前書き
花咲か爺、もしくは花咲かじいさん。
それは日本で有名な民話の一つである。
一言に民話と言っても、そこには昔話や伝説や世間話などが含まれ、現代日本においては御伽噺も同義として差支えがないだろう。
むかーしむかしあるところに、などから語られる前口上のついた"おそらく"事実ではないだろうが、と人の口を伝う話が昔話である。そして、"少しは"事実だろうから信じて欲しいと口を伝う話が伝説であり、"眉唾物かもしれないが"これは事実だ信じて欲しいと口から吐き出される話が世間話である。
民話は数多く存在し、中には派生して生まれたという話まである。数え切れぬその話の中、代表的な話として、浦島太郎、桃太郎、金太郎などが上げられる。太郎が多い。人はこれらを三太郎と呼んだり呼ばなかったりするし、サンタの起源はこれらであると言ったり言わなかったりする。人の話というものはいつの時代であっても、中々に曖昧だ。
現代日本において民話というのは人の口から語られる機会を減らしつつある文化の一つだろう。さて、この民話。先ほど含まれると話をしたように、"日本昔話"という名前がつくこともあるが、実のところ全てが作られた話、ではない。かといって全てが実話というわけでもない。
それでは、日本昔話とは何か?
― "モデル"の存在する実話に近い話、である。
そんな日本昔話に登場するモデルである人物達の子孫は、今も何処かで他の人間と何ら変わりなく暮らしている。彼らは各地に散らばっているというが、その多くが一つの学校に集っているという噂が立っている。その噂、とは言っても一部の"マニア"と呼ばれるような人間達が騒いでいるに過ぎず、世間を賑わすことなどは決してないのだが、彼らはそれでも満足そうに笑っている。そうして言うのだ。彼らは、御伽噺は何かしらの縁で繋がっているのだ、と。
此処に、その噂に登場する学校に通う一人の女子生徒がいる。名前は花坂市子、歳は十五。学年で言えば一年生。入学式を経て学校に通い出すこと早二ケ月が経とうとしている彼女は今、
「じじじじ、爺ちゃん!何で?!何で起こしてくれんかったん?!」
盛大に、寝坊をしていた。




