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福音と甘言  作者: はまみ
60/110

60話 慌ただしい朝

「ルーク、無事……か……!!!!????」


 気が付いたらオレも寝てしまっていたらしい。ドアが勢いよく開く音で目を覚ますと、ディオンが口を開けたまま固まっている。


「どうした、ディオン」


「おま……それは一体どういう……」


 ディオンがオレの胸の辺りを指差している。ふと下を見ると、アザレア嬢が眠っていた。そういえば、アザレア嬢に抱きつかれたままだった。


「あぁ、昨日ちょっと色々あって」


「色々ってなんだよ!?」


「どうしたの、ディオン?」


 エノクが扉の向こうから顔を見せる。そしてオレの方を見ると大きく目を見開いた。次の瞬間にはいつもの表情に戻ったが、どう見ても口角が上がっている。


「エーシュ嬢が出てこないなぁと思ってたけど……まさか、ふふ、こんなことになっているなんてね」


「これはいくらなんでも問題でしょう!?まだ婚約もしていない二人が、こんな……!!」


「……?何の話だ?」


 ディオンは顔を真っ赤にしながらエノクに詰め寄った。エノクはどう見ても面白がっている。


「ううん……アディ、どうした……の……」


 アザレア嬢が目を覚ましたようだ。暫くもぞもぞと動くと、顔を上げた。


「…………キャッ!?」


 アザレア嬢は叫び声を上げると、勢いよくオレから離れた。


「おはようございます、アザレア嬢」


「えっ、おはよう、ルークくん……???」


 アザレア嬢は寝ぼけているのか不思議そうな顔をしている。


「よく眠れましたか?」


「……うん、おかげさまで」


 アザレア嬢は小さく微笑んだ。

 

「エノク様、俺がおかしいんでしょうか」


「いや、流石に僕もこれは予想外というか……」


「キャア!? お二人共いらしたのですか!?」


 アザレア嬢はどうやら二人に気付いていなかったらしい。ディオンは呆れたような表情をし、エノクは貼り付けた笑顔を浮かべた。


「はい。殿下たちが戻ったんですけど、結局メトフェスは捕まえられなかったので一旦解散しようかと。授業もありますからね」


 昨日の事件は無かったことにされている。つまり、今日も当たり前のように授業があるわけだ。

 

「そっそういうことなのですね!確かに、私も一度自室に戻りたいと思っておりました!!」


「それはちょうど良かった。ルアハ、エーシュ嬢のエスコートをお願いしてもいい?」


「おっけ〜任せて」


「「「!?」」」


 ルアハの声が部屋の中から聞こえた。エノク以外の全員が目を見開く。1人落ち着いていたエノクが指を弾くと、ルアハの姿が現れた。


「一体いつのまに……!?」


「光魔法の応用だよ。凄く簡単に姿が見えなくるんだ。これに合わせて風魔法で音も消せば、この通り」


「ドッキリし放題ってわけだね〜」


「これを使ってエーシュ嬢の姿を隠しますね。ルアハと一緒にいることで目立つのは面倒でしょうから」


「ありがとうございます、エノク様。ですが、ルアハ様に送っていただくのは……ご迷惑ではないでしょうか?」


「気にしないでください。いつメトフェスが現れるかわかりませんから、基本的には必ず僕達の誰かと行動してください。ルアハが嫌なら殿下に頼みましょうか?」


「いえ、そういうわけでは!!ではお言葉に甘えて……宜しくお願いします、ルアハ様」


「はいは〜い、レディの為なら喜んで」


「それでは皆様、また後ほど」


 アザレア嬢はそういうと、ルアハと共に出ていった。


「じゃあ僕達も移動しようか。ディオン、悪いんだけど、ルークをおぶってくれる?」


「はい、お任せください」


 ディオンがベッドの縁にしゃがみ込む。ディオンにおぶさろうとして、その時気付いた。体が、痛くない。


「……?どうした、ルーク」


「ああいや、体がもう全然痛くないんだ」


 そう言ってオレは立ち上がってみせる。確かめるように体を動かしてみるが、痛みは全く無い。


「……ふうん?まぁ、治ったならよかった」


「そう……だな」


 昨日の時点であれ程の痛みであれば、こんなすぐに治るのはおかしい。だが、今は全く痛みはない。……まぁエノクの言う通り、早く治ったならそれはいいことだろう。


「では戻りましょう」


 ディオンの言葉を合図にオレたちは自室へと戻り、慌ただしくその日の準備をしたのだった。

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