表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
福音と甘言  作者: はまみ
97/110

97話 止まない危機

「さて、次の信号弾へ向かおう」


 「ああ」


 2つ目の信号弾が上がった方へ向かう。近くに行くと最初と同じように、どこからか声が聞こえた。


 「たすけて……たすけて……」

 

 「これは……」


 助けを求める声か、魔族の罠か。

 

 「こういう声を聞くたびに魔族か人かを疑わなくちゃいけないの、結構嫌だね」


 「そうですね……ですが、無視はできません」


 「そうだな。こっちだ、急ごう」


 声の方へ向かうと、戦闘を行ったような形跡が残っていた。周囲に人の気配はない。


 「たすけて……たすけて……」


 声はうわごとのように同じ言葉を繰り返し続けている。こちらが呼んでも変わらない。


 「……魔族だな」

 

 「だね。準備はいいかい?」


 「ああ」


 オレ達は努めて無警戒なふりをして、声のする方へ向かう。予想通り不意を突くように飛び出してきた魔族は、想定通りに攻撃を空振りをして、予定通りにアザレアが転ばせた。そのまま拘束して、オレが背中に乗り、首に剣を突き立てる。三体目ともあればある程度感覚はつかめていて、さほど苦労せずに倒すことができた。


 「これで、すべて倒せたのでしょうか……」


 「今のところはそう信じるしかないな」


 ひとまず信号弾の位置にいた魔族は処理できた。他に隠れていなければ、これで終わりだ。


 「これからどうする?」


 「いったん屋敷に戻って皆に伝えないとね」


 最初の魔族を倒してオレが呆然としているときに、エノクは『屋敷へ集合』という意味の信号弾を上げていたらしい。


 「そうだな。一度戻ろう」


 そうして屋敷に戻ろうとしたその時。


 「……!!」


 再び空に、赤い信号弾が昇った。方向は……最初に魔族を倒したあたり?


 「どうしてあちらの方から……」


 「……ヤバい」


 「エノク?」


 エノクの顔から余裕が消える。


 「殿下たちが危険だ、急ごう」


 「!?なんで殿下が……」

 

 「集合信号って上位指令だから傭兵は従わないといけないんだけど、それを無視していい人がいるんだ。皇太子なんだけど」


 「そういうことか……!」


 殿下はディオンと精鋭の傭兵数人と共に行動している。殿下自身が強く、さらにディオン達までいるのだから、余程問題はないと思うが……。


 


 急いで赤い信号弾の方へ向かうと、聞き覚えのある声が聞こえ始めた。


 「まだ戦闘中のようだね」


 「急ぎましょう!」


 声の方へ向かう。戦っているということは少なくとも無事ではあるはず。……そんなオレの希望を打ち砕くようなことが起こった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ