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10.服!

 指輪を貰った後、朝ご飯を食べて私と師匠は部屋に戻り、あいにくの空模様に少し肩を落とす。


「明日は晴れると良いんだけど」


「師匠、何します?」


 窓から少し外の景色を眺め、ベットで横になっている師匠に視線を移す。


 雨の日はなんというか気分が上がらない。正直、このまま一日ずっと部屋で過ごすのも良いとは思う。


 でも、


「せっかく大地の国にいるんですから、何かしませんか?」


 もう明日にはここを出るのだから、最後に何かしたい。


「んー。何か、ねぇ……」


 師匠は少し考えた後、思い付いたように起き上がって、


「やっぱり、買い物しかないわね!カランコエ、新しい服を買いに行きましょうか!」


「服、ですか?」


 いきなりそんなことを言われて、私は師匠と一緒に街へと向かった。


 ◆


 師匠はもちろんだけど、私も一応は魔法使いなので帽子やローブ等、魔法使いらしい服は一式師匠に買ってもらっていて、繁栄の国にいた時はダンジョンに行ったり、依頼をこなす事が多かったので、必然的にそれを着る事が多かった。


 それに旅でも魔物に襲われたり動く事が多いので、今もそれを着ている。


 だから、何もない日にご飯を食べに行ったり、買い物に行ったりする時だけ、違う服を師匠も私も着ていたのだけど、これからずっと旅をするんならもう新しい服なんていらないんじゃ……


「あの、新しい服って言ってもいつ着るんですか?」


 街へと歩きながら師匠にそう聞いてみると、師匠は楽しそうに笑って言う。


「花の国に行く時に、おめかししようと思ってね。それに、これから色々な国に行ってゆっくりするんだから、その時に着るの!」


「そうなんですか?」


「そうよ!私、カランコエの色々な可愛い姿を見たいんだから!」


「わ、分かりました……」


 私は視線を逸して頷き、屋台とは別の方向へと一緒に進んで行く。


 それから、師匠が魔法を使ってくれているので、雨に濡れる事なくしばらく歩いて、崖の上にある街にしてはやっぱり結構広いな、なんて思っていると、


「あそこに行きましょう!」


 師匠は服屋を見つけ、迷いなく扉を開けて中へと入る。


「いらっしゃいませー」


 中に入った瞬間、聞こえてきた声がドワーフではなく人の声だったので、私は少し驚きながらも服屋の奥へと師匠に連れられ、


「これはどう?」


 ものすごく高そうな純白のドレスを手に取ったかと思うと、私に見せてくる。


 そんな師匠に私はジト目で言葉を返す。


「ふざけてるんですか?」


「まさか!可愛いじゃないこのドレス」


「いや、いつ着るんですか?」


「えっ?誰かと結婚する時とか?」


「あー、そうですか」


「えー、だめなの?なら……これは?」


 私がジト目から嫌な顔になるとドレスを元に戻し、今度は白いワンピースを勧めてくる。


 それを見て私は、


「まあ、悪くはないですね」


 ドレスよりはマシだなと思いながら、素直にそう言うと、


「そうよね!カランコエが着たら、絶対可愛いと思うの!買いましょう!」


 喜々として師匠は即決で買う事を決め、次の服を探し出す。そんな師匠に私は気が向いて、


「師匠に似合いそうな服、選んでも良いですか?」


 師匠にそんな事を聞いてみた。

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