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僕の異常な学園生活  作者: マロ
17/21

休日その2


「それ本当?」


「あぁ、いきなり気失ったお前の脇腹に剣ぶっさしてさ、先生スゲー怒って幸若の顔を思いっきりぶん殴ったんだよお前は何をするんだ!!って、そしたら極東独自の治療法だって美剣?に説得されて渋々了承、それでも今回みたいな緊急の時しかやらない荒治療らしいけどな。」


極東独自ということは魔法が使えない極東の人でも魔力蓄積症になるのは意外だったし、幸若君も先生と同じで僕に異常が起きていたことを何らかの形で見抜いていた事にも驚きだ。

とはいえ突然脇腹を刺すのはやり過ぎな気がするし言いたい事もあるけど、そのおかげでこうしていられる訳だから文句は言えない。


「治療ってどんな感じだったの?」


「あれは…、ちょっと思い出したくない。」


顔を青くするウィリアムを見て少しゾッとしてしまう、一体どんな治療法だったかは先生や幸若君達に聞かない方がよさそうだ。


「まぁでもライオは無事だったしこの話は終わりだ、それよりも今度紹介したい奴がいるんだけどさ…、」


そこからはウィリアムととりとめのない談笑をした、殴られた幸若君は矢のような速さで吹っ飛んだとか、カレン先生はあんな感じだけど虫が苦手だとか、座学で居眠りをしたら魔法が飛んできたとか、話の種は尽きる事無く日が沈むまで続いた。


「じゃあそろそろ帰るわ、長居して悪かったな。」


「そんなことないよ来てくれてありがとう、今度話してたミーナさんに合わせてね。」


「おう!ちょっと気難しい奴だけど悪い奴じゃないからライオなら絶対仲良くなれるぜ。じゃあまた明日な!」


玄関でウィリアムの姿が見えなくなるまで見送り自分の部屋に戻る、時計を見ると夕食の時間までまだ少し時間があるから読書の続きをしようと本を手にとり、栞を挟んだページから本を開くとほぼ同時に勢いよく扉が開かれた。


「ただいまライオ!良い子にしてた?具合悪くならなかった?ご飯もちゃんと食べれた?朝起きたら私じゃなくてサーシャがいて驚いたでしょ~、ライオが寂しがると思って頼んどいたのよ~。」


ベットに腰かけていた僕に抱き着いて頬ずりしてくるセリア、僕は思うことがあって肩を掴んでゆっくり引きはがす。

凄く寂しそうな表情で僕を見つめるセリアに優しく話しかける。


「あのねセリア、サーシャさんに添い寝を頼む必要は無かったと思うんだ、セリアが僕と一緒に寝る事になったのは僕の体調が急変した場合に対応するためで、僕が寂しいからじゃないよね?」


「確かにその通りだけどその言い方だと私と寝るのが嫌だったみたいに聞こえるわ、それにサーシャもライオ『お嬢様お話があります。』てたし。」


いつの間にか僕の部屋に来ていたサーシャさんによって肝心なところが全く聞き取れなかった。

でもサーシャさんが来たという事は今朝の件を報告されるのかもしれない、セリアがサーシャさん所へ向かい部屋から出る、僕は不安で嫌な汗が止まらなくなるが数分してサーシャさんと一緒に戻ってきたセリアは何故か嬉しそうにしているけど謎の威圧感を発している。


「ライオ今日友達がお見舞いに来たんですって?今まで一度も友達が来たことが無かったから友達がいないのかって心配してたのよ~。」


「う、うん。」


セリアは僕の隣に座り腕を組んでくる、てっきりサーシャさんは僕にお尻を触られた、抱き着こうとしてきた、なんて報告されなくて安心だけどセリアの様子がおかしい。


「どんな子なの?女の子じゃないわよね?。」


心なしかセリアの笑顔が怖く感じてしまう、謎の威圧感も強くなるばかりだ。


「男だよ、ウィリアム・オーランドって言うんだ。」


「あらそうなのね!それなら安心だわ、でもウィリアム・オーランドって悪ガキで有名なのよね、今はまだ良いけどちゃんと友達は選ばなきゃ駄目よ?女の子なら特にね。」


「う…うん、わかったよ…。」


誰からウィリアムの事を聞いたのか分からないけど僕は気付いてしまった、ずっと笑顔でいるセリアだけど顔は笑っていても目が全く笑っていない事に。

僕の中で不安がどんどん大きくなっていくのが分かる、こんなセリアは初めて見るしどうすればいいのか分からない。


「ねぇ、セ…セリア?」


「どうしたのライオ?」


同じ笑顔で僕の顔を覗き込んでくる。


「もしかしてだけど…怒ってる?」


我ながら思い切った事をしたと思う、怒ってるセリアにこの質問をすると後が怖い。

だけど今回は怒っているのか分からないし、謎の威圧感を感じながらあの笑顔を見るのは僕には耐えられない。


「えぇ怒ってるわだから意地悪しちゃうわね、サーシャの抱き心地はどうだった?」


一気に背筋が凍り付き一瞬で背筋が伸びる、言い訳を考えるよりも先にこの場から逃げ出そうとするけど、セリアに強く腕を組まれている上に扉の前にはサーシャさんがいて即諦める。


「どうしたのライオ?逃げようとなくてもいいじゃない話をしましょう。」


セリアが怒っているのも当然だ、僕は欲に負けてサーシャさんにあんな事をしてしまった。


「あのねライオ、あなたも年頃だから女性に興味があって当然だわ、でも私より先にサーシャに抱き着いてお尻を触るって変じゃない?順番がおかしいと思うの。」


「はい?」


さっきまで抱いていた罪悪感を忘れてしまいそうになるほど訳が分からなかった、唖然とする僕をよそにセリアは組んでいた僕の手を掴み強引に自分のお尻を触らせようとする。


「なにやってるのさ!それにいつもセリアから抱き着いてくるじゃないか!」


慌てて手を振り解きセリアから離れる、なんでこんな事になっているのか理解が追い付かない。

とにかく僕は逃げる言い訳を探すと偶然部屋にある時計が目についた。


「もうすぐ夕食の時間だからこの話は終わり、チエーニさん達を待たせるわけにはいかないでしょ。…うわ!」


逃げる様に部屋から出ようとすると、後ろから手首を掴まれて凄い勢いで引っ張られる、そのままベットに仰向けに倒される僕にセリアが馬乗りになった。

鼻と鼻がぶつかりそうな程顔を近づけてくる、セリアの透き通るような銀色の瞳に見つめられ釘付けになってしまう。


「私から抱き着いてもライオは抱きしめてくれないじゃない、だから今日はライオが抱きしめてくれたら許してあげるわ。ちょっとだけで良いからお願い。」


耳元で優しくささやいたセリアはゆっくり僕に体を預けながら首に腕を回してくる、仄かに香る香水が僕の鼻をくすぐり全身を包み込むような優しい体温がとても心地良い、だけど必要以上に柔らかいものを押し付けられ顔が熱くなる。


「セリア胸が、当たってるんだけど…。」


「当ててるの、それより早く抱きしめてくれないと許さないわよ。」


そう言って足を絡めて更にもっと強く胸を押し付けてくる、抱き着いてくるのは日常茶飯事だけどここまで激しいのは初めてだ。

抱きしめる事で解放されるならと優しくセリアの腰に腕を回す、無言のまま時間が経つけど一向に解放されない。


「セリア?抱きしめたけど…、離してくれないの?」


「足りないわ、もっと強くして、壊れるくらい抱き締めて。チュッ」


小さく甘い声を出され耳にキスされた僕の中で何かが切れたような気がした、力任せにセリアの首元に顔を埋める様にして抱きしめる。

セリアの苦しそうな声が聞こえるけどそれも愛おしく感じてしまい力を緩めることが出来ず、ただひたすらセリアを抱きしめ続けた。


「お楽しみのところ申し訳ありませんが、夕食の時間が過ぎております。」


突然の言葉に我に返りセリアの肩を掴んで引き離す、夢中になり過ぎて扉の前にサーシャさんがいた事をすっかり忘れていた。

それはセリアも同じみたいでいつの間にか誰もいない開けたままの扉を見た僕らは、互いに目を見合わせすぐに目を逸らした、湯気が出るんじゃないかと思ってしまうくらい顔が熱くなる。


「そ、それじゃ、行きましょうライオ、き、今日は久しぶりに、皆で食事が出来るから、た、楽しみだわ。」


「そ、そうだね、ぼ、僕も楽しみだ。」


耳まで赤くなっている僕らは食堂に着くまでの短い時間、微妙な距離を保ちながらずっと無言だった。


食堂に着くと既にチエーニさんとエリナさんが椅子に座って待っていて、テーブルには料理が並んでいる。


「遅いぞ夕食はいつも決まった時間に皆で食べると決めただろう、って二人ともどうした?顔どころか耳まで真っ赤だぞ具合が悪いのか?」


始めは強い口調だったチエーニさんは僕たちの異常にすぐに気付き心配してくれる、けどその向かいに座るエリナさんは必死に笑いを堪えているのか、片手で顔を隠しながら下を向いて肩を震わせている。


「だ、大丈夫す、それよりも夕食にしましょう。」


「なら良いが、具合が悪くなったらすぐ言うんだぞ。」


結構あっさりながされ安心する、あんなこと根掘り葉掘り聞かれたら恥ずかしさで心臓が止まるかもしれない。

僕たちが座り特に合図もなく皆が目を瞑り胸元に右手をあててお祈りを始める、僕はこの間に心を落ち着かせようと深呼吸をしていた。

このお祈りは昔からある儀式みたいなもので、リーメ王国の由来にもなった創造神リーメ・カディーラ様へ感謝を送る意味があるらしい。


「よし食べるとしよう。」


チエーニさんの言葉で目を開け食事に手を付ける、体感で数分位だろうかお祈りをしたおかげで大分気持ちは落ち着いた、セリアもあんなに赤かった顔がいつも通りになっている。


「ライオ君はもう体調が良くなった様で安心したよ、明日は登校できそうなのかい?」


「はい、明日は登校するつもりです、心配をおかけしてすみませんでした。」


座ったまま頭を下げようとする僕を片手で制したチエーニさんが僕に頭を下げる。


「いや謝るのは僕らの方だ、君が気を使うと思ったからセリアとサーシャに任せっきりで顔も出さなかったからね、申し訳ない。それに君はこの家の一員なんだ、もっと甘えたって良いんだよ。」


「いえ、そんな…。」


返答に困った僕は俯いてしまう、チエーニさんはこの家に来た時からいつも僕に優しい言葉を掛けてくれる、けどそれは迷惑を掛けまいとする僕にとって嬉しくもあり辛いものだ。


「あなたライオ君を困らせては駄目じゃない、ごめんなさいねライオ君私も心配で顔を出そうと思ったんだけどこの人に止められてしまって、だからサーシャから聞いてると思うけど今度三人でお食事でもどうかしら?ライオ君の好きなものを食べに行きましょう。」


「はい、わかりました、ありがとうございます。」


正直に言えば断りたかった、僕がここに来て1年が経った位の時だったと思う、チエーニさんとエリナさんが僕の事で口論しているのを偶然聞いて以来二人の前では萎縮してしまうようになった。

だからサーシャさんから伝言を聞いたときは今回の事を謝罪して終わらせる位の気持ちでいた。


「ゴホン!お母様、どうして私は誘ってくれないのでしょうか?」


わざとらしく大きな咳ばらいをするセリアに不思議そうな顔をするエリナさん。


「だってセリアはいつもライオ君を独占しててずるいじゃない、私もライオ君と仲良くしたいのよ、それにライオ君もたまにはセリアから解放されたいわよね?」


「そんな事ありません!ライオは私と一緒にいるのが幸せなんです!」


少しムキになり椅子から立ち上がるセリアを悪い笑顔でさらに挑発するエリナさん。


「あらあら独占欲が強いと長く続かないわよ、誰に似たのかしら?」


「お母様に決まっています、私知っているんですよお父様との馴れ初め。」


勝ち誇った様な表情をするセリアの一言でエリナさんの雰囲気が変わり空気が凍りつく、口論はいつもの事で基本的には和やかな感じだけど、時々本気になってしまう時がある。


「あら?あなた話したの?」


「は、話す訳無いじゃないか。」


いつも落ち着いているチエーニさんが珍しく動揺している、それくらい馴れ初めの話は教えたくないのかもしれない、でも僕も二人の馴れ初めは聞いてみたい。


「あらそう、セリア誰から聞いたか分からないけど他の人に話してないわよね?」


「えぇもちろん、ライオにも話していません、ですが口が滑ってしまうかもしれませんね。」


「二人とも落ち着いてくれ、食事の続きをしよう、せっかくの料理が冷めてしまうしライオ君も困っているよ。」


チエーニさんに宥められて笑顔のまま睨みあっていた二人が同時に僕に視線を向ける、二人の口論に収拾がつかなくなるとチエーニさんは決まって僕を理由にするのだ。


「え?あ、あはは…。」


いきなりふられて反射的に愛想笑いをしてしまう、いつもよりヒートアップしていたからか僕を見る二人の視線は怖かった。


「そうねライオ君を困らせる訳にはいかないわね、それに弱みを握らないとハグすらしてもらえない娘を相手にしても大人げないわよね。」


「そうですねライオの為なら仕方ないです、それに惚れた相手に会うために自分の両親を脅すような人に常識が通じる訳ないですよね。」


「ゴホッ!ゴホッゴホッ!」


二人の言葉に僕は食事の手を止めチエーニさんは飲んだ水に咽ている、何故エリナさんがその事を知っているのかわからないし、両親を脅すって普段お淑やかなエリナさんからは考えられない。


「何を言っているのセリア?私がそんな人に見えますか?」


「誰もお母様とは言っていませんわ、それに私は弱みなんて握ってません。」


さっきより険悪な雰囲気になってしまった、普段は一緒に買い物に行ったりと仲が良い二人なのにどうして喧嘩がするのか分からない。

チエーニさんも諦めたのか僕に目配せをしてくる、僕も小さく頷いて黙々と食事続ける事にした。


「ですから私とライオはラブラブなのです!」


「あら私がセリア位の時は誰もが羨む理想のカップルと呼ばれていたのよ!」


終わる事無い二人の口論の内容は聞いている側からすると恥ずかしくて、チエーニさんも顔が赤くなっている。

でも僕とセリアは恋人同士ではないのに、もう付き合っていることを前提に口論しているのが不思議だ。


「僕は部屋に戻りますね。」


完食した僕はチエーニさんに軽く会釈をして口論を続ける二人をよそに食堂を出る、手を小さく振ってくれたチエーニさんも既に食べ終わっているみたいだったけど二人を宥める為に残っているみたいだ。


部屋に戻って仰向けでベットに寝転がる、二人の口論の途中でチエーニさんが目配せをしてくるのは、早く食べて部屋に戻りなさいという合図で、今までそれに何回も救ってもらった。


「あっ本のお礼言うの忘れてたな。」


机の上に置かれたチエーニさんが貸してくれた本が目に入る、今日はウィリアムが来たからあまり読めなかったし、お礼を言うのは読み終わってからの方が良いかもしれないな。


「ライオ様、今日シャワーは浴びられますか?」


「今日は体を拭くだけにします。」


扉の向こうからサーシャさんの声が聞こえてきた、シャワーは浴びたいけど刺し傷が二日で治る訳もないので諦める。


「分かりました、濡れタオルをお持ちしましたのでお使いください、拭き終わりましたら包帯を交換致しますので。」


そう言ってタオルと包帯を持って部屋に入ってくる、セリアもそうだけど突然部屋に入るのは止めてほしい。


「あ、ありがとうございます、…いつまで部屋の中にいるんですか?」


タオルを受け取り服を脱ぎ始めるけど何故かサーシャさんが僕を睨みつけている、それに女性にまじまじと裸を見られるのは恥ずかしい。


「包帯を替えないといけませんので、それまで待機しているのです。」


「終わったら声掛けるので、せめて後ろ向いてもらって良いですか?」


「承知しました。」


サーシャさんが後ろを向くのを確認してから服を脱いで下着姿になる、包帯を外して濡れタオルで全身を拭いていく。


「終わったので包帯巻くのを手伝って下さい。」


「承知しました、では両手を上げてください。」


手伝ってもらうだけのつもりだったのにサーシャさんは物凄い手際の良さであっという間に包帯を巻き終えてしまう。


「あ、ありがとうございます。」


「いえ、明日の朝もう一度包帯を交換致しますので、それではおやすみなさい。」


「はい、おやすみなさい。」


明日は久しぶりに学園に行くから早めに寝ようと寝巻に着替え歯を磨いてベットに入る、少しだけセリアの香水の香りが残っていてあの事を思い出してしまう。


思えばサーシャさんなら分かるけどセリアに許してもらう必要は無かったような気がしてきてしまった、でも既に終わった事だから明日サーシャさんの好きなアップルパイでも買って謝ろう。

食事を終えてから結構時間は経っているはずなのに未だ聞こえる口論を子守歌代わりに眠りについた。

投稿が遅くなってしまい申し訳ないです。

次の話は出来るだけ早く投稿するようにします。


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