俺はダンジョンシーカーになる!
「ははっ、なんだこのデブは」
とんでもなく太っている。
ぼさぼさの頭にひげも伸び放題だ。
贅肉ひとつなく全身を筋肉の鎧に覆われていたガッシュファルトとは比べるべくもない。
凛々しさも雄々しさのかけらもない怠惰の詰まった身体だ。
「だけど……」
ガッシュファルトの時にはどうしても得られなかったものがあった。
俺の身長は180センチある。
標準よりも背が高く手足も長い。
ガッシュファルトトがどれほど望んでも手に入ることのなかった身体の素地がここにある。
「俺は何をやってたんだ」
こんな事をしている場合じゃない。
俺は一度死んでいる。
おそらくあれは前世の記憶。
想いを残して死んでしまった。
これは2度目の人生。
神様がくれた2度目の人生。
この2年間無駄に浪費してしまったけど、まだどうにかなるはずだ。
デブでヒキニートな俺だけど、今はガッシュフォルトの記憶もある。
たぶん性格も少しガッシュファルトに引っ張られているのだろう。
今の今までネガティブ一色だった俺だけど、今はどうにかしなければというポジティブな意識と何とも言えない焦燥感に駆られている。
闘いたい。
そして彼女が欲しい。
今までにはなかった俺の中の2大欲求がどんどん膨らんでいく。
ガッシュファルトのいた世界とは違い、この世界には人と人が斬り合うような戦場はそうそうない。
だけど、この世界にはダンジョンがある。
数百年前にこの世界に現れたダンジョン。
そこには人類の敵とも言うべきモンスターが蔓延っている。
この世界にはモンスターを倒しダンジョン攻略を目指す人たちがいる。
ダンジョンシーカー。
男子が一度は憧れる職業。
そしてほとんどがその過酷さを知り諦める。
常に死と隣り合わせ。
デブでヒキニートの俺には無縁だったもの。
ダンジョンシーカーにはお金さえ払って登録すれば誰でもなることが出来る。
登録者はそれなりにいるらしいけど実際に活動している人はそれよりもずっと少ないそうだ。
それなりに初期費用が必要だということもある。
ほとんどの人は初期ステータスを獲得するためだけに登録するらしい。
英雄的な成果をあげる人もしくは暴力を好む人。命を対価にしてでもお金を稼ぎたい人。
そんな特殊な人たちがダンジョンシーカーとして活動する。
あそこなら戦える。
好きなだけ戦うことが出来る。
「俺はダンジョンシーカーになる」
昨日までの俺が聞けば笑いも出ないだろう。
だけど今の俺にはそれしかない。
ダンジョンシーカーとして最強を目指し、有名になって可愛い彼女を作る!
それしかない。
ただ、このたるんだ身体で臨んでも無理だ。
この二年運動らしき運動を一切してこなかったのにいきなりダンジョンなんかに潜ったら確実に死ぬ。
とにかく今のままじゃ無理だ。
鍛えないと無理だ。
まずはなにからすればいい?
ガッシュファルトの記憶。
基本は体力。
走って筋肉を鍛える。
そのあとは剣の鍛錬。
やり方ははっきりと覚えている。
時間が惜しい。
まずは外を走ってくるか。
「母さんちょっと走ってくる」
「え? え? あっ、ちょっと、え?」
リビングにいる母親に声をかけ外に出てみる。
「まぶしいな」
2年ぶりの直射日光が気持ちいいけど、まぶしい。
「よしやるか」
ルートは適当でいいだろう。
とにかく走ってみる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ヤバイ。
まだ100メートルくらいしか走っていないのに息が上がる。
ガッシュファルトならどれだけ走っても大丈夫だったのにこの違いは……。
「はぁ、ひぃ、はぁ」
汗が滝のように流れ出す。
この身体どんだけ鈍ってるんだ。
いや、自分の身体だ、よくわかってる。
身体が重い。
脚が上がらない。
肺が痛い。
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