留学生と模擬戦
「ハァハァ…間に合った…ふう~」
息も絶え絶えに教室に辿り着き何とか遅刻を免れた僕は周りからの視線を感じながら席に着く、息を整えようと深呼吸をしているとカレン先生と男女二人の生徒が教室に入ってきた。
「みんなおはよう、遅刻者がいなくて安心した。では留学生を紹介する、自己紹介をしてくれ。」
「初めまして俺は幸若、よろしく。」
「初めまして私は美剣と申します。これからよろしくお願いします。」
背が高く目つきの悪い男子生徒が幸若、黒髪を腰まで伸ばした綺麗な女子生徒が美剣、留学生は雷電さんと同じような服装で来ると思っていたけど、僕とたちと同じ制服を着ている、腰に棒みたいなのを差していてるけど。
「次はお前たちだ、二人には悪いが立ったまま聞いてくれ、ではお前から順番にしてくれ。」
先生に指名された生徒が立ち上がり自己紹介を始める、内容は名前と志望動機くらいですぐに順番が回ってきた。
「ライオ・シーベルトです、王宮魔法師に憧れてここを選びました、よろしくお願いします。」
本当は志望動機は無い、断れないから入学しただけだし、まぁでもあながち憧れているのは間違いではないけども。
自自己紹介を終えて椅子に座ると次の生徒が立ち上がり自己紹介を始める、少しして全員の自己紹介が終わり全員がカレン先生に注目する。
「全員終わったな、では闘技場へ移動を始めよう。昨日言った模擬戦だ、楽しみだな。」
楽しそうに笑う先生の後ろを着いて皆で移動を始めた。
闘技場に移動するとカレン先生とパラク君に留学生の幸若君以外は観客席に移動する。
模擬戦の相手はパラク君の希望で幸若君になったけども、観客席に移動した美剣さんが何故か僕の隣に座っている。
「あの~どうして僕の隣に座っているんですか?」
「あら?雷電さんからライオさんにお世話になるようにと言われたのですが、聞いておりませんか?それよりも模擬戦が始まりますよ。」
「ではこれから模擬戦を始める、参ったと宣言させるか私の判断で勝者を決めるからな。では始め!」
確かに雷電さんと約束したけれどもお世話ってなんだ!心の中で雷電さんに不安を漏らしていると、美剣さんの言う通りカレン先生の合図で模擬戦が始まった。
「僕はこれでも次席で入学する程の実力者なんだ、今ならお願いすれば手加減してもいいよ?」
挑発に幸若君は無言で一切反応せずに土の地面を足で均している。それを見てあからさまに不機嫌になったパラク君は声を大にする。
「いいだろう、そういうことなら手加減はしないからな!」
手から人の頭程の大きさをした火の玉を連続で撃つ、かなりの速さで飛んでいく火の玉、それを幸若君は難なく躱すが攻撃をする素振りを見せずにその場から動かずにいる。
その行為がパラク君の怒りをさらに煽り、火の玉だけではなく水の玉や雷の玉など複数の魔法を高速で大量に撃ち出していく。
「僕を馬鹿にしやがって!攻撃もせずに勝てると思うなよ田舎者が!」
あまりの魔法の手数に躱し続けるのが困難になった幸若君は腰に差しているものを抜いた。
「美剣さんあの棒のような武器は刀と呼ばれる武器ですか?」
「そうですよ極東独自の技術で作られているんです。でも彼も喧嘩を売る相手を間違えましたね。」
僕の質問に嬉しそうに話す美剣さんに理由を尋ねようとすると、クラスメイト達の驚愕の声が聞こえて模擬戦に視線を戻す。
それは目を疑う光景だった、高速で撃ち込まれる魔法を、躱しきれない程の量の魔法を、幸若君は物凄い速さで刀を振り、向かってくる全ての魔法を切り伏せていた。
魔法を切って防ぐなんて聞いたことがない、切り裂かれた魔法は形状を維持できずに霧散していく。
パラク君も驚きの表情を浮かべてはいるが、僕から見れば首席でないのが不思議なくらいの実力だと思う。複数の属性魔法を同時に使うのは簡単な事ではないし、それを大量にしかも高速で撃つ事が出来る人なんて同世代で見たことすらない。
「僕をおおおおぉぉぉぉ!舐めるなあああああぁぁぁぁぁぁ!」
防ぐだけで一向に攻めてこない幸若君に堪忍袋の緒が切れたのか、魔法を撃つ手を止め叫びながら地面を踏みつける、それと同時に幸若君の足元が盛り上がりそこから円錐型の土の槍が彼目掛けて突き出る。
土の槍を後ろに跳び躱すと、魔法が途切れた隙にパラク君に向かって突っ込む。
攻めに転じた幸若君は人の動きとは思えない速さで突き進む、それに対応しきれずに焦るパラク君は魔法を撃ち出し抵抗するけど、二人の距離はあっという間に縮まりパラク君は喉元に刃を突きつけられ降参をせざるを得なかった。
初めての戦闘回です。分かりづらかったり変な表現があったら教えてください。