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僕の異常な学園生活  作者: マロ
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一難去ってまた一難

突然の第二王女の訪問で教室に残っていたクラスメイト全員が驚きのあまり固まっていた。

だが僕は冷静だった、フェーレス・デル・オルディンがわざわざ僕を訪ねてくる理由は一つしかない。

そして僕は今朝の誓いをたった数時間で破らないようにしなくてはならない

唯一の救いはパラク君以外は自己紹介をしていないから顔と名前が一致しない事だ、今のうちに僕には関係ないオーラを出しながら教室を出よう!


「もう一度聞くわ、ライオ・シーベルトはいるかしら。」


誰も反応しないからか最初よりも声を張り上げている、その声に我に返ったクラスメイト達がキョロキョロと周りを見回してるが僕を見つけられるはずがない。

その隙に僕はフェーレス王女のいる扉とは反対側の扉に移動を始める、走ってしまうと不自然なので気持ちゆっくりめに歩いて移動する。

扉がもう目の前だ!あと数歩で教室を出られる!僕頑張った!などと心の中で喜んでいるとフェーレス王女に話しかける女子生徒の声が聞こえてきた。


「ライオ・シーベルト君の席はそこだから金髪のあの子ですよ。」


その女子生徒は黒板に書いてある座席表を見ながら親切に僕の方に指を差していた。

しまった!黒板の座席表を忘れていた!しかも最悪の状況になってしまった、このままじゃクラスメイトは僕に不信感を抱くだろう、王女に呼び出されて逃げる奴なんて普通じゃ考えられない。


「彼ね、ご親切にありがとうございますですわ。」


親切な女子生徒にお礼を言うと扉の前で固まってる僕に近づいて来る、僕は意を決して走り出そうとしたとき教室の外から大声が聞こえてきた。


「フェーレス!!どこにいるんだ!早く父上に報告に行くぞ!」


フェーレス王女を探しにきたと思われるナミル先輩の声が聞こえてきた。


「今から向かいますわお姉様!」


僕を目の前にして教室の外にいると思われるナミル先輩に聞こえるように大声で返事をして、フェーレス王女は僕を少し品定めするように見てから教室を出て行った。

ナミル先輩のお陰で僕は危機を乗り越えられたようだけど、初日からフェーレス王女に目を付けられてしまった、もうこれから僕の学園生活は悪い予感しかしなくなってきた。

心中穏やかではないが僕は周りから視線を感じながら教室を出た。


学校の敷地を出て家ではなく教会に向かって歩き出す。

14.5分歩くと教会に辿り着く、ここに来た理由はシスターと子供たちに会うためだ。


「ライオじゃないか!こんな時間に来るなんて珍しいねぇ!」


教会の門をくぐると修道服を着た、ふくよかな体型の女性に声をかけられる。


「シスターお久しぶりです。今日は入学式で早く終わったので寄りました。」


「そうかい入学おめでとう、だけど皆はまだ勉強中だよ、早く来すぎたね。」


リーメ王国の教会は教会としての役割とは別に二つの役割がある。

一つ目は学校だ、午前中だけの授業で読み書きや魔法の基礎学を無償で教えてくれる。


「じゃあ終わるまで待ちますよ、何か手伝うことありますか?」


「あんたは本当に良い子に育ったね」


待ち時間をつぶす為の提案だったのだけど、シスターは感慨深げに喜んでいた。


シスターの庭掃除の手伝っているうちに、正午を知らせる教会の鐘が鳴った。

それと同時に教会内が騒がしくなる、どうやら授業が終わったようで子供たちが庭に飛び出してくる。


「あっ!ライオ兄ちゃんだ!」


一人が僕に気づいて大声を上げると、それにつられて皆が一斉に僕の方に押し寄せてきて、あっという間に子供たちに囲まれてしまった。


「ライオは本当に人気者だね、だけど皆ライオが困っているから落ち着きなさい。」


それを見ていたシスターは嬉しそうに微笑んでいたが、服を引張ったりボディブローを打つ子供たちに戸惑う僕を見るに見かねて助け船を出してくれた。


「「「はーい」」」


シスターの一声で集まっていた子供たちがわらわらと散っていく、子供たちに開放されて安堵してると僕にシスターが話しかけてくる。


「今日もアリーに会いに来たんだろ?あの子には本当に助けられてるよ、今頃は多分マリアと一緒にご飯の準備をしてると思うから行ってきな。」


「ありがとうシスター。」


シスターにお礼を言って教会の中に入る、アリーは僕の二つ下の14歳で珍しい灰色の髪をした女の子だ。

本来であれば6~12歳まで教会で歴史や魔法の基礎を勉強して、13~15歳まで学校で職業についての学ぶのだけど、でアリーは訳あって進学をせずに教会のお手伝いをしてお給金をもらっている。


「アリー居るかい?」


僕は厨房の扉を開けて中を覗くとアリーとマリアさんが料理をしていた。

マリアさんはこの教会のシスターの一人で慎み深く笑顔が素敵な女性だ、しかも白騎士をしている婚約者がいるらしい。完璧な勝ち組である。


「ライオお兄ちゃん来てたんだね、今マリアさんとご飯作ってるからちょっと待っててね。」


アリーとマリアさんが作っているご飯はこの教会に住んでいる子供たちのご飯だ、教会は二つ目の役割として孤児院もしている。

身寄りの無い子や様々な理由で家族で生活出来ない子たちが集まっている、アリーもその一人で僕も今のシーベルト家に養子に入るまではこの教会で生活していた。


「わかったよ、食堂で待ってるね。」


マリアさんに軽く会釈をして食堂に向かう。

食堂に着くとシスターと子供たちが食事の準備をしていたので僕も手伝うことにした、厨房では何の料理を作っているかわからなかったけど、今日のお昼ご飯はシチューみたいで準備を終えた子供たちがお腹を鳴らしながら待ち遠しそうにしている。


「みんな~お待たせ~、シチューで来たわよ!器を持って順番に並んでね!」


アリーとマリアさんが大きな鍋を運びながら子供たちに声をかけると、器を片手に子供たちの列ができる。

順番にシチューをよそい皆が席に着くのを確認してアリー達も席に着く、皆で一緒にお祈りをして食事を始める。


「アリーは元気そうだね、シスターも頑張ってるって褒めてたよ。」


食事をするアリーの前に席を移し声をかける。


「この前来た時も同じこと言ってたよ、でもありがとう。」


そう言って僕に笑顔を向けるアリーだけどその笑顔が寂しそうに見えてしまう、それが気になって時々こうしてアリーに会いに来ている。


「でもごめんね、教会を出たお兄ちゃんにはご飯出せない決まりだから。」


アリーは申し訳なさそうにしているがそれはしょうがない、教会にいる子供たちに掛かる経費は国がちゃんと管理しているため、特別な場合を除いて食事などの金銭の掛かる施しは禁止されている。

だけどとてもいい香りのする美味しそうなシチューを目の前にして僕の腹の虫は我慢できずにいた。


「僕はアリーの様子を見に来ただけだから気にしないで、お腹もすいたしそろそろ帰るよ。」


「わかったまた来てね、それと入学おめでとう!」


笑顔で祝ってくれるアリーに手を振り、マリアさんとシスターに声をかけてから教会を出ると眼帯をした見上げる程背の高い和服の男性に声をかけられた。


「君がライオ・シーベルトだな、ちょっとだけ話がしたい。」


僕は今日一日で胃に穴が空く気がした。

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