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始まりは終わりのあとに  作者: ペテン師ペテン
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第1章 1:カラス

「楓!」

自分の声で目が覚める事は、往々にしてあるものだ。

急いで顔をあげて辺りを見渡す。


なだからな草原が、見渡す限り続いている。

膝丈まで伸びだ草が、青々と風に吹かれていた。

「暴走車にはねられたはずだ。」

「楓は?」

まず頭に浮かんだのは、自分を犠牲にして俺を守ってくれた楓の事だ。

車に跳ね飛ばされて飛んでいく間際に見た楓は、手が変な形で体に巻きついていた。

「…」

風の音以外何も聞こえない。草原で、

暫くボーと立ち尽くす。何も考える事が出来なかった。


意識が戻るとは表現がおかしいが、やっと現状を認識できる気力が戻ったらしい。

体を恐る恐る動かしてみる。右腕は動く。左腕も動く。

右足、左足とおっかなびっくり動かして、体に痛み走らないことを確認する。

次に、擦り傷や裂傷はないか体を見渡す。

本当に小さなかすり傷しか発見できない。

なぜだ?

車に引かれて飛ばされた。なのに体に傷がない。

そもそも、ここはどこだ。見渡す限り草原。生暖かい風。

間違いなく11月の日本ではない。

「ん。俺、死んだのか?」

言葉に出してみる。

頬を手で勢いよく叩く。

「痛い!」

生きているようだ。

「…」

「持ち物は?背中のバックは?」

急いで背中を確認する。恥ずかしながら、ずっと背負っていたバックが感じられない事に今気づく。

俺の横、30cm位の処に飛ばされていた。

このバック「満員電車でも物はつぶれません」と書いてあったが本当に中の物は大丈夫のようだ。

シャッツの胸ポケットにスマホ。ズボンのポケットに財布。

とりあえず、バックからスポーツ飲料のペットボトルを出し一口あおる。

「あのオラクルメールは、こんな処でも役に立ったな」

自分あての意味不明メールが、いつも持ち歩けと書かれていたアイテムが役にたった。

「とりあえず、移動するか?」

腹も減ってきたし、とりあえず日陰に移動しよう。

立ち上がって、付近を見渡す。

辺りは、草に覆われていた。見える範囲に民家や建物はない。

道らしきものも見えない。

「さて、どうするか?」

とにかく口に出す。何もしゃべらないと気が狂いそうだ。

「右前方、1km程度先に森?林か?」


スマホの電源を入れて、家にかけて見ようとしたが、電波が捉えられていない?つながらない。

「ネットは?」

やはり接続できない。

「ん…、どうするか…」

バックを背中に担ぐと、ユックリと右前方の林を目指して歩き出だす。

ジーンズが草に擦れる感触が伝わってきた。草の下は結構がっちりとした土地のようだ。

足の裏が土にのめりこむ感触はない。


微風の風が体温を下げる。歩くだけだが結構気持ちがいい。

ここへ来た経緯が分かれば、楽しめそうな場所なのだが…。

案外、落ち着いてきた自分に気づいて関心する。

根が楽天家なので、こんな時にも落ち着いていられる。

「まぁ、焦った処で何も変わらないしな。」

などと思っていると、林の前で鳥たち騒いでいる。

「カラス? 餌でも取り合っているのか?」

100メートルほど先、10羽程のカラスが一か所に群がって

「カー、ギャー、クルックー!」

と騒いでいる?

その中心に、

「白いハト?」

が、沢山の羽をむしられた状態で横たわっている。


「まったく!」

走り出してカラスの群れに飛び込む、人間が近寄ったのが分かったのか一斉に飛び出すカラス。

手を前後に大きく動かして、中心の苛められていた(食われていた?)

ハトに手をかざす。

「足が動いた。」

羽を大分むしられたが食われる前であったようだ。

両手で包み込むように抱えて、少し嫌がるそぶりのハトを抱きかかえ林へ走りこむ。

「グーーウ。」

白いハトが小さな声を出す。

既に後ろ手で騒がしく再集結したカラスは、空を旋回しながらギャーギャーとうるさく鳴いている。


林の中は、草もほとんど生えておらず土が向きだしだった。

胸に抱えていた白いハト?を恐る恐る覗く。

「お前、カラスか?」

白い色でハトだと思っていた鳥は、よく見るとカラスであった。

「ハシボソガラスだな多分…」

嘴が都会にいるカラスより細い。

少し血が出ているが、体を起そうとする白いカラスを地面にゆっくりと離し、バックを漁る。

「携帯用の鳥のエサが確か…」

オラクルメールに書かれたアイテム一覧にあった意味が分からない物の一つ。鳥のエサ。あったはず…だ。

「あった。」

封を破き一つまみ目の前の白いカラスの前にばらまく。

カラスは目の前の小さなコーンの粒を確認すると、一心不乱に啄む。

「腹減ってたのか?」

「自分が食われちゃシャレにならんだろう。」

それを見ながら、林の外を伺う。ギャギャーと騒がしい声が聞こえるので、襲っていたカラスはまだいるのだろう?

「んー。ここに放置すると、またおそわれるなぁ。」

白いカラスを見る。

「暫く一緒に来るか?」

白いカラスに声をかける。

カラスより知らない場所で一人だけの自分が心細いのだろう。

カラスに話かけても通じるはずもないのだが…。

「カー」

小声でカラスが一声鳴いた。

「?・ん。わかるか?」

「もっと食え!」

さらに一握り撮んで前にばらまく。

白いカラスが食べ終わるまで、黙って見ていて食べ終わったカラスをおっかなびっくり両手で抱える。

「かむなよー。」

幸い噛まれる事はなかった。

カラスを胸に抱えて、林の中には入らず歩きやすい淵沿いを移動する。

相変わらず見渡す限り何もないが、林が視界を遮るので前歩の半分が見とおせない。

「何かないかなぁ?」

なぜかカラスに語りかけてしまう。

「カー」

「鳴かれても分からん。」

カラスが鳴いたので答える。苦笑が漏れる。

暫く、歩くと

「あ!道か?」

前方50m位の処に草原の右から左へ、獣道のような細い砂利道が見えてきた。

馬などなら走れそうな道を見て

「日本だよなぁ、ここは…」

林を外れ、見つけた道に出る。

先ほどまでは日陰だったが、日が当たる環境になった。

「少し熱いな。」

「右か?左か?」

左手の法則で左へ進む。閉鎖された迷路でないので法則に何の意味もないが、やり直しができるように法則を決めて進む。

「クー」

手の中のカラスが鳴いた。喉でも乾いたか?

バックを漁り、水のペットボトル出す。自分で一口飲んでプラスチックの小皿をだし少しさらにいれる。

道に置いた皿にカラスを近づけると、手の中から抜け出して活きよく飲みだした。

喉が渇いていたらしい。

「んー。水もあと一本か。残り少ないが大丈夫かな?」

羽が大量に抜かれた為、空は飛べないようで飲み終えたら、こちらによってきたカラスを抱きかかえて皿を回収した。

小一時間ほど歩き、目の前にレンガの建物が見えてきた。数件ある集落らしい。

「よーし、人里だ!。とりあえず死ぬ可能性は無くなった。」

「カー」

なぜか鳴いたカラスを目の高さに上げて、

「お前もそう思うか?」

カラスに聞いてみる。

「カーカー」

「分かっているのか?」


集落に近づくと、建物の形が分かってきた。

「アラビア辺りのレンガの建物?

 ここは日本だよなぁ

 何故に日本からアラビア?」

建物の周りは、木の柵で囲われている。

集落への入り口は、正面の一つだけのようだ。

「とにかく、電話を借りて家に連絡を着けよう

 楓も心配だ。」

自然と早歩きになる。


集落の入り口で立っていた子供らしい影が、俺を見つけて走って来る。

「あれ、だれかとまちがえたかな?」

そのあとを、3人の男たちが慌てた風に、子供を追ってくる?

「ん?なんだ?」

悪い予感しかしないのだが…


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