14話 奴隷の日常
がっつり胸糞悪いかもしれません
( ……ここは、どこだ?)
後頭部に痛みを覚えながら目を開くと、そこは暗い場所だった。手足が縛られ猿ぐつわをはめられており、服まで脱がされているようだ。暖かくなり始めているとはいえ、まだ夜は肌寒い。このままではまずい。体をどうにか折りたたみ、少しでも体温が下がらないようにする。段々と目が慣れて来ると、何処かの倉庫であることがわかった。よく思い出せないが、ディオンと別れた後何者か……十中八九サムソンだろうが、あいつにここに捨てられたのだろう。
(寒い……)
思えば、今年は寒さに震えながら眠ったことはなかった。毎年毎年、どうにか寒さをしのいで生きてきた。風がない分ここはまだマシだというのに……ここで暮らすようになって半年も経っていないのに、いつの間にか、オレはこの辛さを忘れていたらしい。とにかく、今は眠ってはいけない。意識を失ってしまったらもう目を覚ますことができないかもしれないから。
幾度も瞼が落ちてしまいそうなほど静かな夜をなんとか乗り越え、窓の外が少しずつ明るくなり始める。なんとか乗り越えることができたようだ。外からかすかに足音が聞こえる。誰かがこちらに来ているようだ。
「んー!んー!!!」
助けを求めるために必死に声をあげる……が、猿ぐつわのせいで思うように声が出せない。だが外の足音は声に気づいたのか、扉が大きく開かれた。しかし扉の向こうにいたのは……
「よう奴隷!いい夜を過ごせたか?」
オレをこんな目に合わせたやつだった。
「薄汚い倉庫で服も着ずに夜を明かすなど、下賤な獣人らしいな!」
お前がやったんだろうがという意思を込め、睨みつける。
「なんだ、その目は……?お前如きが俺に反抗するのか……?」
サムソン静かにオレに近寄ると、腹を蹴り上げた。
「ぐっ……!」
「生意気なんだよ、奴隷の分際で!いつも!いつも!俺を無視しやがって!いい家に買われたからって自分が貴族になったとでも思ってるのか!?」
言葉と共に何度も蹴られる。何度も、何度も、何度も。
「ハァ、ハァ……ッ、お前は、所詮奴隷なんだよ!どんだけ着飾ろうが!騎士の真似事をしようが!お前は!奴隷なんだよぉ!!!」
「ぐ……う、ぐ……」
サムソンがオレの髪を掴み持ち上げる。そうして見下ろしながら
「これでわかったか奴隷?奴隷は奴隷らしく無様に這いつくばってろ……!」
そう吐き捨てると、地べたへ叩き付けた。ようやく満足したのか、サムソンは倉庫から出ていった。
そうだった。これがオレの日常だった。意味もなく殴られ、罵倒され、寒さに震えて……明日も生きていられるか分からない、それが、オレの、奴隷の日常だった。
フラれたストーカーみたいだな…
と思いながら書いてました