65話 輝く砂浜
外へ出ると、眩しいほどの日差しに目を顰める。手で遮っていると、突然の視界が暗くなる。横を見ると、アザレア嬢が日傘を差してくれたようだ。大きな日傘は二人で入っても十分なスペースがあった。
「アディが大きめにしておくといいって言うから、言われたとおりにしたんだ。正解だったみたい」
アザレア嬢は小さく笑ってそう言った。
「アザレア嬢、傘を」
そう言って手を差し出すと、アザレア嬢はきょとんとしながらオレの手に傘を置いた。受け取った傘を持ち直す。
「では行きましょう」
「待って、大丈夫だよ、私が持つから……」
「オレに合わせて傘を持つと腕が辛いでしょう?」
「うぅ……それはそうだけど……」
「ではこうしましょう。アザレア嬢はオレに傘を貸した。だからオレが傘を差している」
「もう……わかったよ……ありがとね、ルークくん」
坂道を降りていくと、そこには砂浜が広がっていた。輝く砂に足を乗せると少しだけ沈んだ。……足を取られないように気をつけないと。
「転ばないように気をつけてください」
「大丈夫、心配しないで!」
隣を歩くアザレア嬢はしっかりとした足取りで砂浜を歩いていた。確かに、いらない心配だったようだ。
「あっ、あれって……」
アザレア嬢が指差した先には、砂浜を走る二人の男がいた。背格好や髪色からして、ディオンとカインのようだ。どうやら着いて早々にトレーニングを始めたようだ。実はオレも誘われていたが、アザレア嬢との先約があったので断った。
「おっ、ルーク!!とエーシュ嬢!!こんにちは!!」
「こんにちは、カイン様、ディオン様!!精が出ますね!!」
相変わらず大きな声でカインが挨拶をする。それに負けじと、アザレア嬢も大きな声で挨拶をした。
「えぇ、砂浜は足場が悪いので足腰を鍛えるのにとてもいいのです!!」
「そうなのですね!!頑張ってください!!」
「ありがとうございます!!もう一週行くぞディオン!!!」
掛け声を上げながら二人は走っていっていった。
「そういえば、ルークくんは一緒に走らなくて良かったの?」
「はい。先約があることを伝えたら、レディのエスコートも紳士の仕事だと言われました」
「ふふっ、そうなのね。じゃあ、しっかりよろしくね!!」
「はい、お任せください」