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ep20:発動

「じゃサリアちゃん、車で送ってやれなくて申し訳ないけど、ゴミ屋敷清掃頼むな!」


 レクトとリオ、そしてハルキの三人は、引っ越しの現場へとトラックで出発した。


「それじゃ、私も行ってくるね。何かあったらLINEしてよ。すぐに駆けつけるから!」


 同じ現場に行くミツキも、原チャリとやらでハルキたちのトラックを追う。


 さあ、私も行くか。初めての一人仕事。



***



 ゴミ屋敷の現場までは、自転車で十五分ほど。リサイクルショップで買った、この自転車を私は気に入っている。


 今日は雲一つ無い快晴、少しだけ強い風が心地いい。


 見通しの良い通りを抜け、街中に入ったところで大きな人だかりがあった。少し煙も立っている、何かあったのだろうか。


「何かあったの――?」


 少し離れたところから、スマートフォンで撮影している男子学生に声をかけた。


「建設中の現場から、鉄骨が倒れてきたらしくって。下敷きになった車に乗ってる人が、出てこれないみたいなんです」


 私は彼に礼を言い、現場に近づいてみた。助手席は完全に潰れ、運転席にまで鉄骨がめり込んでいる。今も重さでミシミシと音を立てており、下手に刺激を与えると一気に車が潰れてしまいそうだ。運転席の彼女は、周りの静止も聞かず窓ガラスを叩き続けていた。


 イレイズを使えば……


 だけど今、こんなところで発動させたら大騒ぎになるのは間違いない。しかも、さっきの学生のようにスマートフォンで撮影している者も多くいる。一体、どうすれば……


 ビシッ!!


 その時、彼女が叩き続けいていた窓ガラスに大きなヒビが走った。私は咄嗟にイレイズを発動させていた。


 ガヤガヤと騒がしかった周囲が、一瞬で静まりかえる。


 眼の前の大きな鉄骨が忽然と姿を消したのだ、驚くのも無理は無い。


「な、なにが起こったの……?」


「てっ、鉄骨が消えた!? き、消えたよな!?」


 何人かが騒ぎ出した途端、嵐のような大騒ぎになった。私は自転車を押して人混みを抜けると、ゴミ屋敷へと自転車を走らせた。



***



「サ、サリア!! 鉄骨事故の件、お前だよな!?」


 仕事を終えたばかりのレクトが、ドタドタとリビングに入ってきた。すぐ後ろには、リオもいる。先に仕事を終えた私は、味噌汁の味見をしているところだった。


「――そ、そう。やるかどうか、一応迷ったんだけど」


「し、仕方なかったんですよね、サリアさん」


 私は「ごめん」と頭を下げた。


「ちなみに、どんな状況だったんだ?」


 車体がミシミシと軋んでいたこと、更にガラスにヒビが入ったことがキッカケで、咄嗟にイレイズを発動してしまったと説明した。


「――そうか、それは仕方ない。俺もイレイズを使えたなら、きっと同じ行動を取ったよ。助かって良かったじゃないか、その女性も」


「偉いですよ、サリアさん。その場にいたのが、サリアさんで本当に良かったと思います」


「――で、見たか? この動画?」


 レクトはテレビ局公式のニュース動画を再生した。


 そこにはハッキリと、鉄骨に右手を向ける私が映っていた。

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