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福音と甘言  作者: はまみ
88/110

88話 黄金の夜明け

空洞内のあちこちで炎が煌めき、魔族の残骸を焼き尽くしている。燃え盛る炎は美しく、暗視の魔法がなければ、さぞや幻想的に見えるのだろう。壁際に座りこみ、アザレアと二人で眺めていた。そしてふと、視界を下におろしたとき、何かが殿下へ向かって飛び掛かるのが見えた。

 

 「!?」


 アザレアが咄嗟に展開した防壁により、寸前で阻まれる。防壁の向こう側には、こちらが不安になるほどに瘦せた男が張り付いていた。


 「こいつは……!?」


 その時、弾くような音が鳴った。エノクが降伏の光を使ったようだ。しかし男は何事もなかったかのように何度も何度も障壁に向けて拳を叩きつける。そのたびに障壁が揺らぐが、アザレアは何とか持ちこたえていた。


 「ダメだ、降伏の光が効いてない!」


 「まさか今更お出ましとはな!」

 

 「キャアッ!?」


 男が防壁に嚙み付いた。噛まれた防壁は粉々に砕け、宙へと消えた。すかさずエノクが魔法を放つ。光線が男に向けて放たれ、それは紛れもなく当たったにもかかわらず傷跡一つついていない。


 「大魔法が効かない……!これは……少しまずい!」


 男が向きを変えエノクへと向かう。


 「げっ!?」


 距離を取ろうとするエノクだったが、それよりも男の方が早い。距離を詰めた男がエノクに飛び掛かる。


 「させるか!」


 間に割り込み男を剣で遮るが、男はその体からは想像もできないほどの力を持っていた。


 「ぐっ……!!」


 変な体勢で受け止めたせいでやや押されている……!


 「ルークから……離れて!!」


 頭上を何かが通り過ぎ、それはそのまま男の顔面に当たった。男の体が一瞬だけ揺らぐ。


 「オッッッラァ!!」


 渾身の力を込めて横薙ぎに剣を振るう。男はその勢いのまま吹き飛んだ。殿下が間髪入れずに魔法を打ち込み、男の近くで爆発が起こる。


 「倒せてないよ、気を抜かないで」


 「クソ、魔力切れだ……」


 「大技使ったばかりなんだから無茶しないで、殿下は下がってて」


 「すまない、ここは任せる……」


 殿下がおぼつかない足取りで後方へ下がる。


 「あれが、ベルゼブブ……?」


 「その通り。どうやら殻を吹き飛ばされたせいでかろうじて人の姿になった状態のようだね」


 そんな状態であの強さなのか……!?


 「どうやって倒せばいいんだ!?」


 「切り札を使うよ。準備はすぐできるから、少しの間だけ動きを止めてくれる?」


 「わかった!/お任せください!」


 土煙の向こうでベルゼブブがゆらりと立ち上がり、こちらへと向かってくる。不意を突かれた先ほどとは違い、今度はそれを真正面から受け止める。相変わらずすごい力だ。だが……十分対処できる。


 ベルゼブブの足を払い、頭をつかみ地面へ叩きつけ、そのまま組み伏せる。


 「アザレア!」


 「鎖よ、縛り付けて!」


 魔法の鎖がベルゼブブの体を縛り上げ、その場に拘束する。関節を抑えられたベルゼブブは、その場から完全に動けなくなった。

 

 「ははっ!最高だよ!二人共!」


 白い光に包まれたエノクが笑い、そして、高らかに告げる。


 「始りの刻だ。ザラブ・サハル」


 瞬間、巨大な光の柱がベルゼブブを包む。目も明けていられないほどの強烈な光が降り注ぎ、思わず目を閉じた。

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