口では勝てない。
俺は今、小さなおっさんこと大石さんに、新宿ダンジョンについての話しを聞いていた。
「直道君は手にしか防具を付けて無いけど、体と足にも何か付けた方がいいよ!」
しごくまともな意見だが俺の場合はスキルのお陰で武器も防具もあまり重要じゃない。
どちらかと言えば動きやすさを重視したものであればいい。
「お腹を切られたりすると超痛いよ!それに足を怪我したら逃げれないし!腕は最悪無くても走れるからね!僕も一度・・・。」
脅しのような体験談を聞いていると、何となく防具は有った方がいい気がしてくる。
小さいおっさんのセールストークに負け、俺は3000万もする防具一式を注文した。
オーガ(黒)の皮で作られ、急所を魔鉄と呼ばれるダンジョン産の鉄で補強してある逸品だ。
サイズ直しに一週間かかると言われ、その間に代金を収めてくれたらいいと説得された結果だ。
ついでにポーションも欲しいと言ったら、初級ポーションをサービスで付けてくれた。
一体この防具の内の何割が協会の利益なのだろう。
初級ポーションでも50万円はする。
手術後に使えばすぐに傷を完治できるため、国の他に医療関係者もポーションを買い漁っているからだ。
気を取り直してダンジョンに潜る。
狙いは女王アリの持つ回復苔の塊だ。
さっきは時間をかけすぎて結構食われたが元々4つくらい持っていたはずだ。
1つ100グラム、200万と換算して4つ手に入れたら800万だ。
今日、あと2匹いる女王アリを狩って明日も2匹狩れば完済できる。
俺は黒い笑みを浮かべながら女王アリの元に突撃した。
途中で出会う軍隊アリは全て無視し、女王アリの元にジョギングのペースで走り込む。
俺の計画は成功し、無傷の回復苔3つと少し齧られた回復苔が1つ手に入る。
女王アリの魔石も回収し、少し休むついでに軍隊アリの魔石も回収した。
そして、一息入れてから次の女王アリの元にむかう。
こちらは接近を早目に気付かれた為、回復苔3つと半分齧られた回復苔が1つとなってしまった。
意気揚々と地上に戻り、小さいおっさんに買取をお願いする。
「やったね!回復苔は合計786グラム、しめて1572万円だよ!それに女王アリの魔石と軍隊アリの魔石が33,100円、合計15,753,100円だね!」
よし!今日、たった1回で半額稼いだぞ!
明日、もう1日潜れば完済だ!
「おめでとう、これは僕からのプレゼントだ!これだけ戦ってたら、きっとすぐにスキルレベルが上がるだろうから、上がったら使うといいよ!」
大石さんが見覚えのある羊皮紙を持って来た。
「これって、簡易鑑定のスクロール・・・。」
「そうだよ!自分の力を知っておくのは冒険者の基本だからね!」
素直にお礼を言って受け取っておいた。
本当にあの鎧でいくら儲けがでるんだ?
値切ってみるべきだったか・・・。
ついでに高校生でも泊まれるホテルとかが無いか聞いてみた。
借金を返すまでは集中してやりたいし、装備に消えた分も取り戻したい。
「なら、パーティールームを借りたらどうかな?
直道君はソロだし小さい部屋でも平気だろ!
そこなら、賃貸料は1日5千円だけど、1ヵ月契約なら10万円ですむよ!
長期で借りてくれるなら更に割引も入るし、中の模様替えもOKだ!
シャワールームとトイレ付で1年契約なら、何と100万円きっかりだ!!」
小さいおっさんが俺にまたセールストークをしてくる。
聞いていると借りた方がいいような気になってくるから不思議だ。
「へ、部屋を見せてもらえますか?」
「もちろんだよ!」
俺は又しても小さいおっさんに負けた。
部屋自体は悪く無い。
壁が分厚い金庫のような部屋だが中は8畳くらいあり、奥にトイレとシャワールームがあった。
小さいおっさんが言うには、この部屋はパーティーの待ち合わせや荷物置きに使われる部屋で特殊な位置付けの部屋なのだそうだ。
作った時には需要があると思っていたが、蓋を開けると全然需要が無く、同型の部屋は全て空いているとの事だった。
だが、4人ならキツイかもしれないが1人なら十分だ。
3ヶ月以上借りてくれるなら内部の模様替えOKという事で、保証金の1ヵ月分を含めて40万を売却額から引いてもらう。
家具も購入可能で搬入までしてくれるという事だったので頼むことにした。
畳が良かったが、畳にすると改装工事で1日とられ、更にその分のお金もかかる。
なので安いパイプベットと布団、それとテーブルとソファーのセットを購入した。
購入後、大石さんから冷蔵庫とケトルくらいもあった方がいいと助言を受け、それらも購入した。
全部で12万となりこの代金も換金額から引いてもらった。
「明日にはもう搬入されてるから!でもゴミ袋とかトイレットペーパーは買わなくて良かったの?」
小さいおっさんのこの一言に殺意が沸いたが、1万円分大石さんが必要だと思う物を追加してもらう事にし、その日は新宿を後にした。
家でシャワーを浴びて夕飯をとって自分のベットに寝転がる。
「ステータス。」
名前:菅原直道 Lv28→32
年齢:16
職業:呪殺師 Lv10→13
称号:
HP:186→220
MP:204→241
攻撃力:16→19
防御力:10→11
精神力:28→32
素早さ:17→18
知力 :5→6
器用 :15→17
運 :28→32
職業スキル
呪殺Lv4→5
スキル
おおっ!レベルが4つも上がってる。
だけど、あれだけアリを倒してるのに4つしか上がってないとも言えるのか。
それと、ついに念願の知力が上がって大輔と並んだぜ。
俺は呪殺と思いながら簡易鑑定のスクロールを使った。
呪殺(4395/30000)パッシブスキル。
近づく敵に時間毎に呪いが発動。
1m以内・・・毎秒総HPの50%減少及びステータス80%低下。
5m以内・・・毎秒総HPの30%減少及びステータス50%低下。
10m以内・・毎秒総HPの10%減少及びステータス30%低下。
30m以内・・毎秒総HPの05%減少及びステータス10%低下。
減少するHPの最小単位は1。
Lv2 範囲2倍。
Lv3 呪いに麻痺の効果を追加。
Lv4 範囲2倍。
Lv5 無生物への攻撃判定追加。
Lv6 ???
Lv7 ???
Lv8 ???
Lv9 ???
Lv10 ???
無生物?・・・不死者か?
凄いけど・・・不死者って、30階層超えないと出てこない・・・奴だよな・・・。
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もういいや・・・俺は考える事を放棄した・・・。
起きて見てみたら日間ローファンタジーで10位以内に入ってました。
全て皆さんのお陰です。
ブックマークや評価してくれた方々有難う御座います。
場違い感が半端ないですが、今後も頑張ろうと思います。
有難う御座いました。