さよなら人類 2 -ホットラインー
「さて用件は一つ一つ言葉にするまでもなくわかっているだろう大統領」
「わかっている。ここに至っては何処に、だとか、誰が、だとか責任を問うたとて、ただただ時間の無駄になるまでだ、やめよう」
「うむ。ところで生命が多少なりとも生き残ると思うかね?」
「そうは思わんね。うちの学者の予想では、少なくとも人類はダメだろうと。人類が人類として生を受けた時点で、過酷な環境の変化にはついていけなくなることは決まっていたと言うんだね。私も実感するよ。この頃では執務室から一歩出ただけで気分が悪くなる。人間は脆弱になりすぎた」
「わかるよ。お互い色々なプレッシャーにさらされてもいるしな。ただ一応言っておきたいんだが、大統領。私個人としては、あなたに対してネガティブな感情は一切持っていないということだ。神に誓ってもいい。むしろシンパシーすら感じているよ」
「それを聞いてホッとしたよ。会談の握手で感じた君の手の熱さは、私にもしっかり伝わっていたよ。私も全く同感だ。結果はひどく残念なものだったけども」
「だが少なくとも我々はここでわかりあえたわけだ。それに最後の手はすんでのところで打てたじゃないか。あとは神様にでも祈るとしようじゃないか」
「私も祈ろう、君と、君の家族の幸運を。そして人類皆の幸運を」
「ありがとう。君にもね。それでは最後の時間、愛する家族と過ごすとするよ、さらば友よ」
「ああ、お別れだ」
爆発は、この二人の大統領の通話終了から20分後のことである。
人類の歴史はここで幕を閉じた。