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帰り道

掲載日:2026/09/12

 夕陽が空を赤く染めている。

 学校からの帰り道、僕は幼馴染のA子と一緒に歩いていた。

 最初はたわいない話をしていたけれど、家が近づくにつれて話題は減り、お互い喋らなくなってくる。

 理由はA子にあった。

 いや、正確には、A子の家庭に、だ。


 A子の父親は普段は穏やかだけど、酒が入ると暴力的になる。

 夜になると時折、瓶が割れる音が近所に響いていた。

 物に当たるだけなら、まだいい。

 しかし実際はA子の顔や腕に痣が出来ていることもあった。

 そのことは近所でも噂になっているが、誰しもトラブルには巻き込まれたくない、と助けることはない。

 僕は以前警察に相談しようとA子に持ちかけたことがあるけど、大丈夫、と断られてしまっている。


「……なぁ、本当に大丈夫なのか?」


 ポツリ、と訊いた。

 A子は、うん、と返事を返す。

 無言。


 家の近くに差し掛かった所で、A子が止まった。1拍置いて僕も止まる。


「ねぇ、これ内緒にしてくれる?」

「これって、何を?」

「いいから、内緒にしてくれる?」


 A子の真剣な眼差しが僕を捉える。

 僕は首を縦に振った。


「そろそろ、落ち着くから」


 そう言って、A子は走っていってしまった。

 それはいったいどういう意味なのか。

 僕はA子の言葉の意味を考えることに集中してしまい、後を追うことが出来なかった。


 数日後。

 赤色灯が辺りを照らす。

 救急車とパトカーが、A子の家の前に停まっていた。

 妙な胸騒ぎ。嫌な予感。

 A子の家から警察官と救急隊が出てくる。その後にA子とお母さんの姿。2人は頭を下げ、警察と救急隊は去っていく。

 ふと、A子がこっちを見た。そしてお母さんと顔を見合せた後、2人して僕へと顔を向けた。


 表情は見えない。

 だけど、口元が三日月のように歪んでいた。


 先日のA子の言葉が思い出される。

 そろそろ、落ち着くから。

 その意味を理解した瞬間、僕の体は硬直した。

いったいどう落ち着いたんですかね?

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