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福音と甘言  作者: はまみ
101/110

101話 消えた傷痕

101話

次の朝、ようやくヘレル家の騎士団が到着した。人々の捜索や支援などは騎士団が引き継ぐことになった。協力しようとしたがいい顔をされなかったため、しばらくの間屋敷で過ごすことになった。何をするか悩みながら廊下を歩いていると、ディオンを看病していたはずのアワンさんとすれ違った。


 「アワンさん、ディオンの様子はどうですか?」


 「彼なら先ほど目を覚ましましたよ」


 「! 本当ですか?」


 「ええ。元気そうですから、。会ってきてはどうです?」


 「そうします!」


 アワンさんを見送り、ディオンの部屋の扉をノックする。


 「ディオン、オレだ」


 「ルークか。入っていいぞ」


 血まみれのディオンの姿が一瞬だけ思い浮かぶ。振り払うように小さく首を振り扉を上げると、そこには腕立てをしているディオンがいた。思っていたよりも元気そうというか、普段と何ら変わりない姿にあっけを取られる。


 「そんなに動いて大丈夫なのか?」


 「ああ。なぜか知らんが前より体が軽い」


 そう言いながらディオンは腕立てをやめると立ち上がった。


 「アワンさんから大体話は聞いた。……少なくとも、俺の知り合いに犠牲者はいないとな」


 「ああ。ディオンが逃がした傭兵たちも無事だ」


 「そうか」


 相変わらず仏頂面だが若干の安堵が見える。


 「ツフェイに考えなしに飛び込むなって言ってたくせに、何やってんだよ」


 「あの場でアレに対応できるのが俺しかいなかった。それだけの話だ」

 

 理屈はわかるが気持ちは別だ。文句の一つも言いたくなる。


 「そうかもしれないけどさ……。心配したんだからな」


 「まだ死ぬ気はないから安心しろ。メーティアを残しては逝けない」


 「……そうかよ。まぁ元気そうで安心したよ」

 

 「そうだルーク、そのことなんだが。俺はあの魔物と戦ってる最中に腕を折られた」


 そう言ってディオンは腕を振って見せる。とても折れているようには見えない。


 「だがこの通り、痛みを感じるどころか調子がいい。おかしいだろ?」


 ディオンは特に怪我の治りが異常に速いとか、そういう体質ではないはずだ。いくらなんでも、腕が折れるほどの痛みを間違えるはずはないだろう。折れはしなくとも、痕くらいは残るはず。しかしそういうのも見当たらない。それどころか、普段の訓練で付いた細かい傷なんかも見当たらない。

 

 「……確かに変だな?」


 「だよな。何か心当たりはないか?」


 そう聞かれても特に思い当たる節はない。


 「死にかけて特殊能力に目覚めたとか?」


 「そんな都合のいい話があってたまるか」

 

 結局原因はわかるはずもなく、ディオンが飯を食うといって部屋を出て行ったので、オレもその場を後にした。

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