表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/66

ep55:運命

 ゼルクは勢いよく上昇し、レヴァナント攻撃空母へと迫ってゆく。


「ま、間近で見ると、めちゃくちゃデカいな……サリア、コイツをどこに向かわせたらいい!?」


「艦橋に向かって! 上部の窓ガラスで覆われている部分! 敵はレーザーを放ってくると思うから、気を付けて!!」


 ハルキは「分かった!」と言うと、艦橋へ向け速度を上げた。艦橋を消し去ってしまえば、レヴァナントの制御は出来なくなるはずだ。


 目標の艦橋が迫りくる中、操縦席から身を乗り出し右手を向けた。予想通りルクスを放ってきたが、ハルキの勘がいいのか、ゼルクはルクスの間をすり抜けていく。


 イレイズが届く距離までもう少し……あと数十メートル……


 イレイズを放とうとした瞬間、乗組員たちの顔が目に入った。私を見る彼らの目が、怯えに変わっていく。そしてその表情が、私に一瞬のためらいを生ませてしまった。


「ど、どうしたっ!? まだ遠かったか!?」


「い、いや……距離的には問題なかった……」


 ゼルクはそのまま直進し、イレイズを放てないままレヴァナントから遠のいていく。周りにいたヘリたちの間を抜けると、眼下には夜景の街並みが見えてきた。


「そ、そうか……イレイズを撃つってことは、敵といえど沢山の人が死ぬってことだからな……そんな辛い役目を、サリア一人に背負わせようとしてたのか……すまなかった、サリア……」


 ハルキは私がイレイズを放てなかった理由に気づいたようだ。


「で、でも……私がやらないと、ハルキやミツキ、地球の人がみんな死んでしまう……」


「ハハハ……その時はサリアたちも一緒じゃないか。その時は運命だったと思って諦めるよ」


「ほ、本気なのか、ハルキ……?」


「だって……最初に降り立ったのがサリアたちじゃなかったら、俺たちは問答無用で殺されてたんだろ? サリアが責任を感じることなんてないよ。――でも、やりたかったことは沢山ある。サリアと行きたい場所も、一緒に食べたいものも、まだまだ沢山あった」


 ハルキの言う、運命って何だ……


 地球人がヴェルミラ人に滅ぼされるってこと……?


 いや、違う……それを言うなら、私たちがハルキとミツキに出会えたことだって運命だ。


 それなら……


「ハルキ、戻って! 次はイレイズを撃つ!!」


「だ、大丈夫なのか?」


「本当の運命はどっちなのか、その答えを私が出す!!」


 そう言うと、ハルキはゼルクを方向転換させた。ドンッと背中が貼り付くほどの加速をすると、一直線にレヴァナントへと近づいていく。


「サリア、左手を貸せ! 今から敵を倒すのは、俺とお前だ! 今からやることが罪なら、俺もお前と同じ罪を背負う!!」


 私は再び操縦席から身を乗り出すと、右手をレヴァナントの艦橋へと向けた。左手はハルキが強く握ってくれている。


「落ちろっ!! イレイズっ!!!」


 私は全身全霊の力を込めて、イレイズを放った。


 艦橋を無くした空母は、船体の照明が次々に消え落ち、漆黒の塊と化した。その後、音もなく落下していくと、地上で大爆発を起こした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ