表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
福音と甘言  作者: はまみ
106/110

106話 失脚を願う者

「冤罪ってことか」


 「そういうこと」


 「なんで、そんなこと……」


 数多の魔物から帝国を守る、辺境の守護者。そんなウリエルをなぜ陥れる必要がある?


 「僕らを蹴落としたい人間はたくさんいるんだよ。自分の権利のことしか考えてない人たちね。そんな最中、獣人たちが帝国中で暴れまわった。獣人を統べるウリエルを失脚させるにはいい機会だ。まさか滅門まで追い込めるなんて、仕組んだ奴は笑いが止まらなかっただろうね。……けれど結局、主を失ったウリエル領はヘレルが管理することになった。つまりウリエルが失脚させることで得られる利益は、蹴落としたい相手の一つに全て持っていかれてしまったわけだ。敵に塩を送ることになったというわけだね。海だけに」


 「……皇族殺しは冤罪だとしても、帝国中で暴れまわった方はどうなんだ?」


 「問題はそこだ。耳と尻尾をつければ獣人のフリは簡単にできるとはいえ、国中で同時に大規模なクーデターなんて起こせるほどの人的余裕もはないはず。それに、クーデターを起こす前はもちろん、起こした後も最後まで犯人がバレないなんて不自然だ。少しでも人間が関与した形跡があったなら、先にウリエル以外の家門が罰されるはず。なのに当時、この件で罰を受けた家門は存在しなかった」


 「帝国中で起きたクーデターに関与した家門が見つからなかったってことだろ?そんなのありえないだろ」


 「そう。ありえないんだよ。だからこそ、すべての責任をウリエルに擦り付けることができたんだ」

 

 「…………」

 

 「でも、今回の件で思わぬ収穫があった。耳と尻尾を持ちながら、二足で歩き、人を食う化け物」


 そんな特徴を持つものは一つしかいない。


 「ネフィリム……!」


 「そう。帝国中で暴れまわったのは……ネフィリムだ」


 とはいえ、一つ疑問が残る。


 「でも、あんなの見間違えるわけがなくないか?」


 獣人の体格は人間とそう変わらない。にもかかわらずネフィリムは人間の倍はある。普通なら見間違えるはずもない。


 「当時は獣人ってほとんどウリエル領にしかいなかったんだ。何にも知らない人からすれば、あれが獣人と言われれば信じてしまうとは思わない?実際、獣人を知っているはずの傭兵でさえ、ネフィリムを獣人だと思っていたんだから」


 「…………」


 「クーデターが起きた後、誰かが耳打ちをしてみなよ。『お前の大切な人を食い殺したのは獣人だ』……って。きっと簡単に騙されてしまうだろうね」


 「……そんな」


 「こうして民意を味方につけた誰かさんは、見事ウリエルを破滅させましたとさ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ