67話 海辺の宴
屋敷に向かう途中、何かを運ぶカインとすれ違った。
「お、ルークも手伝いか?」
「はい」
「そーか!運ぶものはツフェイ君が纏めてるから、彼に聞いてくれ!」
それだけ言い残してカインはのしのしと歩いていった。屋敷に入ると、ディオンが何かを運んでいる。
「ツフェイ、これで全部か?」
「うん、これで全部だ。助かったぜディオン!」
「喜ぶのは早いだろ。これを運ばないといけない」
「……そうなんだよなぁ」
「お疲れ様、ふたりとも」
「お、エーシュ嬢とルーク!丁度いいところに!」
「それを運べばいいのか?」
「あぁ。量に辟易していたところだが、ルークがいるなら話は別だな」
ディオンは次々とオレに容器を渡してくる。それをツフェイは心配そうに見ている。
「そんなに持って大丈夫なのか……?」
「はい、特に問題はありません」
「すげーなお前……」
物を持てるスペースがなくなった頃、ようやくディオンは満足したようだ。
「よし、あとは手分けして運ぼう」
こうして無事全ての食材を会場に送り届けた。
「まさか一往復で済ませるとは思ってなかったよ」
「いや〜、ほんとルーク様々だったぜ」
「役に立てなならよかった」
「席の準備はできておりますわ。皆様は座ってお休みください」
「ありがとう、イヘール嬢!」
アザレア嬢とモアハヴァ嬢はお互い小さく手を振った。4人で席に座り、暫く待っていると、飲み物が配られ始めた。甘い匂いがするので、多分ジュースだろう。グラスの中で揺れるジュースを眺めていると、突然目の前に光が指した。まるでスポットライトのような光に照らされた中心には殿下がいた。
「待たせたな!さぁ、宴を始めようじゃないか!」
グラスを掲げた殿下がそう叫ぶと同時に、彼の背後で炎が爆ぜるように大きく燃え上がり、眩しいほどの光が辺りを照らした。呆気にとられていると、どこからともなく拍手が響いた。オレもつられて拍手をした。