8 はじめてのダンジョン
戦いたい。
抑えきれない渇望が沸き上がる。
ガッシュファルトの記憶のせいだけど、まるで戦闘狂になってしまったかのような自分がおかしくて、思わず笑いがこぼれる。
「ははっ」
今の俺はまともに喧嘩すらしたことないというのに。
そのまま事務所に併設されている装備品のお店へと向かう。
ダンジョンで使う装備品は一般的ではない。
事務所に併設されているお店で買うのがダンジョンシーカーのお決まりらしい。
お店は思ったよりずっと広かった。
全ての商品はすべてガラスの棚に収められている。
武器や防具、アイテム等々かなりの数が並べられている。
順番に商品を見ていくが、普通に高い。
0がいくつだ?
5ついや6つのもふつうにあるな。
文字通り桁が違う。
命がけのダンジョンなのだから値段が高いの理解はできる。
俺だって本当は安全のためにもフル装備をそろえたい。
だけど俺の手持ちは残り5万円。
5万円で買えるものを選ぶほかない。
最低限武器がないと、さすがに素手では戦いようがないので他はあきらめ武器に絞る。
絞るが、選べる武器はそう多くはない。
ダンジョンシーカ―となったことで銃刀法の縛りからは外れることとなったので好きな武器を使うことはできる。
ただ5万円で買える武器は限定的だ。
刃物と言われる武器の中で選べるのは唯一ナイフの類のみ。
ガッシュファルトが使っていたのはバスタードソードと呼ばれる大振りの剣。
ナイフの扱いの覚えはそれほどない。
無いけどお金もない。
当然だけど5万円でバスタードソードは買えない。
「これにするか」
無い袖は振れないので、48000円のナイフを選択する。
選べる中で一番刃渡りが長いものを選択した。
刃の長さが30センチ程度。
敵にもよるけど十分な殺傷能力はあるように見える。
これで俺の残金は僅か2000円となってしまった。
もう猶予はない。
両親にこれ以上負担を強いることはできない。
こうなったらすぐにでもダンジョンに潜り稼ぐしかない。
講習でもらった本の中に近郊の常設ダンジョン一覧があった。
ダンジョンには2種類あるそうだ。
洞窟のように常にそこにあるダンジョンと突然現れるインスタントダンジョン。
インスタントダンジョンを放置すると常設化してしまうので、インスタントダンジョンが確認されるたびにダンジョンシーカーに声がかかり攻略の依頼が出るそうだ。
インスタントダンジョンの攻略にはドロップアイテムの他、国より報奨金も出るそうだ。
ただ、Fランカーにそんな依頼が来るはずもなく常設ダンジョンに向かう以外にはない。
俺は地図を確認し、最寄りのFランクダンジョンへと向かう事にする。
残念ながら歩いていける距離でもないので、なけなしの2000円を使い公共機関を乗り継いでダンジョンの入口へと立った、
入り口で交付されたFランクのカードをみせて中へと進む。
「これがダンジョン」
ダンジョンに踏み入れると外とは全く異なる景色がそこには広がっていた。
ダンジョンというのでもっと迷宮的なものをイメージしていたが、あるのはただ広い空間。
広すぎてどこまであるのか測ることはかなわない。
地上でこのような景色を見たことはないので、まさに異世界と呼んでも差し支えないだろう。
ここが入り口付近だからか他のダンジョンシーカーは見当たらない。
はじめてのダンジョンに緊張と興奮が入り混じるが、ここからだ。
「まあ、行ってみるか」




