9 ゴブリン
講習でマッピングについての説明は受けた。
ただ、マッピングといっても、初めてだし文字通り右も左もわからないのでとりあえずモンスターを求めて適当に進むことにする。
ダンジョンの中はそう暗くはないので普通に移動することが出来る。
念のために買ったナイフを右手に構えて進む。
「ギッ、ギッ、ギッ」
静寂の中異音が響く。
モンスター。
音のする方へと視線と神経を集中させると、それはいた。
人型。
だけど、俺よりもかなり小さく見える。
緑っぽい肌の色。
人より明らかに大きい頭。
手に持つのは錆びた棒。
ゴブリン。
間近で見るのは初めてだけどその特徴的な風貌すぐに識別できる。
「ふ~~~っ」
ゴブリンを見た瞬間全身を緊張が走り、筋肉が硬直するのを感じ大きく息を吐く。
これから戦うんだ。
集中だ。
ガッシュファルトの記憶では何度も戦った。
だけど俺桐谷省吾は喧嘩すらまともにしたことはない。
怖い。
ここまで来て情けないけど怖い。
怯んでいる場合じゃない。
全てはここからだ。
「ギッ、ギッ、ギッ」
ゴブリンの目は間違いなく俺を捉えている。
俺はもうデブなヒキニートだった俺じゃない。
Fランクのダンジョンシーカーとなった桐谷省吾だ。
この時の為に毎日走って筋トレもやってきた。
いける。
俺ならいける。
「おおおおおほおお~!」
気合を入れかたまった身体を鼓舞するため雄たけびを上げるが声が裏返ってしまった。
締まらないけど仕方がない。
20年の人生の中でこんなに大きな声をあげたことはないんだから。
「ギャ、ギャアア~~~」
ゴブリンがこちらに呼応して声を上げ距離を詰めようと向かって来る。
大きさでいえば俺の半分程度しかない印象だけど、こちらを殺しに来ているその圧は半端ない。
「はやっ」
あっという間に武器が届く距離にゴブリンが迫ってくる。
あわててナイフを振るうが当たらない。
まずい。
ゴブリンが錆びた棒を振りかぶり振るって来る。
身体が反応してくれない。
当たる。
その瞬間俺の意志とは関係なく勝手に身体が動き半身でゴブリンの一撃を躱す。
あ……。
ゴブリンの攻撃を躱すと目の前には無防備となったゴブリンの身体が。
とっさに手に持つナイフを突き入れる。
「ギャアアアア~!」
しとめ損ねた。
まずい。
倒さないと。
「おああああああっ!」
ナイフを引き抜き、何度もゴブリンめがけて突き入れる。
「ギャ、ギャ……」
ゴブリンはその場で崩れそのまま消滅してしまった。
「倒せたの……か」
倒したというよりも倒せたというのが正直なところだけど、とにかく倒せた。
ゴブリンの攻撃をどうやって避けれたのかよくわからないけど、なんとか無傷で最初のモンスターを倒す事に成功した。
特に身体に変化はない。
「ステータスオープン」
うん、なにも出てこない。
ゴブリン一匹倒せたくらいではだめらしい。
はじめてこのサイズの生き物を自分の手で殺した。
正直、かなり怖かった。
だけど、ナイフを突き入れるときは思ったよりも冷静だったと思う。
そして今は高ぶっているのがわかる。
初ゴブリンをしとめたばかりだというのに次のモンスターを求めている気がする。
俺ってこんなに好戦的だったのか?
いやガッシュファルトの記憶の影響か。
よく見ると地面にはキラキラと光る小さな宝石のようなものが落ちている。
手に取ってみる。
少し濁った蒼。
きれいではあるが、よくある指輪とかに付いている宝石のイメージと比べると明らかに不純物が多く含有されているのが見てとれる。
「これが魔石か」
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