雑談(情報収集)
「え、すごい!オリバーさん、ムァドの群れを倒したんですか!?」
「毛並みが若干緑がかっていて、首元が灰色の狼をそう呼ぶのなら、そうなりますかね」
「すごいですね、普通パーティー組んで挑む相手ですよ!?」
「そ、素材は!?倒した後の死体はどうしたんすか!?」
「血の臭いで他の獣が寄って来ても困るので、置いてきちゃいました」
「「もったいない!!」」
貴重な素材なのに!とネロ(敬略称)が叫ぶ。ジャックも無言で悶えてる。どうやら懐かれたらしい。私こう見えても年下なんですけど。
今、私は、このパーティーが帰り用に用意していた馬車に相乗りさせてもらっている。
時間潰しにちょこちょこ内容を省いて話をしていたらこの反応。なるほど、これが「私なにかやっちゃいました?」パターンか。うん、もっと学ぼう。いろいろと。
「別に、すごくともなんともありません。皆さんと同じ戦法を使っただけですよ。相手を痺れさせて、動けない間に仕留めただけです」
「いやでも、その魔法が当たらないものなんです!」
「こっちにまっすぐ突っ込んできたので…運がよかったようで」
「まっすぐ突っ込んできたのを真正面から魔法ぶち当てたのか…?」
「高級な素材を置いてきちゃいましたって、あんたなあ…」
メルとボルカも呆れたようにこちらを見ている。
悪かったな常識知らずで、でも仕方ないだろうが。
「…そもそも、私は道に迷っていたんですよ?半分遭難している状況で手荷物は増やしたくありません。それに、街に持ち込む頃には蛆が涌いているでしょうし」
「そ、れもそうか、七日くらい前だし…」
「うん、まあ、たしかに…うあぁ〜でも、でももったいね〜〜〜!」
「ああそうだ、今のうちに」
パン、と手を叩いてカバンを探る。
いろいろお世話になったしお世話になるつもりだし、お礼くらいは渡しておこうかな。
「何か?」
「いえ、助けていただいたお礼を…」
「あ、あざーーーっす!」
「お前は遠慮しろ、ジャック!」
「いっって!!」
「構いませんよ、あくまで私の気持ちですから」
商品になるかもわからないしな。これ。
「…どうぞ。一人一個です」
「これは…飾り?」
「ガラスか…?」
「お好きなところに付けてください。お金がないので、このくらいしかお渡しできませんが…」
「いえ!すっごく綺麗です!」
「まあお金じゃねえのはちょっとざんね(((」
あ殴られた。
「すいません。こんな細かい、手間暇かかった…あの、お金がない、って?」
「野営をしていたら、寝ている間に賊が出たようでして。お金を入れた袋がまるっと、ね」
「大変じゃないですか!う、受け取れません!!」
うーわ競うように返そうとしてくれる。マジでいい人たちだ、娯楽で万引きする連中に爪の垢飲ませたいわ。
そんな良心の塊に嘘八百で心配されてる現状はさすがに心が痛むな。
「大丈夫ですよ。他にも売れるものはありますし、貴方がたのような心の綺麗な若者の手元にあるほうが、それも輝くでしょう」
「でも…あ、ならせめて、今夜の宿代くらいは俺たちで支払います!」
「え、ですが…」
「あ、賛成。オリバーさんのおかげでネロも怪我なくいけたし」
「え」
そんなことあったっけ…?(←興味のないことはすぐに忘れるタイプ)
「ついでに冒険者ギルドまで案内しましょうか。あそこは素材も買い取ってくれますし、商品を持ち込めば買い取ってくれるお店を紹介してくれますよ」
「へえ、それは便利ですね。しかし、国籍を持たない自分が登録できるのでしょうか…」
「旅人ですもんね、大丈夫ですよ。ギルドは国とは関係ない独自の機関で、登録自体には身分証明もお金も必要ないんです」
「へえ、そうなんですね」
「ボルカはあたまいいなあ」
「お前がアホなんだ」
なんだそりゃ。便利だけどどうやって運営してるんだ?お金の流れが見てみたいわ。
…ん、いや待てよ?
「…あの、非常に申し訳ないのですが…」
「どうしました、オリバーさん?」
「…その、冒険者ギルドに登録する際…同席してもらってもよろしいでしょうか」
「え?」
…我ながら、まずいことに気づいたかもしれん。
「…実はワタクシ、文字が……」
「「…………」」
ぼそっとボルカが、「…なるほど、だから冒険者じゃなく旅人…」と呟いた。
しまった、読む・聞く・話すはクリアしても、書くを試験してないから、文章を書けるかどうかわからないんだ!!