1話 次の旅人
―――スフィア
そう遠くない昔にその言葉を聞いた気がする
しかし、もうどうしようもない
思い出すのが遅すぎた
この命はもう風前のともしび
せめてもう少し早く、いや最初から思い出していれば…
「やはり、無理じゃったか」
暗闇のなかで嘆息する。
「うん。やっぱり自然のままっていうのは難しいね。でも惜しかったなー、あの人。最期は少し思い出せてたみたいだったよ?」
「そのようじゃな。そして、最初から思い出せていればどうにか達成できるような口振りじゃった。」
「おっ、今度は最初から思い出せるようにしてみる?」
「ふむ…じゃがの、それでは些かイージーモードすぎて使い物にならんじゃろう。」
「じゃあ、少しずつ思い出せるようにするとか?」
「それは前に試したが、やはり使い物にはならんかったはずじゃ。いや、待てよ…あの時は年齢でやってみたが…」
「ふふっ、なんだが良いアイディアが浮かんだみたいだね。」
「ふむ、次はうまくいくと良いんじゃが…」
「そんなのやってみないと分かんないよ。それで?どこから誰を使ってどこでやるのさ?」
「そう急かすんじゃないわい。うーむ、やはり地球の日本人を使うかの。そして今回は___でやることにするかの。」
「そっか!でも、うん?この日本人で大丈夫?」
「大丈夫だ。もんだいない…はずじゃ。」
「心配性だなあ。まあちょうど良いのは他にいないみたいだし、仕方ないよ!それに久しぶりに___でやるし…オラわくわくしてきたぞ!」
「儂もじゃ。この設定で、あとは…こうしとくかの。そして、おっとこれを忘れてはいかん。ふむ、これで…よし。」
暗闇の中、何かを操作する老人。すると地球から一つの魂が異世界へと向かいだす。
「ふーん。この日本人って意外に良いんじゃない?これサービスしとこーっと。」
「それじゃと…ふむ、まあ良いか。日本に比べれば多少ハードな世界じゃしの。」
「いいのいいの!それじゃあ、いってらっしゃーい」
「…今度はうまくいくといいのう…」
どこか不安気な老人の言葉とお気楽な挨拶と共にひとつの魂が地球を旅立っていった…。