転生?
「いって~~」
強烈な痛みに目が覚める。
後頭部が強烈に痛い。
目を覚ました瞬間、記憶の波が押し寄せる。
戦鬼と呼ばれたガッシュファルトの記憶。
そして桐谷省吾としての記憶。
気持ち悪い。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
なにが何やらわからないけど、ぐちゃぐちゃで酒を浴びるほど飲んだがごとく強烈な酔いが襲って来る。
俺はガッシュファルト……いや桐谷省吾?
わからない。
何が起こっている?
夢を見ているのか?
俺は死んだはず。
いや、この部屋で足を滑らせて頭を床にぶつけたのか?
重い身体をどうにか動かしベッドへとよじ登る。
周囲を見回すと、確かにここは俺の部屋だ。
ゴミが溢れた汚部屋。
ベットにおいてあったスマホを手に取るとそこには豚のような顔が映り込む。
あぁ俺は桐谷省吾、20歳だ。
高校を出てから就職もせず実家でヒキニートとなった。
ただでさえ脂肪の付いていた身体がこの2年でさらに膨れ上がっていた。
ヒキニートになった理由。
それは、卒業式のあの日幼馴染にこっぴどく振られたせいだ。
「あんたみたいなキモ豚とようやく離れられると思ったのに、まさかの告白? せっかくの卒業式が最悪の思い出になるじゃない。どうしてくれるのよ! その顔鏡で見たことある? 信じらんない。キモイ。うわぁ、鳥肌立ってきた。卒業したら完全に他人だから。あっても話しかけないでね。話しかけてきたらストーカーで逮捕してもらうから。本当最悪~」
自分が太っていることはわかっていた。そんなモテるような風貌をしていないことも理解していた。
だけど幼馴染の恵だけは高校になってからも普通に接してくれていた。
おれはそんな恵の事が小学校の時から好きだった。
勇気を振り絞って告白したあの日俺は砕け散った。
デブだからって女性に興味が無いわけじゃない。
ずっと恵と付き合えたらと夢想していた。
10年以上の付き合いだ。俺的にはそれなりに良い関係性を築けているものだと思っていた。
仮にダメだったとしても、幼馴染という関係は続くのだと思い込んでいた。
甘かった。
恵がそれほどまでに俺の事を嫌っていたとは。
情けないが俺の心は壊れてしまった。
その日から部屋へと籠り、出る事ができなくなってしまった。
自分でもこれじゃだめだという思いはあった。
たかだか恵に振られただけ。
別に振られたからって死ぬわけじゃない。
世の中にはデブ専の奇特な女性もいるかもしれない。
わかってる。
分かっているのに部屋から出るのが怖かった。
両親が気遣ってくれていることもわかっていた。
その事で余計自分が情けなくなり、身体が上手く動かなくなってしまった。
そんな引きこもり生活も2年。
汚部屋と化した部屋で俺は足を滑らし頭を強烈に打ち付けた。
そして今ベッドの上で痛みに耐えている。
何が起こっているのか自分でもよくわからない。
頭を打ったことでおかしくなってしまったのか?
いや、そうじゃない。
夢というにはあまりに鮮烈ではっきりとした記憶。
ガッシュファルトとしての記憶。
俺は桐谷省吾でありガッシュファルト。
こんなことあるのか?
俺の前世?
転生というにしては桐谷省吾としての俺も間違いなくいる。
前世と言われた方がしっくりくるが、高校まで習った世界史にアストレアという国が出てきた覚えはない。
わからない。
わからないけど、ガッシュファルトとしての俺。
最強を目指し、女性とは無縁の最期を迎えた俺。
女性に縁がないのは今の俺も同じだけど、レベルが違う。
あまりに苛烈で強烈な願望。
幼馴染にこっぴどく振られただけの俺とは違い、命が尽きる間際の後悔。
あの後悔。
俺は何をやっているんだ?
あれほど渇望したのに。
こうしてここにいるのに。
こんなところで引き籠って何をしているんだ。
ガッシュファルトは全身を剣に貫かれ死んだ。
だけど桐谷省吾としての俺の未来はまだこれからだ。
俺は確認すべく部屋を出て洗面台の鏡に姿をうつす。
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