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小さいおっさん

12月28日、俺はダラダラしながら昨日投げ出したスキルについて考えを巡らせていた。

考えていると面倒になり、どうでも良くなるのは俺の悪い癖だ。

母は亡くなった遊び人の祖父の血のせいだというが本当なのだろうか。

俺の記憶にある祖父は田舎の家でパンツ1枚で投網を編む姿しかなく、遊び人では無いが堅気の商売をしていたようにも見えなかった。

隔世遺伝で俺が祖父に似るとしたら時代劇の侍のような月代さかやき状態になるはずだ。

今から毛根には注意しよう。


とにかく俺のスキルが凄く強い事と射程が長い事は分かった。

これなら他のダンジョンでも大丈夫だろう。

俺も大輔の様に仲間が欲しい気もするが、仲間が出来ると時間の調整が面倒だ。

しばらく一人でやってみて駄目そうだと思ったら、その時考えよう。


・・・やっぱり俺は考えるのは苦手なのだろうか・・・。


とりあえず今日は情報取集をしよう。

スマホでダンジョン情報を検索する。

検索すると色々な情報が出てくる。

冒険者協会のHPには日本にあるダンジョンの情報と最寄り駅、それと地図が載っていてダンジョンに行くまではこれで十分だ。

だが、俺が知りたいのは経験値も金も稼げるダンジョンがどれなのかだ。

特に都内のダンジョンで一番稼げるところが知りたい。


なので、素直に都内で一番稼げるダンジョンで検索をした。

誰かが作った冒険者のQ&Aみたいなところで俺と同じ質問をしている奴がいた。

そして、そこには新宿ダンジョンとの回答が書かれていた。

但し、入れるようならとの但し書きもあった。


俺はこのまま家でダラダラしていてもいいのだが、時間はあるし新宿まで見に行くことにした。

新宿ダンジョンは都庁の横にあり、ドーム状の建物でおおわれている。

入り口の両脇には自衛隊の人が2人立っており、一般人は入る事はおろか近づく事も躊躇ためらうような様相をしている。


恐る恐る近づくと、入り口の右に立っていた自衛隊の人が話しかけてきた。


「なにか、御用ですか?」


思ったより丁寧な言葉遣いのため逆に驚いてしまう。


「・・あ、あの~・・・中に入りたいんですが・・・。」


「失礼ですが、冒険者カードを拝見出来ますか?」


ビビりながら答えると、カードの提示を求められた。

あのおっさんが俺を騙して無ければ、これで行けるはずだ・・・。


財布から冒険者カードを取り出し渡すと、驚いたようにこちらを見て、冒険者カードをカードリーダーみたいな奴に通した。

数秒、機械の画面を見てから、壁に付いた電話で何処かに連絡をしていた。


「どうぞ、確認が取れました。」


電話が終わるとカードを返してくれて、そのまま入り口の扉を開けてくれた。

扉は普通の家の扉のようだったが、開くと10cmほどの厚みがあり、嫌でも警備の厳重さを物語っている。

場違い感が半端なく、俺は新宿ダンジョンに物見遊山で来た事を後悔しだした。


防空壕のような通路を抜けると無人の広場にでた。

ダンジョンの入り口も見えるが受付に誰もいない。

五反田ダンジョンと違い静寂に支配された空間に緊張感が高まる。


「ごめん、ごめん、まさか人が来るとは思わなくて!」


俺がキョロキョロと辺りを眺めていると冒険者協会の服を着た小さいおっさんがあらわれた。

身長30cmくらいでちょこまか動いている。


「それで、どうする?ダンジョン攻略?それともお店の方に用があるのかな?ごめんね、ここ僕1人で切り盛りしてるから!」


唖然とする俺を尻目に小さいおっさんは聞かれもしない事をペラペラしゃべりだした。

俺の足元に来たおっさんを摘まみ上げて観察する。

電池で動いているわけではなさそうだ・・・。


「ああ~、初対面の人はみんな誤解するけど僕はレッキとした人間だよ!罠で小人化してるだけなんだ!」


小さいおっさんは大石健吾さんといい、小さくなった経緯を話してくれた。


「これでも僕は国付きの高レベル冒険者だったんだ!

3年前に新宿ダンジョン攻略のために潜ったんだけど、45階で見つけた宝箱の罠にかかってね!

今じゃこの通りさ!」


「小人化する罠があるんですか?」


「小人化は滅多に無いね。僕で2例目になるよ!でも死んじゃってる冒険者の中には小人化してた人もいるかもね!」


「た、大変ですね。」


「ああ、心配しないで!万能薬を飲めば小人化は治るんだから!僕の場合は好きで小人化してるのさ!」


ニヤリと黒い笑みを浮かべる小さいおっさんから邪気を感じる。


「それで、君は何しに来たのさ?」


大石さんのもっともな質問に素直に見学に来たと言うと、小さいおっさんが興奮したようにちょこまか動き出す。


「偉い!最近はレベルが上がったっていうと何も考えずに突撃する冒険者が多いんだけど、直道君はちゃんと考えて動いてるね!」


母の感想とはまるで逆だがそうなのだろうか・・・。


「そんな、直道君に僕からのプレゼントだ!」


小さいおっさんが自分の体ほどもある薄い手作りの本を掲げる。

こ、これは、もしや伝説の薄い本か・・・。

断わる理由も無いので仕方が無く受け取り、中を見るとコピーした資料をまとめた手作りの本のようだ。

女性の裸体は載っていない・・・。


「新宿ダンジョンの1~5階の地図と注意すべき点が書いてある!それを直道君にあげよう!」


がっかりしている俺に小さいおっさんから声がかかる。

中を確かめると確かに地図と注意書きが書かれている。

どちらも手書きでかなり汚い。

ところどころ読めない字がある。


「すみません、大石さん、ここって何て書いてあるんですか?」


「どこだい・・・ああ、これはね・・・。」


その後、俺達は2時間を、この大石メモの解読に費やした。


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