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借金返済の道

12月29日、新宿は年末でも人の多さは変わらない。

いつもは気が滅入るような人の多さも今日だけは気にならなかった。

新たに出来る秘密基地ともいえる俺の部屋の事を考えると頬が緩んでくる。

スキップしながらドームの門をくぐる俺を、自衛隊の人が生暖かい目で見ていた。


新宿ダンジョンに着くと、さっそく大石さんが俺の部屋に案内してくれる。

中には注文通りの家具の他、雑貨と掃除道具が置かれていた。

しかも頼んでいない電子レンジまであったのだ。

小さいおっさんに聞くとリサイクル品を安く購入してくれたらしい。


「僕は顔が広いからね!」


ドヤ顔で胸を張るおっさんにイラっとしたが、これは素直にグッジョブだ。

左手の親指を立て大石さんを褒めたたえる。


部屋も確保出来たので、すぐに準備をして借金返済のためにダンジョンに潜る事にした。

狙うは女王アリの持つ回復苔だ。

さっそく入り口から一番近い女王アリを目指した。

昨日、いた位置に寸分たがわず女王アリは復活していた。

もう攻略法は確立している。

スキップするような足取りで俺は金のなる木へ近づいた。

女王アリの魔石を拾い回復苔の塊を入手すべく辺りを見渡すが・・・1つも見つからない。



そういう事もあるのかと思い、気を取り直してもう2つの女王アリを周った。

結果、1つも回復苔が無い。

もしや、俺が潜る前に誰か他の冒険者が回復苔だけ奪って行ったのか?

女王アリに気付かれずにそんな真似が出来るとは思えないが、それしか説明がつかない。

地上に戻った俺はすぐに小さなおっさんを捕まえて問いただした。


「回復苔が無かった?そりゃあ、当然だよ!あれは時間をかけて軍隊アリ達が集めた物だよ!

記録によると・・・以前、女王アリが倒されたのは4年前だね!

きっと1年に1つくらいの割合で増えるんだよ!」


お前、俺ならこのくらい(3000万)の支払いは簡単だって言っただろうぉおぉおお!!!


「ちょ、ちょっと!く、くるしー!!タンマ!タンマー!!!」


気付くと俺は大石さんを締め上げていた。

冷静になり大石さんを降ろすと、小さいおっさんは俺から素早く距離をとった。


「大丈夫だよ!直道君なら3階のボスも倒せると思うから!

ダンジョン内のフロアボスは1度倒しても部屋から出てしばらくすれば復活するし、

倒せば宝箱も落ちるから、そこでマラソンしたらいいんだよ!」


ホントか?本当に大丈夫なのか?

俺にはこの小さいおっさんが、俺を奈落の底に送る怪しい生物に見えてきた。


「大丈夫!軍隊アリを相手に出来るならスズメバチも相手に出来るから!

僕のあげた地図を見て最短コースで3階にむかえば全然平気だよ!」


ホントか?本当に本当なのか?

しかし、俺としてはもう、それを信じて突き進むしかない。


貯金は500万ほどあるが、完済までには約1000万足りない。

期限はあと6日、そして1階の軍隊アリはほとんどいないし、今日は増えない。

明日から1日200万円分の魔石を拾い集めたらどうにかなるが、大石さんに聞くと軍隊アリの魔石は1つ平均200円。

そうなると、1日1万個の魔石がノルマとなる。

1日、2日なら頑張れるかもしれないが5日は無理だ・・・。


俺は今日の午後全てを使って3階ボスとのマラソン戦闘をやってみる事にした。



今、俺は3階のボスの部屋の前にいる。

扉を開けて覗き込むと、体長4mほどのカマキリモドキがいる。

何故、モドキなのかというとカマキリの象徴たる鎌が4つあるのだ。

普通のカマキリは左右に1つづつだが、こいつは2つづつある。

タダでさえ攻撃的なフォルムが攻撃特化型になっているのだ。


こえぇ~・・・あんな化け物と真正面から戦える他の冒険者って、やっぱ凄いんだな・・・。

だが、俺のスキルは真正面から戦う必要は無い。

卑怯だと言われても借金返済のために姑息に戦うぜ。


部屋の中央で祈る様な姿勢で固まってたカマキリモドキだが、十数秒すると俺のスキルの餌食となり消えた。

部屋に入りカマキリモドキがいた場所にいってみると、ピンポン玉の2倍くらいの大きさの球体の魔石と木の宝箱があった。

五反田のダンジョンボスの時はこ汚い木の箱で重箱みたいな奴だったのに、これはちゃんと宝箱の形をしている。

小さいおっさんからこの階の宝箱は罠があっても毒針くらいだから、後ろから蓋を開ければ安全だと教えられている。

五反田だと10階の宝箱でも罠無しなのに、3階で罠付きの宝箱が出る事自体おかしくないかとも思ったが、それだけいい物が入っているのだろう。

ドキドキしながら開けると中に紫色の液体の入った瓶があった。

パッと見、毒薬みたいな感じだ。

よく分からないので背中のリュックに魔石と一緒に入れて部屋を出る。

ここからマラソンの始まりだ。

結局、カマキリモドキは部屋を出ると1時間くらいで復活した。

時間的なものもあったので今日は4匹目のカマキリモドキを倒したところで地上に戻った。

戦果はカマキリモドキの魔石が4つと紫色の液体の入った瓶が3つ、それと赤い液体の入った瓶が1つと、たぶん2階で拾ったのでスズメバチの魔石が14個だ。


「キラーマンティスの魔石が4つで8800円、溶解液が3つで6万円、そして、おめでとう中級ポーションが1つで200万円、スズメバチの魔石が14個で3500円、合計で207万と2300円だ!」


よし!あの赤いのが中級ポーションなのか。

初めて見たぜ。

買取額が200万って事は、きっと販売額は300万以上だな。


それと、あの紫のは溶解液なのか・・・毒薬みたいな色だと思ってたら、まんまヤバい液体だったんだ。

・・・それでも値段が付くんだな。


「どうだい!言った通りだろ!1日やれば直道君なら300~400万くらい稼げると思うよ!」


そういやマジで大石さんの言った通りだった。

運に左右されるけど、上手くいけば2~3日で完済出来そうだ。

潜る前は胡散臭いおっさんだったけど、今はそこはかとなく神々しく見えるぜ!

大石さんに換金額は全て借金返済に充ててもらう事にして、俺は今日の冒険者活動を終わりにした。


ブックマークや評価、有難う御座います。

頑張る励みになります。

本日2本目の投稿です。

多少でも楽しんで頂けたら幸いです。

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