表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/66

ep08:ハルキ

「どっ、どうですか、ミツキさ……あれ? ミツキさんは?」


「今さっき帰ったよ。急に用事が入ったんだって。リオたちに謝っておいてって」


「そっか……じゃ、サリアさんでいいです。どうでしょう、この服似合いますか?」


 私でいいです、って何だよ。まあ、それなりに似合っていたので、「いいんじゃない」と答えておいた。


 レクトはまだ着替え中みたいなので、私も着替えようと二階へ向かった時だった。


 ピンポーン


 玄関のチャイムが鳴った。ミツキが忘れ物でもしたのだろうか。玄関の引き戸をガラガラと開けると、ガッシリとした体格の男が立っていた。


「あ……えーと、隣の家の鳥居ハルキです。は、はじめまして」


 ハルキ……? ああ、ミツキの兄貴か。


「はじめまして、サリアです」


 ん? どうした……? 初めてだから緊張しているのだろうか、ハルキは硬直したまま私を見つめている。


「――サリアさん、どちらさまですか?」


 リオも来客は誰だろうと、私の背中から顔をのぞかせた。

 

「ミツキの兄貴だって。ハルキさん」


「ああ! はじめまして、リオといいます! ミツキさんにはお世話になっています!」


 リオは深々と頭を下げた。二日目にして、もうすっかり日本人だ。


「ああ、君がリオくんか、はじめまして。――あ、それって俺が昔着てた……」


「そうなんです! さっきミツキさんが持ってきてくれて!」


「そうなのか。アイツ、そういうこと勝手にやっちゃうから知らなかった。でも、俺の服が役に立ってるようで何よりだ」


 リオが現れた途端、不思議とシャンとした男になった。もしかして、男には偉そうにするタイプなのだろうか? まあ、女に偉そうにするよりはマシだけど。


「そうそう、もう一人男子がいるって聞いたけど、今いるかな?」


「――ん? 俺のこと?」


 タイミングよく現れたレクトに、ハルキは「なにーっ!」と声を荒げた。


「そ……その服もミツキから渡されたのか……?」


「――この服? ああ、そうだけど。ハルキさんだよね? 俺はレクト、よろしくね」


「あ、ああ……よろしく……」


 鳥居ハルキ。表情がコロコロとよく変わる忙しい男だ。



***



「ゴミ屋敷掃除の仕事? じゃ俺たちじゃなく、サリアが適任だ」


「そうですね。僕たちなんかより、ずっと役に立つと思います」


 ハルキは『何でも屋』というものをやっているらしく、今日はゴミ屋敷の清掃が入っているそうだ。なんでも、予定していたバイトが急病で来られないらしく、レクトとリオに手伝ってくれないかと相談に来たらしい。


「い、いやいや、お前たち、ゴミ屋敷掃除の動画とか見たことあるか? 雑巾で床をキュッキュッとかの、お掃除レベルじゃないぞ。酷い場所だと腰のあたりまでゴミが積み上げられてんだから。正直、男手が無いと厳しいんだよ」


 ムムム……これはもしかして、私たちが今一番欲しい『仕事』というものでは……


「――それって、お金は貰えるの?」


「もちろんだ、サリアちゃん。た、ただ、遠い親戚の依頼ってこともあって、二人で五万円しか出せないんだが……どうだろうか?」


 ご、五万円……!! 私たち三人は顔を合わせて、「よしっ!」と握りこぶしを作った。


「分かった。じゃあ、私とレクトで行こう。――ただし、一つだけ条件をつけさせてほしい」


「――条件? 条件ってなんだ?」


「仕事は一時間で終わらせる。その代わり、ハルキは離れた場所で待機していて欲しい」


 ハルキは再び硬直してしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ