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始まりは終わりのあとに  作者: ペテン師ペテン
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第1章 2:見知らぬ少女

走ってきた娘は、俺の前までくると

「לסייע」(助けて)

「 הקוסם?」(貴方は魔術師?)

げ!、ヘブライ語?ここは日本のはずでは?

慌てる俺の後ろに、隠れて怯える娘。

真理より少し年が下くらいか?

一枚布を体に巻き付けて帯で止めて、長い外套のように着ている。

ほっそりとした体つきで、明るめの栗色の髪をしている。

顔は結構かわいい。村の出入り口の集まっている者たちは皆、同じような服装のようだ。

着ている服と風景を考えると日本でも現代でも無いなこりゃ!まったく。

トラブルばかりではないか!


神学系の大学にいたおかげで習った「片言の聖書ヘブライ語」で何とか語り掛ける。

「どうした?なぜ追われている」

通じてくれ…。

「貴方の言葉少し変…。着ているものも…」

なんとか通じたようだ。回答が返ってきたが知りたい事ではない。

俺の事を聞きたいわけではないのだが。

少女の回答を待つ必要はなかった。

少女に追いついた三人の男たちが、

「お嬢様、お戻りください。」

俺に向かって、

「何だこいつ」

「変なかっこしやっがって!」

ここは一体どこだ!日本語で話してくれ!

しかし俺の心の声に答えは帰らなかった。

代わりに

「貴様、おとなしくお嬢様を渡せ!」

帰ってきたのはどすの利いた脅し文句だった。

少女が俺の背中に隠れて叫ぶ

「いや!殺す気でしょ?」

いやに物騒な言葉が出てきた。

この少女とは絶対に初対面だ。おそらく俺はここに来た事はもない。

「助けて、お願い。」少女が背中で叫ぶ。

さて、俺が助けられるだろうか?腕っぷしにはあまり自信がないのだが…。

3対1で、こちらは体力に自信のない都会人。あちらは見るかに土木系と言うか昔のがっしりとした狩人じみているじゃないか。

勝てる気がしない。

「クー」

手の中のカラスが、大きな声で鳴いた。

「どうしたお前、今忙しい。ここは注意を引いたらダメだろう?」

焦って手の中のカラスを見る。

白いカラスは手の中から、肩の上へと飛び出してジャンプする。肩に乗るほど慣れてたかなコイツ?

「白いカラスだ!シャーマンか?」

「使い魔か?上級のシャーマンじゃないのか?」

「魔法を使うかも知れない。気を付けろ!」

魔法?シャーマン?俺はただの日本人ですよ…。

ん。魔法?ってなんですか?

聞ける雰囲気ではないですね…。

白いカラスを見て、何故か勝手にビビリ始めた三人を、肩のカラスが睨み付ける。(用に俺には見える)

「聞かせてください。この少女はなぜ追われてるのですか?」

俺はできる限り冷静な仕草を模して、三人に問いかけた。

「お前には関係ない!早くお嬢様をこちらに渡せ。」

今回、相手の声が少し裏返った。ここだ落ち着け俺!

ここでの話し合いでの解決は無理そうか?

どうする?

村の出口前では、何人か村人だろうか怖々とこちらのやり取りを見ている。誰も手を出す気はないようだ。

その中から、恰幅のいい一人の偉そうな男が近づいてきた。

「関係の無い者は、手を出さないで頂きたい。」

おっさんが親玉かな?

「お嬢様も早くこちらへおいで下さい。」

俺の背中で小さくなる少女。


三人の男たちが、最後に来た親玉に小声で

「こいつ上級シャーマンのようです。どうします

 身なりも変ですし、言葉もおかしい。その辺の片田舎から出てきたシャーマンか魔術師だと思います。」

「上級シャーマンなら魔法が使えるはずだ。面倒事はごめんですぜ。」

三人の男たちが、汗を垂らす中。親玉が、

「こんな処に上級シャーマンや魔術師がいてたまるか?すぐに…痛い目に…」

途中まで言いかけた男のセリフが小さくなって止まった。


どこから出たのか空を回るカラスの大群。

「カー、カー」

「カー、カー」

先ほど、肩の白いカラスが大声で泣いたので集まってきたのだろうか。

カラスは縄張り意識が強い、おそらく俺の肩の白いカラスを追い出すために…。

お前自分がおとなりになったの?


俺たちの頭上を回るカラスは次第に増え、旋回する20羽ほどの黒いカラス群れになった。

うるさく鳴き始めたので、この場の雰囲気が一種異常な状態になった。

空を見ながら怯える男たちを前に、ここがチャンスと。

俺はできるだけ堂々と

「私は、荒事は嫌いなんですが、そこをどいてもらえますか?」

と問いかける。よし声も裏帰えらなかった。

四人の男たちがお互いの顔を見渡す。自然と足が一歩下がる。

まだ下がっただけだ、もうひと押し必要か?

どうするか。細かい事は後で考えるとして、

この状況の雰囲気に、連中が戸惑っているうちに、思いついた手品の仕込みを完了してしまおう。

背中のバックのポケットから腕を伸ばして100円ライターを抜き取る。

ライターの炎の出る銀色の部分をはずして、黒い調整部分を軽く上に浮かせて中にある歯車をずらさないように調整部分を最小にして歯車にもう一度はめ込む。よし仕込みOKだ。

ライターの火力調整は大学の先輩の受け売りだが、これでよいはず。

手の中にライターを隠して、男たち4人の前に意味ありげにゆっくりと両手伸ばす。

「手荒な真似は好きではないので、引いてくれるとありがたいです。先ずは警告で。」

ニヤリとニヒルに(自称)笑って、左手に隠したライターに右手で火をつける。

ボー!

「わ!」自分で慌てちゃしょうがない。

高さ20cmぐらいの大きな火が、手の中から放出した(ように見えたはずだ)。

火をつけた自分も驚いたが、突然手の中から火がでた後景に、

驚愕の表情で動けなくなった男たちを前に、俺はゆっくりと言った。

「次は、この火を浴びてみますか?」

「ひ、ひ…、ま…魔法だ!」

一人の男が後ろにさがると、一目散に背後に逃げ出す。

それを見た男たちが、その後を追う。


男たちが逃げ去った状況を見て、

「何とかなるもんだなぁ。」

大きなため息と共に、肩の力を抜く。

肩にいた白いカラスが、胸の前まで下りてきて胸を突いたんでライターしまって、また手の中で抱える。こいつ驚いて逃げなかったのか?まあいい、あの雰囲気があればこその脅しだ。

先ほどの火に驚いたのか、あれだけ五月蠅かったカラスが居なくなっている。自然のカラスは火が苦手なようだ。

俺の後ろで、小さくなっていた少女に向き直り、目線を合わせて話しかける。

「とりあえず、追っ払ったが、よかったのか?」

「ええ。ありがとうございます。」

少し落ち着いたような少女に、とりあえず状況を聞くか。

「すまん。教えてくれ今西暦何年で、ここはどこだ?」

少女はキョットンした表情の後

「西・暦?」

「そう、西暦だ。」

と言う俺の問いかけに

「西暦って何?

 ここはメギド」


なに!、西暦を知らない?歴の概念概念がないのか?

メギド?。イスラエルの?

まて俺は日本に居たんだ。どうなった。今はいつだ。現状把握ができない。

ただ茫然と考えに沈む俺。

「貴方、やりすぎよ!」

会話中で固まった俺を不思議そうに見ている少女。村の入り口にいた別の少女が声をかけたきた。

顔あげると「楓!」

俺の目前に、いたのはまさしく楓。本人だった。

作中では聖書ヘブライ語と言っていますが、書かれているヘブライ語は現代ヘブライ語です。

不勉強の為、正確な文字が書けませんでした。

細かな点はご容赦を。

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