りに他よりデカい魔石が落ちている。

これが女王バチの魔石のはずだ。

それなら、この近くにお宝があるはずだ。


キョロキョロと辺りを見回すと、灰色のドロドロしたものがある。

回復苔の塊も見た目はゴミみたいだったが高価なものだった。

きっとこれも高価なはずだ。

俺はその泥の塊のような物をすくい、コンビニの袋につめた。

漏れないように念のために三重にして、喜び勇んで元来た道を戻った。

戻る時はリュックに入らない袋を両手で持っていたせいで、思うように走れなかったが、それはもうどうでもいい。


戻ってきて復活していたカマキリモドキを呪殺して、妄想モードに突入した。

コンビニの一番デカい袋につめこんでいるため、どう考えても5キロ以上はある。

もし回復苔と同じくらいの値段だとしたらこれだけで億に手が届く。

逆に安い可能性もあるが、それでも5千円くらいはするだろう。

そうなると・・・2500万だ!

一気に借金を返し、貯金が1000万増えるぞ。

ニヤニヤが止まらない俺は居ても経ってもいられなくなり、最後のカマキリモドキで出た赤い薬を片手に地上に凱旋を果たした。

高く売れたら、この中級ポーションは売らずにとっておこう。

こんな栄光の未来を考え足取り軽く、小さいおっさんの元へ換金しに行く。

小さいおっさんは堂々と机の上で横になって、昼寝をきめこんでいた。


朝の俺なら殺意が沸いたかもしれないが、今の俺は菩薩ような心の持ち主だ。

職場で堂々と昼寝をきめる、邪悪な小さいおっさんの事も笑って許せるくらいだ。

だから、おっさの丸い腹を指先で押すくらいで許してやろう。

親指で指圧するように胃の辺りを押してやった。

慌てて跳び起きるおっさんにアルカイックスマイルで言ってやった。


「仕事しろや!」


これには面の皮の厚い小さなおっさんも参ったようで、愛想笑いをしながら誤魔化し始めた。


「いや、ちょっと机を磨いてたら眠くなっちゃってね!すこし横になったらそのまま寝ちゃっただけなんだよ!普段はちゃんとしてるんだけど、年の瀬だし今日は偶々、そう偶々寝ちゃったんだよ!」


突っ込むべきところはいくらでもある。

机磨いてたって、何で磨いてたんだよ、体で磨いてたのか?とか。

うつ伏せなら分かるけど仰向けで横になるって寝る気満々じゃないのか?とか。

年の瀬なら皆、偶々寝るのかよ?とか。

だが、今の俺は仏の菅原だ。

小さいおっさんの悪行ごとき笑って許してやろう。


「じゃあ、これの買取お願いします。」


おっさんが磨いていたと言い張っている汚れた机の上に魔石と宝箱のアイテム、そして俺が拾ってきた灰色の何かを置いた。


「え~と、まず魔石がキラーマンティスの魔石が5つとスズメバチの魔石が119個、それと女王バチの魔石が1つで41,650円だね。」


まぁ、魔石はどうでもいいだろう。

所詮おまけだ。


「次に溶解液が4つと中級ポーションが1つで、208万円。そして、これは・・・・1万円ってとこかな・・・。」


マジか!!グラム1万なら5000万は固いじゃん!!

一気に借金返済だぜ!!!


「そうすると、全部で213万と1,650円になるけど、返済はいくらにする?」


えっ!・・・今何って言ったこのチビ!


「あのは灰色の塊はスズメバチのフンだよ!あんなものどこで拾ってきたのさ!一応、研究機関に売れるけど、ただのゴミだよ!」


ぐ、グラム1万じゃないのかよ!!

急速に体の力が抜けた俺はシャワーを浴びて、ベットで横になってるうちに寝てしまった。

マジで赤い薬1本出てくれて本当によかった~。

なんかバリバリ評価とブックマークの数が上がっていっています。

読んで頂いている方には感謝しかありません。

感想頂いた方、ネタバレしそうだったので返信はしませんでしたが、ちゃんと読んでいます。

色々気遣って頂き有難う御座います。

本日3本目の投稿をさせて頂きます。

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