92話 自業自得?
「いってぇ!もうちょっと丁寧にッてぇ!」
「うるさいですわ!どれだけ心配したと思っているんですの!?わたくしが、どれだけ……!」
「わ、わるかったよ、イヘール……許してくれよ、な?」
「……その手には乗りませんわよ!」
「いっっってええ!」
扉の奥から、そんな声が聞こえる。どうやらここで間違いないらしい。扉を開けると、見知った顔がそこにいた。
「エーシュ嬢、ルーク様、無事だったのですね!」
「モアハヴァ嬢も!皆様も、無事でよかった!」
駆け寄ってきたモアハヴァ嬢と抱きしめあうアザレア。二人の表情からは喜びが伝わってくる。そのまま二人で話し込み始めた。
「無事……おいおい、俺の惨状をみてくれよエーシュ嬢……」
ツフェイは腕に怪我を負っているようだった。しかしそれ以外は問題なさそうに見える。
「自業自得だと思うが」
「ひでえよディオン……。とにかく、二人共無事で何よりだぜ……」
「よく戻ったな、ルーク」
「ああ。二人も……無事でよかった?」
無事、というにはツフェイが憔悴ている。怪我のせいというよりは、モアハヴァ嬢の荒治療のせいだろうが……。ディオンに関してはいつも通り、特に変わりなく見える。
「まあ生きてはいるけどよぅ……」
「何があったんだ?」
自業自得だといわれていたが……。ツフェイはいったい何をやらかしたのだろうか。
「街の人が魔物に襲われててさ、魔法じゃ間に合わさそうだったから、割って入ったんだよ」
「考えなしに飛び出したせいで腕をやられてこのザマだ」
「辛辣すぎんだろディオン!しょうがないだろ!?体が勝手に動いたんだからさ!」
「それで死んでいたらどうするつもりだったんだ。残されたモアハヴァ嬢はどうなる」
「それは……そうだけどよぅ……」
痛いところを突かれたのか、ツフェイの勢いがなくなる。オレへオレで無理にベルゼブブの攻撃を受け止めた時のことを思い出した。あのときはアザレアのおかげで無事だったが……。気を付けないと。
「ところで、エノク様達はどうしたんだ?」
「負傷者達を労いに行ってる。特に怪我とかはないから、心配しなくていい」
「そうか」
「あと、街に残ってる怪我人達を救助しに行くことになってる。多分声がかかると思うから、準備しておいてくれ」
「わかった」
それからしばらくの間、三人で互いに起こったことを話した。ようやく、安心できた気がした。