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ゴーストライター  作者: 新山楓華
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家族を忘れた男

ここは2018年東京

「すみません、取材いいですか?」

薄暗い路地裏で、純白の髪によく目立つ紫と青のレインコートを羽織った男が俺のほうを眺めていた。

「あなた、最近身内がなくなったりとかしていませんか?」

続けて質問を続ける彼に俺は困惑を隠せなかった。

「あ、あの、なんのことでしょうか?」

彼は俺のイエスともノーとも取れない答えに首を傾けるも、はっとしたような顔をして

「ああ、大変失礼しました。私は霊媒師をやっております。日山未来ひのやまみくると申します。あなた、最近殺人事件に巻き込まれたりとかしていませんか?」

またか、このごろこの話ばっかりだ。俺は無関係のはずなんだがなぁ

「しつこいんですよ、無関係だって言ってるじゃあないですか。」

先週俺の勤めている会社が倒産した。その際パワハラをしていた課長、横領をしていた社長が心不全で死亡。さらに俺の部署だけでも40人近い人が病院送りにされている。さらに不可解なことに一人を除いてけがはなく、すべて精神的なものから来るらしい。

病院へ運ばれていった曰く、「女が自分をめった刺しにする。」だの「死んだはずの兄が自分の首を締め上げる」といった心霊現象のようなものに見舞われたという。

その結果倒産した会社の跡地は心霊スポットとして連日youtuberやインフルエンサーが集まっている。

「今回の事件は悪霊が起こしたとでもいうんですか?」

俺はあきれたような声で男に問いかけた。

「もちろんですとも、現にあなたも死んでらっしゃいますしね。」

にやにやとした笑顔を浮かべながら突拍子もないことを言い出す。

突然何を言い出すのかとあきれながら俺は背中に壁に付けた。

「一体どういうことなんですか。」

ため息をつきながら男のほうに目を向ける。壁をすり抜けたりも、足が地面に落ちて行ったりもしないのだ。

「おかしいですね、ではあなた、自分の名前や生年月日は言えますか?」

しつこいなあ

「名前は小野祐樹1972年生まれの28歳。」

再びはぁとため息をつき男を眺める。男は首をかしげて

「失礼ですが、今西暦何年かご存じですか?」

まったくそんな当たり前のことを聞いて何が面白いんだか。

「2018年だよ。」

まったく気悪ぃな。

「あなた、先ほど1972年生まれの28歳とおっしゃいませんでしたか?1972年ですと今は42歳になってしまうのですが本当に自分の生年月日はあっていますか?」

自分の中で理解が追い付かない。

「何言ってんだ、そんなの当たりま、、、、え?。」

確かにおかしい、俺は確かに1972年、札幌オリンピックの最中に生まれたはずだ。あれ、2000年のクリスマスには子供も生まれて、それで、それで。子供って24歳で生まれなかったっけ?あれ?子供って誰だっけ?性別どっちだったっけ。。。そうだ嫁、俺の嫁は、、、誰だっけ。そもそもなんでここにいるんだっけ、あれあれあれあれあれあれあれ、そうだ、あの子を守らないと、

俺は気づくと一心不乱に飛び出していた。

その勢いに反し、体は元の位置に引き戻される。

「は、ははははははははははは、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

涙が流れる、体中が痛い、頭が割れる。そうだ、俺は娘がいたんだ。それで、それで俺が、殺した。。。?

「そうです!!あなたは先月の26日娘さんが彼女の上司からパワハラにあっていることを発見し、その上司、そして周りの人間を殺したのです!!!」

脳に男の言葉が直接響き、エコーでもかかっているように脳で反響する。

「それで、優菜は、優菜はどうなったんですか!?。。。はっ!!!!!」

そうだ娘の名前は優菜だ。

はっとしている俺の顔にふふっと笑いかけ、

「優菜さんは生きていますよ。瀕死の重傷を負ってはいましたが。。。写真、、、見ますか?」

俺は恐る恐る写真に近づいていく。その時


「ちょっとそこの兄ちゃん、うちの管轄の地縛霊、悪霊にされたら困るんだけど!」

中背のプリン頭の男が俺の腕を引いた。

ちっ、と舌打ちが聞こえ、未来が半歩後ろに下がる。

「これはこれは、四ノ山家しのやまけの落ちこぼれではないですか、霊媒師になる資格を失ったあなたが何の用ですか??」

未来は小ばかにしたような態度をとりつつ、笑顔で男の方に手を乗せる。


「資格を失ったといっても、俺の能力は健在なんでな、あと俺の苗字は沢城だっ!まあ、俺は日山家とは違ってちゃんとした仕事もあるし、自分の家も持っているからなあ。あっれぇ~仕事がないからって悪霊を作って自作自演でお金稼ぎですかぁ。7代家の次男坊であらせられる方がそんなことするはずないですよねぇ!???」

プリン頭の男が未来を挑発し、未来の眉毛がぴくぴくと動く。

「てめぇもたかが地方の雑誌にコーナーがあるぐらいで調子に乗んなよ!?くそ朝日がッ!!」

激高した未来がプリン頭の胸元を顔に引き寄せた。


「落ちこぼれとバカにした相手のことをずいぶん調べてらっしゃるようですねぇ!?」

やんのか?ああ”といった感じで一触即発の空気が流れる。


「はぁ、仕方ねえなぁ、今日のところは見逃してやるぜ。」

未来は、やれやれと両手をあげて、男に背中を向けて路地裏の外に向かって歩き出した。しかしその次の瞬間

「残念、だまし討ちだあああッ!! 黄色い蛇のイエロースネークバイトッ!!!」

未来は男に向かって振り返り、人差し指を突き出す。すると声に合わせて黄色い蛇のような光が男に飛びつき、絡みついた。

「残念偽物でした。と」

蛇が巻き付いていた場所がすっぽりと消えて、蛇が消滅した。

「甘いんだよ。お前は何を焦ってるかわ知らねえが少し頭を冷やしやがれッ!小宇宙の写真機コスモシャッターッ!!」

男の手首からポンっと蒼いカメラが飛び出し、男の手に収まる。

「凍結する写真機プリーズシャッターッ!」

カメラから放たれる白い光を浴びた未来の場所には一枚の写真が落ち、男は拾い上げる。

「俺の名前は沢城朝日。とりあえず、飯くいにいこうぜ!」

その男の笑顔には何か引き込まれるようなそんな魅力があった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「でよぉ、そのとき未来が俺の作った豆板醤どら焼き食って泡吹いて倒れたんだよ。かはは」

ファミレスの中で朝日の笑い声が響く。ほかの客の迷惑だとも考えたが、驚くべきことにほかの客はただ一人いない。

「ちょっとこのファミレス不気味じゃないですか!?」

我慢できずに声に出てしまった。

「お。そうだなこんないい立地でただの一人も客がいないんじゃあ不気味がるのも仕方ねえか、でもよお、お前ほかの人間には見えないんだぜ?普通の店なんて言ったら俺が変人扱いされるじゃねえか

。」

ここは東京駅から15分圏内の道の端にあるファミレス。客が少ないのはおかしいのだ。しかし、そうだった。俺は死んでいるのを忘れていたようだ。

「おまえ、今自分が死んでいたのを忘れてただろ?気づくんだよそういうのは、まず一から説明するか。お前は地縛霊だ。なんで移動できたかっていうと。俺の能力、まあシードとも呼ばれてるもんだ。俺の能力の名前は“小宇宙の写真機コスモシャッター”って言ってなカメラでいろいろなことができるんだが、まあそれの力で、お前のとりつき先をこの紙ににしたんだ。お前はこの紙の半径5メートルまでなら移動できる。まあ自分で髪を運ぶこともできるからそんな条件はあってないようなもんだけどな」

そういうと朝日は一枚の画用紙を取り出した。

「まあこれ自体は普通の画用紙だから燃やされたりしてなくなったりするとあの路地裏に強制転送されるから気をつけてな。」

朝日は舌をべぇとだし、いたずらな笑いを俺に向ける。

「あ、あのさっきの男の人は?」

「泣き虫未来みくちゃんのことね。あいつは、、、まあまずは霊媒師の世界の仕組みについて話したほうがいいか。まあいっても単純だ。一から五の付く家と日と月の付く家が絶対的な中心でな。一川いちかわ、ニふたやま三竹みたけ四山しのやま五条ごじょう、あと日山ひのやま月島つきしまって言ってなあいつはその中の最強とうたわれる日山家の次男坊であいつの兄貴が去年病気で死んじまってからずっとあんな感じなんだよ。まあプレッシャーって奴だろうぜ。」

一本一本指を折り曲げながら少し寂しそうな声で続ける。

「まあ、俺はもともと一般人だったんだがな未来の兄貴と縁があって四山家に2年ぐらい養子として暮らした後、母親が離婚して沢城になった感じだな。だから今は霊媒師兼、地方のオカルト雑誌にコーナーを持ってる文字道理のゴーストライターってわけだ。まあお前のことも取材の一環として助けただけだから安心しろ。なんか対価を求めることはしねーよ。お前には早く成仏してもらわないとこまるしな。あっはっは」

何も対価を求められないというのは少し怪しくはあるが、俺がいまお金を持っていないことぐらい朝日も気づいているだろうし雑誌のネタになるからというのは本当なのだろう。

「じゃ、じゃあ最初に一ついいですか?」

俺は一つ大事なことを聞きたくなった。

「俺はどうやって死んだんですか?」

俺は自分が死んでいるなんて気づかなかったし、いまだに受け入れられていない。だから確認したくなったのだ。

「あー、、そうだなズバリお前の死因は・・・刺殺だ。まあなんで殺されたのかはわかんねぇし、お前の生年月日だとかを除いた記憶が消えているのもわからん。だがこれだけは言える。お前の死因は刺殺。それも霊媒師に殺されている。お前の霊体には傷があるんだよ霊媒師にしか使うことのできないはずの精神体を直接切ることができる伝説の武器’砕月さいげつ’っていう刀のな。そして砕月を今所有しているのは月島のはずだが。。あの家はいろいろと謎が多いから犯人はわからねぇ。」

俺は生唾を飲んだ。

「じゃ、じゃあ僕は狙われてたってことですか?」

「かもしれねぇなあ、とにかく今はわからねえ。そんでもってお前にはいま2つの選択肢がある。まずはこのまま成仏することだ。今のまま成仏しちまえばこの事件は丸ごとなくなってお前も自由になる。あの世はどんなところかは分からねえが悪いところでもないはずだ。さらに霊体が摩耗して暴走する心配もなくなる。さらにお前意外の霊媒師に殺された人間は現在見つかっていないので町では今までの生活が続く。何一つ変わらない日常がこれからも続いていくはずだ。

そして2つ目は俺と一緒にこの事件を解決することだ。正直霊媒師が人を襲うなんてマネをすりゃあ信用はがた落ち、7代家からはぶられて仕事がなくなる可能性まである。そこまでしてこんな事件を起こすなんてなんか裏があるとしか思えねぇからな。そうなってくると殺されたお前自体が手掛かりなわけでお前の協力があればなにかわかるかもしれねえ。」

両手の人差し指を左から順に立てながら説明し、手のひらがわを俺に向ける。

「さあ、どっちだ選んでくれ。」

真剣なまなざしで朝日が俺の目を見る。正直このまま成仏して何もなかったことにするのが一番なのかもしれない。通り魔や強盗じゃあなく、霊媒師に殺されているのがこの話の肝なんだ。なんでったってただの一般人である俺が殺されたのかはわからない。わからないことだらけだ。最近起こったニュースや娘のこととかわかんないことがいっぱいある。そして俺はわかんないことをほっとくことができないみたいだ。俺は、俺のため自分のことを知らなくっちゃあいけないみたいだ。

俺は身を乗り出し、右の人差し指を握った。

「俺は自分を殺した犯人を捜したい。なんで俺がこんな目にあっているのか。家族がどうなってるのかわかんないことだらけなんだ。だから俺は自分のために朝日、君に協力させてほしい。。。いや、俺に協力してくれ沢城朝日ッ!!!!」

指に力を込め、心からの言葉を伝えた。

「オーケー了解。お前のことは俺に任せろ。今日からの記事のタイトルはすべてを失った地縛霊のなぞに迫る!だ。大作になりそうな気がするぜ!!」

俺たちは互いに握手を交わした。

これは俺たちの出会いであり、これから僕が巻き込まれる事件への始まりでもあった。














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