104話 明かされる事実
「さて、どこから話そうね」
「……ならまず結論から頼む」
「心臓に悪いけど大丈夫?」
「ああ」
どんな事実が飛び出すかは知らないが、先に聞いておいた方がいいだろう。
「そっか。じゃあ言うよ。君はウリエルの末裔だ」
「…………は?」
あまりにもあっさりと衝撃的な事実が告げられる。理解が追い付かない。
「待ってくれ、オレがなんだって?」
「君は、ウリエルの、末裔だ」
改めてゆっくり言われても意味が分からない。
『獣人王』と呼ばれる、辺境の地を守り続けた建国五家の一つ。皇家に反旗を翻したとしても、ウリエルは紛れもなく尊き血族であることに変わりはない。即ち、罪人である獣人ではありえない。人間であるからこそ、獣人王の名が侮辱足りえるのだから。
「冗談、だろ?いくらなんでも……」
「残念ながら本当」
「だって……おかしいだろ!?ウリエルは人間なはずだ。獣人のオレがウリエルの末裔であるわけが……!」
「ウリエルが獣人だったとしたら?」
そんなオレの常識を覆すような言葉を、エノクは簡単に口にする。
「……え?」
「数多の獣人を従えたウリエルは獣人王と呼ばれた。でも、それは一つの側面でしかない。彼が獣人王と呼ばれた本当の理由。それは、彼自身が獣人であったからだ」
淡々と、ただ事実だけを述べているのだろう。けれどその事実は、オレが当たり前だと思っていたものは違いすぎて、そんな簡単に飲み込めるはずもなく。
「ウリエルが獣人だったとして……。なんで、オレがウリエルの末裔になるんだよ」
絞り出した問いは至極真っ当だったと思う。ウリエルとオレの関係。そこが繋がらない。
「だって君は剛体の土を使っていたじゃないか」
「そんなもんいつ……」
剛体の土。ウリエルが神に与えられたとされる力。魔物さえもその身で打ち砕けるようになるらしい。だがそんな力を使った覚えはない。
「ネフィリムを君の手で倒したあの時。君は紛れもなくその力を使っていたよ」
「あれはアザレアとエノクが足止めしたからだろ。オレはとどめを刺しただけだ」
何か難しいことをしたわけじゃない。多少力が強ければ……獣人だったら誰にだってできるはずだ。
「それは無理があるよ。だって、最後のはルークだけで倒しただろう?」
「あれは無我夢中で……」
「たとえ健康な獣人であったとしても、ネフィリムと正面から戦ったら負けるだろうね。けれど君は何の小細工もなく最も巨大なネフィリムを打ち倒した。そんなことができるのは、剛体の土を使うことができる者……。ウリエルだけだ」
最後のネフィリムと戦ったあの時、妙に頭が冴えるような感覚があった。そして直感で理解した。ネフィリムを倒せると。
「…………」
「もうわかっただろう?君は、紛れもなくウリエルの末裔なんだ」
「あれが、剛体の土……。ウリエルの、力」
もう少し匂わせておけばよかったなと後悔してます。