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無理です  作者: 田中ボサ
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シャーリンは剣術クラブの案内を頼んだ友人に話をしていた。 

「という事があったの、だから剣術クラブに案内してもらうのはどうかとおもってて」

シャーリンは乗馬クラブの事、その後のダニエル達の振る舞いについてを話した。

また同じことをされては困ると思ったからだ。

「ふーん、なんだか変な人ね、リリカ様って、男爵令嬢だっけ?」

「そうみたいね」

「まあうちのクラブには男爵家の子もいるし、興味があるなら喜んで案内しようと思っていたんだけどね、なんか思ってたのと違うわね」

「だから、あなたに嫌な思いさせるのもどうかと思って・・・」

「ねえ、それならダニエル様達も誘って皆で見学したらいいんじゃない?」

彼女の提案にシャーリンも納得して、ダニエル達を誘ってみた。

「リリカがまた嫌な思いをしないようについていく」

(またって、乗馬クラブの話も勝手な事ばかり言ってるのはリリカ様なのに)

すこし不満に思ったが、シャーリンは念のために自分もついていくことにした。


「ようこそ剣術クラブへ」

そう言って友人カミラはダニエル達を歓迎した。

広い稽古場では稽古着に着替えた者たちが思い思いに練習をしていた。

「リリカ様、初めまして、私はカミラです」

「・・・リリカです」

「剣術に興味があると聞いていますよ、どのスタイルに興味がありますか?」

「スタイル・・・?」

「剣術のそれぞれの形といいますか、例えば長剣が好きで、騎士団風の豪快な打ちが好きだとか、細身の剣で相手の力を少しずつ削いでいく技が好きだとか、そう言った感じですね。

ちなみに私は早差しが得意なんです、素早い剣さばきのコツは手首の返しです」

「・・・・・」

「あ、あの、俺は、レイピアで受け流すのがかっこいいと思います」

「僕はやはり騎士らしい振りに憧れます」

「僕は・・・」

ダニエル達は剣術が好きらしく、リリカへの質問だったのにもかかわらず、熱心にカミラと話し込んでいった。

あまり剣術に詳しくないシャーリンと、会話に入って行かないリリカがぽつんと残されてしまった。

(どうしようかしら)

シャーリンがそう思っていると、令嬢達が近寄ってきた。

「カミラから聞いてるわ、剣術に興味があるって」

「ねえ、剣ならどの鍛冶屋がお勧め?」

「休みの日に武具磨きをしてるんだけど、このザパネトダカタ製の布が仕上がりがいいのよ」

「私はあまり剣を振れないけれど、ダガーとか短剣の技が好きなのよ」

口々にそう言って何とかリリカと会話を広げようとしてくれている。

シャーリンは

「私は剣術に興味はあまりないの、ごめんなさい。

でも読書クラブで剣聖様の自叙伝を読んだことがあるわ。

騎士団の団長様の書かれた本も読んだわ、戦術的な事はわからなかったけど・・・」

そう言ってくすっと笑うと、

「あ~、団長様の本はね~、わかるわ」

「剣聖様の自叙伝長かったでしょ?」

「他にも剣術系の本ってあるの?」

そう言ってシャーリンと令嬢達と盛り上がって話していると、

「ぐすん」

と言ってリリカがしゃがみこんで泣き出したのだ。

「「「「え???」」」」

シャーリンたちが驚いていると、ダニエル達が気がついてリリカに声をかけている。

「リリカ!どうした?」「何があった?」

「シャーリン、リリカに何をしたんだ?」

(は?わたし?私が何をしたと?てか、なんで私に聞くの?)

シャーリンが戸惑っていると、リリカがグスグスと泣きながら立ち上がった。

「みんなして私の事を無視したの。

私が知らない話を皆で笑いながらしてるの。

誰も私にその話に入れてくれないし。

ダニー達も自分たちだけで盛り上がってるし・・・」

(知らんがな)

シャーリンを始めとした剣術クラブの全員の心の声が突っ込んだ。

だが、ダニエルは違ったようだ。

「すまない、リリカ、人見知りだったな。

僕らの配慮が足りなかったよ」

そう言ってリリカを連れてクラブから出ていった。

「おい待てよ」と2名ほどがその後を追っていった。

「あなた達はよろしいんですか?」

残ったダニエルの友人たちに声をかけると、

「うん、いや」「まあ、なんだ」「今まで気付いてなかったけど、なあ」

「「「「リリカって自己中すぎねえか?」」」」

そう言ってあきれてしまっているようだ。

「シャーリン嬢がわざわざ時間を作ってくれたのにな」

「そうそう、カミラ嬢たちの会話は親切だったしな」

「あいつ剣術が好きって言ってた割に、カミラ嬢たちみたいな話をしたことなかったな」

友人たちは腕組みをしてう~んとうなっていた。

「そんなつまらないことは置いといて、剣術の話に戻っていいですか?」

カミラの一言で、わっと笑い声が上がり、またそれぞれが会話に戻って行った。

「シャーリン、お疲れ」

「カミラ」

「あんたの婚約者、節穴・・・」

「言わないで、落ち込むわ」

肩を落としたシャーリンの背中をカミラは優しくポンポンとたたいてくれた。


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