新宿ダンジョン
12月29日、俺は新宿ダンジョンに潜る事にした。
まずは武器を取りに五反田ダンジョンにむかう。
ダンジョンを管理している協会には貸しロッカーがあり、持ち出さない武器はここに預ける事になっている。
料金も1日100円と物凄くリーズナブルだ。
そのため一時期、冒険者以外の利用者が増加したため、今は冒険者以外使用できないように冒険者カードと連動するシステムにされている。
ちなみに冒険者は専用の武器ケースを持てば武器の携帯は許されている。
ただ、この武器ケースの鍵は全て協会が管理しているので、ダンジョン内か協会内でしか武器を持つ事は出来ない。
分かり易くいうと、ダンジョンAからダンジョンBに自分の武器を持って行きたい時は、ダンジョンAの協会でケースに武器を入れ鍵をかけられる。
そして移動後、ダンジョンBの協会でケースを開けてもらうのだ。
安全性を考慮してのシステムだが、面倒だということで冒険者からの評価は低い。
たしか冒険者上がりの政治家が、これを是正しようと頑張っているはずだ。
俺は戦車が踏んでも壊れないと言われているケースに、カットラスと手槍を入れて持ち運ぶ。
頑丈に作られているため、この武器ケースはかなり重い。
ケース自体で50Kgくらいあり、そこに武器の重さがプラスされている。
一説ではひったくり対策だと言われているが、たしかに頭がまともならこんなものは狙わないだろう。
この重さの物を持って逃げ切れる身体能力があるなら、確実にダンジョンに潜った方が実入りはいい。
汗水垂らして運んだ後に、普通の冒険者は台車を使うと大石さんに言われた時は身体の力が抜けた。
どうりで自衛隊の人が優しい目で俺を見るはずだ。
「直道君は今日は潜るのかい?」
ガランとした広場の中央でケースに座って休む俺に大石さんが聞いてきた。
「ちょっとだけ潜ろうと思ってます。」
慣れるためにも今日は1階層を少しまわって見るつもりだ。
いけそうなら2階層もいくつもりだが、3階層にはいかない。
何故なら3階層は中ボスがいるからだ。
大石メモによると新宿ダンジョンは3階層毎にボスがいる。
そして最高到達階層は56階層。
つまり、それ以上あるという事だ。
1階層は軍隊アリの階層。
2階層はスズメバチの階層で、もろ昆虫エリアだ。
昆虫と言ってもダンジョン産のため普通にデカく、死ぬと魔石を残して消える。
どちらも恐ろしいのはその数で、特にスズメバチの方は毒まで持っている。
五反田ダンジョンと違い1階層に1種類の魔物しか確認されていない。
その事を大石さんに話すと、五反田ダンジョンは練習用なんじゃないかと言っていた。
誰が何のために練習用ダンジョンを作ったのか分からないが、俺が考えてもそんな事が分かるはずも無い。
ここはそうなんだと思って考えを切り替える事にした。
「じゃあ、ちょっと行っています。」
大石さんに挨拶してからダンジョンの入り口をくぐる。
この階は石畳じゃ無くて洞穴みたいな感じの階層だ。
洞窟探検みたいだが天井が明るいのでアトラクションみたいだ。
大石さんの地図が正しければ、この階には3匹の女王アリがいて、そいつが軍隊アリを生み出し続けている。
女王アリを倒しても1日ほどで復活するらしいのだが、その間は軍隊アリを生み出さないのでアリの増える速度が減る。
軍隊アリはある一定以上の数にはならないらしく、多分、女王アリ1匹につき1万匹との予想が書かれていた。
とりあえず俺は入り口から一番近い女王アリの元にむかう事にした。
時々、俺の近くにまでくるアリはいるがアリがあまりいない。
魔石が地面に散らばる様に落ちているから、接近する前にかなりの数が死んでいるのだろう。
落ちてる魔石を全て拾う事は難しいが、見つけたやつはもったいないから拾って進む。
1時間くらいでようやく女王アリのいるエリアまでやってこれた。
軍隊アリは1mくらいの大きさのアリだが、女王アリは腹だけで20mくらいあり、
その上に小さな体がのっかっていてちょっと不気味な姿だった。
視認出来る距離にまで近づくとっ向こうも俺の接近を気付いているらしく、腹から大量の卵をポンポン産んでいる。
それが5秒もすると弾けて、中から成虫のアリが出てくるのだ。
不思議を通りこしてイカサマのような能力だ。
もう女王アリまでの距離は50メートルくらいなので、俺のスキルの効果範囲には収まっているはずだ。
アリ達も卵の段階から俺のスキルのダメージを受けているらしく、成虫になっても10秒もたずに死んでいく。
女王アリが中々死なないので不思議に思い観察すると、何か分からないが緑色の苔の塊のようなものを喰い続けている。
もしかして、それのせいなのだろうか?
ちょっと怖かったが、近づいてスキルダメージを底上げしてみた。
1m以内に入れば2秒でHPが全損するのである。
デバフもあるから一撃死は無いはずだ。
勇気をだして、気色悪い女王アリに近づく。
もう卵は成虫になる前に消えていく。
そして、女王アリも魔石を残して消えてしまった。
結構な勇気を振り絞ったが、結果はあっけなく俺が勝利した。
もうこの辺りにアリはいないはずだが、いつもの癖で急いで魔石を拾い集める。
女王アリの魔石は他のアリの魔石より大きく、さらに黄金色の透き通ったブヨブヨした物もあった。
色は違うが動画やTVで散々紹介された、スライムゼリーによく似ている気がする。
何か分からないが、とりあえずコンビニのビニール袋に入れて持ち帰る事にする。
それと、女王アリが食べていた緑色の苔の塊もいくつかあるので、全て持ち帰る事にする。
こちらは見た目は柔らかそうなのに軽くて硬い。
小さかったがアリの魔石もかなり拾ったので、今日は結構期待できる気がする。
思た以上にブックマークや評価をされていて挙動不審になりそうです。
正直に言うと今日あたり、グンと順位が下がって明日あたりで見えなくなると思ってました。
背を後押しして頂いているようで、申し訳なさと感謝の気持ちで一杯です。
有難う御座います、本日2本目の投稿です。