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ドラッグ?  作者: 侑子
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第一話 【家族】

 お姉ちゃんの声で私は目が覚めた。


 ……酒臭い。

 時刻は午前六時二十七分。もう空は十分明るい。

 大体お姉ちゃんの活動終了時刻はいつもこのくらい。

 なにが楽しいのか知らないけど、ニヤニヤしながらリビングのソファーに倒れてる。

 青白くて綺麗な長い足が、片方ソファーから落ちちゃってる。

 たまに起き上がって「もっと持って来てよぉーきゃはははは!」とか突然言い出すから怖い。かなり怖い。

 

 実家であるこの家に帰ってくるのは週に一度あるかないかくらいで、普段は近くのアパートで一人暮らしをしている。

 お姉ちゃんはお酒が大好きだから、こんな風に酔っぱらって帰ってくることもしばしば。

 眠い目をこすりながらも、私はいつもお姉ちゃんに毛布をかけてあげて、お水の入ったコップを近くのテーブルに置いておいてあげる。

 私が学校から帰ってくるころにはいつもお姉ちゃんは仕事場に行っちゃっててもういない。

 

 仕事場っていうのは、これまた近くにある雑貨屋「満月堂」。そこの女主人がここで倒れてる人。

 だから開店時間は適当。お姉ちゃんの気分次第。

 なのにけっこう儲かってるから不思議。

 怪しげな雰囲気の雑貨屋だから、女子高生とか町のおばさま達に大ウケみたい。

 扱ってるものも、一体どこの国から取り寄せたんだ? っていうものばっかり。

 妹の私でさえ、どんなルートでお姉ちゃんが買い付けしてるのか、全然知らない。

 あとはお姉ちゃん自体を目的にお店に来る男の人とかも結構いるみたいだけど……

 それすら楽しんじゃってるのが、あの人らしいっていうか、なんていうか。


 まぁそんなこんなでお姉ちゃんは一応家を出ちゃってるから、今は私とお父さんの二人暮らし。

 お母さんはいなくなっちゃった。


 あ、お父さんが起きて来た。

「おはよう。祥子はまたそんなところで寝てるのかい? 仕方ないなぁ」

 そう言いながら、お父さんは朝食の準備にとりかかっている。

 お父さんの朝食はほっぺたがとろけちゃうくらいおいしくて大好き。

 一日がんばれるのも、この朝食のおかげと言っても過言ではない。

 私はダイニングテーブルの席に定まらない目でぼーっと座り、食器などを並べながら朝食を待つ。


「今日の朝食は美沙の大好きなふわふわのスクランブルエッグとコーンスープ、あとは海藻サラダ!」

 お父さんは朝からテンションが高い。見習いたいものだ。

 コーンスープのいいにおいが、キッチンから流れて来る。

 朝食を食べながら、お父さんと会話するのも毎日の習慣。

「バイト、昨日で辞めたんだよね?」

「うん」

「そういえば理由聞いてなかったけど……どうして?」

「いろいろ」

「いろいろ……」

 お父さんは何か考えながらコーンスープをすすっていたが、ふと、思ってもみないことを言い出した。


「お父さんな、前から考えてたことがあるんだけど……祥子の店でアルバイトをしてみないか?」


 私はポカーンとしてしまったが、よく考えて聞き返した。

「なにを言い出すのかと思ったら……お姉ちゃんのとこでバイト? あそこ小さなお店だし、お姉ちゃんだけで十分回ってるでしょ。それに、なんで店主のお姉ちゃんからじゃなくてお父さんから頼まれなくちゃいけないの?」

「全然人手は足りていないらしい。それに……おまえじゃなければだめな理由もある。新しいことを始めれば、いろいろと変わるきっかけにもなるかもしれないし、なんたっておまえは、お母さんの娘なんだからな」


 正直意味不明だ。

 なぜあんな小さな店で人手が足りない?

 そもそも私じゃなければだめな理由って?

 お母さんがなにか関わってるの?

 

 ……もしかして、お母さんの情報が少しは手に入るかもしれない。


 お父さんの目はものすごく真面目だ。

 私の目をじっと見ている。

 ただひとつ、間違いなく言えるのは、お父さんが私の気持ちを感じ取ってくれてるってこと。

 私は自分でも気づかないうちに変わるきっかけを探してた。今のままじゃだめだって思ってた。

 なんにも取り柄のない自分。対人関係をめんどくさがる自分。本当は怖がりな自分……

 そんな私にお父さんがせっかく提示してくれた機会だ。

 乗ってみるのも悪くないかな、と思った。


「……わかった。今日の学校帰りに満月堂に寄って、お姉ちゃんと話してくるよ」

 私がそう答えると、お父さんはとってもうれしそうに笑って、

「そうかそうか! よかった。がんばりなさい」

 そう言って席を立った。

 私も、なにがなんだかよくわからないまま食器を洗い、学校に行くことにした。


 お姉ちゃんはまだ楽しそうに寝ている。


 




 

         

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