驚愕の事実!?
初めて見つけた街は廃墟でした。
うーん75点。悪くはない。
人に会えないのは残念だけど、火事場泥棒できると考えれば悪くない。
あと、うん。
「…吐きそう」
テンション下がってきたせいでさっきの狼の屠殺がメンタルに直にキタ。吐きそう。
とりあえず川に寄って出すかぁ。川下の人ごめんなさい。
「ゔ、」
〜しばらくお待ちください〜
は〜あ出た出た。てか吐いてる最中の声も男のものだね。わかっちゃいたけど、実際こうだと心にくるものがある。
川の揺れる水面を覗き込めば、ぐらぐら揺れる少年の姿。
うん、わっかんね!当たり前だよなあ、流れ続ける川の水だもの!鏡代わりになんかなるかい!!
あーあ、とはいえこれで確定。私はもう川瀬美琴じゃない。
前世はもう諦めろと、新しい生を謳歌しろと現状全てが言っている。
てかマジで自身の見た目くらいは確認したいわ。姿見欲しい。全身見られるやつ。服屋さんにあるようなやつ。
お?そうそう、こんな感じの……
「あるうぅ!?なんで!?鏡ナンデ!?!」
思わず全力で飛び退く。
木製の四角いシンプルな枠に、ぴったりとはまる形で鏡が置いてある。大きな道のど真ん中に、明らかに場違いに。
「さっきはなかったじゃん!?さっきまでこんなトコに鏡なんて…あ」
私のせいか?まさか。
え、まさか私、物資まで出せるとか言わないよね??
「…召喚、片手鍋!」
手を出してそう言えば、パッと出てくるお鍋。
いや出せるんかーい!私のこれまでの努力よ!わざわざ打製石器作ったってのに!
え、てことはサバイバルってかキャンプじゃん。都会から離れた山の中で行うキャンプじゃん完全に。スーパーとかホームセンターで買い物済ましてから来るのと大差ないだろこれ。
まあいいや。お腹空っぽになっちゃったし、いろいろ実験しながらご飯にしよう。
***
さて、私が使える魔法について、ある程度はわかってきた。
まず、私がイメージできれば大抵が出せる。火も、水も、道具も、バリアみたいな非現実的な事象だって可能。
ただ、お肉やお野菜みたいなのは無理だった。同じ理由で木製の食器も。どうやら、生物系のナニカは難しいらしい。
逆に出せたのは、金属器や陶器。あと石。石灰岩や石油系のオイルもギリギリセーフ。サンゴはムリでした。どういう基準なんだ。
あと、回路や内部構造がわからなくても、再現はできてしまうらしい。
ランタンや時計、ライターやチャッカマン、挙句の果てには手榴弾までいけちゃったからもう笑えない。私もうどこの国にも所属できねえ……。この世界の技術水準にもよるけど。
実験がある程度終わったので、お料理ターイム。
まずはそれっぽく石を組んでかまどを作りましょ〜。
とりあえず狼の肉は叩いて薄切りにして茹でる。
ザルであけたらお皿に盛って、塩コショウを振りかける。
山菜もお湯で茹でて、緑が鮮やかになってきたら水にくぐらせ、醤油をかける。
調味料確保できてよかったーー!!料理のサシスセソ全部確保は正直ありがたい!!
いやほんとに。特に塩。汗とか尿とかで出ていくばっかりだからね。スポーツ飲料にもミネラルとか入ってるし。安定して手に入るのはホントよかった。
「…じゃ、命に感謝して。いただきます」
箸(木製)が出せなかったので、フォークとスプーンでいただきます。使いづれぇ〜、日本人としてはこのくらいならお箸使いたいわ。
「ゔ。」
お、お肉が固い…叩いたハズなのに…。薄切りなのに……。
グニグニするし獣臭い。不味いよぉ…。
あ、山菜(不詳)のおひたしは美味しい。苦いっちゃ苦いけど許容範囲。
アレだ、おばあちゃん家で出てきたわこんなの。茎がコリコリしてて普通に美味しい。
「うん…お肉は残すかあ…」
そういえば、市販品のお肉って品種改良されて臭みとかないんだっけ。あーあ、スーパーのお肉が食べたい。今なら、苦手なクジラ肉も羊肉もイケそうな気がするわ。