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僕の異常な学園生活  作者: マロ
12/21

将来と心情

セリアとサーシャさんに連行され今は馬車に揺られている、あの家からシーベルト家の屋敷まで歩くと1時間は軽く掛かるだろう。

なので馬車で迎えに来てくれたのは正直ありがたいんだけど、何故かセリアは僕と腕を組み離そうとしない。


「セリア腕を離してほしいんだけど…。」


サーシャさんは手綱を取っているためキャビンの中は二人きりだ、けど肘の辺りに柔らかいものが当たっているしセリアの顔も近くて仄かに香水のいい香りがしてドギマギしてしまう。

それに比べて僕はあのレクリエーションをしてからシャワーも浴びていないから汗臭いはずだ、だから離れてもらおうと声を掛けたけど離すどころかさっきより強く腕を組んでくる。


「ライオ将来はどうするの?」


「えっ!?あっはい!」


不意に話しかけられ驚き背筋が伸びる、反射的に返事をしてしまったけど話を全然聞いていなかった。


「はいじゃなくて、学園を卒業したらどうするの魔法師を目指すの?どこかのギルドで働くの?私はそれを知りたいの。」


「それは…。」


将来の事なんて全く考えていなかった、だけど入学してまだ二日だしそこまで気にする必要はないと思う。


「それはまだ先の話だし気にしなくても大丈夫だよ。」


自分でも下手な誤魔化し方をしたと思いそっとセリアの顔色を窺う、案の定全くもって納得していない表情だった。


「それもそうよね、入学して二日だもんね。」


怒られると思い体をこわばらせていたけど予想外の言葉が返って来て拍子抜けしてしまう。

だけどその言葉とは裏腹にセリアの表情は暗かった。


「でもねこれだけは教えてほしいの、ライオはいつか家を出ていくの?」


そう言ってセリアは組んでる腕を痛いくらいに強く力を入れている。

今から6年前にシーベルト家に来てからいつか出ていかなきゃとは考えていた、隠し子である以上僕がいくら秘密にしていても、この事実を知っている人から何かしらの被害を受けるかもしれない。

幸い今まで何も無かったけどこのまま居続ければもしもの場合が来るかもしれない、それが僕には不安で不安で仕方がなかった。


「僕は…「お嬢様、ライオ様、到着致しました。」


突然キャビンの扉が開けられサーシャさんと目が合う、腕を組んでる僕たちを見て眉ひとつ動かさず彼女は…。


「どうやらお邪魔をしてしまったようですね。」


「違いますから!扉を閉めないで下さい!ほらセリアも何か言ってよ!」


丁寧にお辞儀をして扉を閉めようとする彼女を慌てて呼び止める、セリアにも弁明してもらおうと声を掛けるけど組んでる腕を離さずにサーシャさんを見る。


「そうよサーシャ!邪魔するなんて酷いわ!せっかくいいところだったのに。」


「えっ!?セリアそうじゃなくてね、サーシャさん!だから閉めないで下さい!」


凄い力で閉めようとする扉を何とか片手で抑えつつ、組んでる腕を離してもらおうともがくけど離してくれない。


「セリアお願いだから離して。」


「ライオはそんなに私と腕を組むのが嫌なの?悲しいわ…。」


「いや、そういう訳じゃないんだけど…。」


悲しそうにするセリアに何も言えなくなるしサーシャさんは扉の隙間から覗いて僕にプレッシャーをかけてくる。


「お前達何をやっているんだ!帰って来たなら早く入りなさい!」


もうどうすることも出来なくなり途方に暮れていた所にチエーニさんの声が聞こえてきて僕は胸をなでおろす。


「申し訳ありませんわ、ライオもごめんね。」


セリアはキャビンを降りて先に屋敷に戻っていく、僕も屋敷に戻ろうとキャビンを降りるとチエーニさんに声を掛けられる。


「すまないなライオ君、友達と食事をしていたのだろ?セリアが邪魔をしなかったかい?」


「いえ丁度帰ろうとしてましたし、それなりに距離がありましたから迎えに来てくれて助かりましたよ。」


僕の言葉にチエーニさんは笑顔になる、夜に女性が二人で出歩くのが心配だったのだろう。


「それは良かった、ライオ君が外食してると聞いた途端にサーシャを連れて飛び出して行ったからね、迷惑かけてないか心配してたんだ。」


予想の斜め上をいく答えに苦笑いしか出来なくなる、屋敷の庭をチエーニさんと話しながら歩いていると玄関の前でセリアが待っているのが見える。


「セリアはね、君の事を大切に想っているんだ。今日みたいに少し暴走する事はあるけど嫌いにならないでやってくれ。」


「…はい。」


僕だってセリアの事を大切に想ってる、だけど僕の気持ちより先に伝えなきゃいけない事がある。

僕はその日が来るのが怖い、その事を考えるだけで夜も眠れない。


「ライオお帰りなさい。」


「ライオ君お帰り。」


玄関に辿り着くとセリアとチエーニさんが優しく声を掛けてくれる、僕はこんなに優しくしてくれる人たちをこれからも騙し続けなけらばならない。


「…ただいま。」


本当は早く言ってしまった方が良いのは分かっているけど、僕にそんな勇気はなかった。





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