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モンスタークラブから返事が返ってきたのは翌日だった。ハデスを通してモンスタークラブへ来るように言われたマユラは、さっそくクリスファーに知らせた。
昨日の事があったが、マユラはすっかり忘れてしまったような態度を装い、クリスファーも特に気にすることなく普通だった。
二人はアプリコットへ向かう。店でライオン頭によって案内されたのはエギュトの部屋で、中央にはエギュト。その両脇にデュラハンとピクシーが立っていた。
クリスファーは進み出て、軽く会釈する。
「僕がモンスター・カウンセラーの所長です。昨日、助手が提案した件についての返答を伺いに来ました」
金髪は整えられて、黒の燕尾服には皺一つない。中々に様になる光景だ。そんな彼と対面するエギュトはがっちりとした鎧をつけたリザードマンの戦士。大きな爬虫類の口がにやりと曲がって、マユラは身を強張らせたが、どうやら笑っただけらしい。
「敬語は必要ない。これから短い間だが、我々は同士となるのだからな」
思いのほか優しげな声だ。
クリスファーは表情一つ変えず、姿勢を正して口を開く。
「では早速、今後について話していこう。モンスタークラブとしてはどうするつもりだ? あなた方の意見を聞かせて欲しい」
彼らは正式に依頼者となった。マユラ達はモンスター・カウンセラーとして彼らが抱える問題を解決しなければならない。
すなわち人間の手から自然公園を取り返す。前途多難な気がして、ちらりと不安を覚えるマユラを置いて、二人は会話を続けた。
「もちろん自然公園の取り壊しには反対だ。あの場所は自然が調和されたモンスターの住処で、人間が好きにしていい場所ではない」
「だが、工事はもうすぐ始まる。今更、取り消すのは難しいと思うが?」
「むろん。反対運動をするつもりだ」
「邪魔をすれば、あなた方がエクソシストへ目をつけられる可能性がある」
エクソシストは危険なモンスターから人間を守るための機関だ。表向きは中立な立場で人とモンスターの問題を解決する調停員の役割だが、人に害をなすと判断したモンスターを先手を打って始末するエクソシストもいるらしい。
彼らに危険だと判断されれば、モンスタークラブもどうなるかわからない。
「だからといって、黙って見ていることなど出来ぬ」
答えたのはデュラハンだった。エギュトもまた、同じ気持ちなのか深く頷く。
頑ななモンスターを前に、クリスファーは肩をすくめた。
「誰も黙って見ていろなんていってないよ。積極的な反対運動は危険だけど、事故ならば問題ない。モンスターは千差万別だからね」
そう言ってにやりと笑う。嫌な予感がした。