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君を必ず救い出すと約束したから~レスキューイン・シルバーマリン  作者: ユキトシ時雨
ミッション3 激突の生物因子! 噛みしめるのは後悔の味
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白の刃、赤の鉄槌(1/2)

 赫灼の刃によって引き裂かれた向こうから侵入するソイツは、どれだけ好意的に解釈しようとも、「侵入者」以外の何者でもない。


 鋼助は咄嗟に、アミを庇おうと腰を浮かせるも。


「────ッッ!!」


 反射神経、動体視力、鋼助はそのどちらにもそれなりの自信があった。コンマ数秒。それだけの猶予があれば、十分にアミを庇うこともできたろう。


 だが、鋼助を襲ったのは、鼻先から襲う鈍重な痛みであった。口周りを伝って落ちるのは、ドス黒い自分の血液だ。


「うぐっっ⁉」


 容赦なく顔面を蹴り抜かれたのだろう。アミへと伸ばした手は空を切って、勢いのまま壁へと叩きつけられる。


「コースケくん⁉」


 耳殻に響いたのは、アミの悲鳴だった。


「助け────うぐっ!!」


 しかし、その声も仮面の人物によって遮られる。ボロ布の纏わりついた腕を彼女のか細い首へと回し、強引に呼吸を絞め落としてみせたのだ。


「……ごめんね。だけど、私たちには貴女の力が必要なの」


 仮面に声がくぐもり、酷く聞き取りづらい。それでも柔らかな口調は女性らしいものだった。


 彼女はそのまま気絶したアミを優しく抱き抱える。喉を押しつぶすという強引なやり方で意識を奪っておきながら、アミにかける言葉や、抱える手には不自然な丁重さがあった。


「おい……ちょっと待てよ……」


 鼻先の痛みはもう気にならない。仮面の彼女のやり方も、気味の悪さも、そのどちらもが気に入らない。怒髪天を衝いたがゆえに、余分な痛みが頭から弾き出される。


 鋼助はそのまま吼えた。


「何なんだよ、お前はッ!!」


 まさか、アミの身柄を抑える派遣された秘密部隊か、何かか?


 しかしながら、言動からそれを読み解くことは出来ない。


「貴様に答える義理はない。────けれど、訂正くらいはしてやろう」


 アミに語りかける声とは対照的に、鋼助に吐かれた言葉は余分な感情を伴わず、淡々としたものだ。


「お前ではなく、〝お前たち〟というべきだ」


 今のを合図にタイミングを示し合わせたのであろう。もう一人が、仮面の彼女が切り開いた向こう側の海から、船内へと飛び込んできた。


「お呼びかしら、ホワイトエッジ」


 同じようにボロ布から水滴を滴らせながらも、仮面ではなく、鮮血の様に真っ赤なマフラーで顔の半分を覆い隠した少女であった。


 だが、その背に担ぐのは、彼女の体格の倍以上はあろう大槌だ。


「あれ? あれ、あれ、あれぇ? 随分と手こずってるようじゃないの」


 大槌を担いだ彼女が、眉に皮肉をこめた弧を描く。


「問題はない。姫は取り返した」


「相変わらず、貴女って無愛想なうえ、感情の起伏が分かりづらいんだから」


「現状でそれに問題があるかしら、レッドハンマー?」


「可愛げがないのよ。そんなんじゃ、モテないわよ」


 鋼助は瞳を細め、口論をかわす二人の侵入者を交互に観察する。


「白い仮面に刃物を持ってる方が、ホワイトエッジ。赤いマフラーにでっかいハンマーを持った方がレッドハンマーか……そのまんまで、随分とわかりやすいじゃねぇか」


 それはコードネームか、何かだろうか? しかし、彼女らには軍隊や部隊特有の統率性が窺えない。


 互いに我の強さが目立つのだ。特に後から現れたレッドハンマーの方には、それが如実に表れていた。


「どうしたの、新人くん! 凄く大きな音がしたけどッ‼」


 今度は向こうの廊下から、蛍を筆頭とする数名の隊員たちが駆け込んできた。


 皆、近くのフロアで過ごしていたメンバーだ。壁に打ち付けられた音も、叫んだ声のどちらもが、船内に異変を伝えるには充分なものだったのだろう。


 必然的に蛍達の視線は、黒いボロ布を纏う二人へと吸い寄せられる。そして、ホワイトエッジの腕の中には、意識を奪われたアミ。


 それで大まかな事態を察したようだ。


「君たちは隊長に報告をッ! 私が侵入者(コイツ)を確保するッ!!」


 ベース生物・大王烏賊。────蛍は自らの首筋へ、因子の起動剤が詰まった注射器を突き立てた。背中から素早く、彼女自慢の八本脚が展開される。


「蒼い瞳に、ベースとなった海洋生物の特徴を発現させる能力。これが貴女の言っていた例のアレかしら? えくす……えくす、なんだっけ?」


「EXD手術。けど、想定内よ」


 ホワイトエッジが、アミを抱えたままバックステップで後退。そのまま海中へと身を投げる。


「逃がさないッ!」


「そっちこそ、やらせないってのッ!」


 迫る触手を、レッドハンマーの大槌が弾いてみせた。


 彼女はそのまま大槌の先を蛍に、次いで鋼助へと向けた。それは彼女なりの牽制であり、警告である。


「残念ね、お二人さん。ここから先へは、アタシが通さないんだから」

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