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君を必ず救い出すと約束したから~レスキューイン・シルバーマリン  作者: ユキトシ時雨
ミッション2 ボーイミーツガール!? 銀海よりの使いは何者か?
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デートミッションレコード

「今の第一にはお前の力が必要なんだ、鋼助。お前は私の元で働いてくれ」

 

 それは「特務海上保安庁を目指す」と伝えた鋼助が、育ての親から返された言葉だった。


 壮一は沈みゆくクルーズ船から自分を救い出し、面倒を見てくれた恩人でもある。そんな人に必要とされることは、素直に嬉しかった。


 しかし、そう思う一方で壮一が口にした言葉は、どこか建前のようなものにも聞こえた。十年間、彼の元で育てられたからこそわかる。────鋼助には、その言葉の真意が他にあるように感じられたのだ。


 結局、鋼助は第六救助隊への配属を希望した。ハイドラと戦うことよりも、人命救助に尽力したいという理由で下した決断なのだから後悔はない。


 ただ遅かれ早かれ。その一件で距離が開いてしまった壮一とも真剣に向き合わなければならないことを、鋼助は予感する。


 ◇◇◇


「コースケくん。どうかしたのですか?」


 鋼助はハッと我に返った。顔を上げたなら、テーブル一枚を挟んで向かい合うように座る少女が、自分を心配そうに覗き込んでいる。


「あっ、いや……すこし考え事を」


 今頃には、ちょうど和明たちが、監査の一団を出迎えているのだろう。自らの不安を払拭するためにも、鋼助は笑って誤魔化してみせた。


 都内に位置する大型ショッピングモール内のフードコート。昼食を取るためにと立ち寄ったわけだが、自分で注文したラーメンは、既に冷たく延びきっている。


 そこでふと、鋼助は自分たちの方に視線が集まっていることに気付いた。


 より正確に言えば、彼女の方にだ。


 目深にキャップを被って簡単な変装をしているとはいえ、日本人離れした髪色の彼女はどうしたって目立ってしまう。おまけにこの可愛らしい容姿だ。幼さを残しながらも、端正な顔立ちをした彼女には、誰もが一度足を止めてしまう。


「ちくしょう……和明隊長め、恨むからな」


 鋼助は妙な居心地の悪さを覚えつつ、小さく毒づいた。


 和明の言う「デート」とは即ち、「監査の間、彼女を連れ出して欲しい。あと、ついでに彼女の日用品なんかも揃えて欲しい」の意訳であった。その証拠に、鋼助の手の中には和明から預かった買い物リストが握られている。


 鋼助が少女を連れ出す役に選ばれた理由もシンプルなもので。「気まずくなってしまった義父に会いたくないから、休みをとった」というそれっぽい言い訳が立つのもそうだが、何より現状で彼女の信頼を一番勝ち得ているのが、他ならぬ鋼助自身であったからだ。


「あのコースケくん。少し、いいですか?」


 少女は少し改まると、手にしたドーナツをバケットに戻して、鋼助の方を真っ直ぐに見つめる。


「もしかして、口に合わなかったとか……」


「いえ、ドーナツはとっても美味しかったです。ただ、改めてお礼が言いたくって。コースケくんには二度も助けられちゃいましたから」


「えへへ」と恥ずかしそうに彼女は鋼助から視線を外す。その小さな仕草に、何故だかこちらまで少し気恥ずかしさを覚えた。


「お、俺は俺がやるべきと思ったことをしただけで、」


 それを誤魔化すよう、鋼助は少しオーバーなリアクションを取りながらも、話を逸らす。


「それよりも〝姫様〟はこのリストに書いてある物以外にも、何か必要なものありませんか? 欲しいものとか! 食べたいものとかでも構いませんので!」


 ちなみに「姫様」というのは、いつまでも「名無しちゃん」では不便ということで付けられた、彼女のアダ名のようなものである。


 姫様は鋼助の問いかけに、しばし思案する。しかし、特に何も思いつかないのか、彼女は首を横に振った。


「ううん。コースケくんや、船の皆さんにはご迷惑をかけてばかりなので、これ以上ワガママは言えません。けど、強いて言えば、そうですね……」


 彼女の丸っこい瞳が、鋼助をのぞき込む。


「でしたら、私の名前をコースケくんが考えてくれませんか?」


「名前……ですか?」


 思わぬ提案に、鋼助の方が小首を傾げた。


「はい……その、やっぱり姫様と呼ばれるのは、ちょっぴり照れ臭くって。────だから、本当の名前を思い出すまでの仮の名前で構いません! コースケくんに名前を考えて貰いたいんです!」


「と、突然、そんなことを言われても」


 いきなり名前を考えろと言われたって、そう簡単に名案が浮かぶわけでもない。


 何とかアイデアを絞り出そうとしたが、頭を捻ってもみたが、結局浮かばず終いであった。


「すぐにじゃなくても大丈夫ですからね。私、楽しみにしていますから!」


「あはは……責任重大ですね」


 果たして、自分は姫様の期待に応えられるのだろうか? 生憎、鋼助は自信もセンスも皆無に等しい。


 口一杯にドーナツを頬張り表情を綻ばせた彼女を傍目に、先が思いやられながらも、伸び切ったラーメンを何とか腹の中へと収めた。


「とりあえず、この買い物リストを埋めながら考えましょうか」


 リストのおよそ半分近くには、既にペンでチェックマークを入れている。


 しかし、リストにはコミック本やゲーム機の類、果てはエロ本の類といった、どう考えても姫様の日用品以外のリクエストが、しれっと混ぜ込まれているのだ。


 多忙な〈特務海上保安庁〉では、余暇にゆっくりショッピングだなんて機会は滅多にない。任務によっては数ヶ月を船内で過ごすなんてこともあるのだから、ここぞとばかりにリストに、自分の欲しいものを紛れ込ませた隊員がいるのだろう。


「このトレーニング機材やプロテインの類は絶対に蛍先輩のだよな……それで、この業者まがいの量のエナジードリンクは間違いなくドクターで……このイケメンアイドルの写真集っていうのは多分、隊長のリクエストか」


 ちゃっかりしている人達だと、そう呆れられずにはいられなかった。しかし鋼助はリストの末尾を見て、凍りつく。


 ────リストの末尾には、女性用の下着(※可愛いヤツ)とあったのだから。

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