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福音と甘言  作者: はまみ
85/110

85話 出立

 「おはよう、ルーク」


 「おはよう……アザレア」


 うっかり出そうになる敬語を押しとどめて、努めていつも通りに返事する。少しだけ赤くなっているであろう顔は、薄暗い空が隠してくれるだろう。


 「おはよう、二人共。準備はできているか?」


 「はい。準備も……覚悟もできています」


 殿下は大きく頷いた。


 「そうか。ならばいい」

 

 「あれ、少し遅れた?」


 エノクが後ろからやってくる。


 「いいや、時間通りだ」


 「ならいいね。では出発しようか」


 緊迫した雰囲気にも拘らずエノクはいつもの調子を崩さない。

 

 「ああ。だがその前に……」


 殿下は掌の上に小さな炎を浮かべると、それを天高く打ち上げた。炎は空中で広がっていき、やがて街を包み込んだ。


 「これでよし。さあ!門を開け!!」


 「門を開けー!」


 重い音を立て門を開かれる。門の先には長い跳ね橋があった。確かめるようにオレはアザレアの手を握った。


 「行こう、アザレア」


 「うん!」


 絶対に生きて帰る。そう改めて誓った。


 門から足を踏み出す。門の外へ出たからと言って何かが変わったわけではないのに、なぜか全く別の場所へ来てしまったような、そんな錯覚さえ覚える。再び重い音を立てて門が閉じていくのを背に、オレ達は歩き始めた。


 「それで、どこに向かうんだ?」


 「魔物は皆あっちの方から一直線にこちらへ向かってきてるから、その痕跡を負えばいいだけだよ。洞窟があるはずだから、そこが目的地だ」


 「雑だな……」


 「大丈夫だって、僕を信じて」


 とはいえエノクの案内以外に頼れるものはないし、おとなしく従おう。



 

 数時間ほど歩き続けて、ようやく洞窟が見えた。


 「ここが例の洞窟か?」


 「うん、間違いないはずだ」


 ここに来るまでに何回か魔物を見かけたが、エノクの魔法で全てやり過ごすことができた。


 「さて、ここからは魔物との戦闘は避けられないから警戒してね」


 「わかった」


 「さて……よっと」


 エノクが指を鳴らす。特に何かが変わった感じがしないが……


 「これで洞窟でも明かりいらずだよ」


 「何でもできるな光魔法……」


 「日常生活はすごく便利になるね。まぁいいから先に進もう」


 警戒しろと言った本人が警戒しているとは思えない足取りで進んでいく。オレ達はエノクの後に続いて進んだ。

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