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そして伝説へ…

「さあ、みんなで防災訓練ですよ~。」

 そう一年生の前で防災(災害だけでなく、ヴィランによる襲撃なども想定した)訓練の指導員として派遣された中堅アイドルヒーロー、クリアFが私だ。

 浄化能力を持つ中堅アイドルヒーローは、派遣された小学校で懸命にアピールしていた。

 なんせ全国ネットのカメラが入っているのだから。

 愛嬌を振り撒きながら、好印象アピールに専念しながら、子ども向けな可愛らしい声で子ども好きをアピールしていた。

「わぁ!!ヴィランだ!!みんな、先ずはどうすればいいかな?」

 突如現れたヴィラン役に驚く演技をしながらそう言った。

「敵はこう。」

 真っ白な髪をした可愛らしい女の子がそう言った。

 その瞬間、ヴィラン役の役者が氷漬けにされた。


「はぁ…?」

 私も、ディレクター、AD、全てのスタッフどころか、教師含めた全員が恐怖に震えた。

「ちょっと!!生きてる!?大丈夫なのこれ!!」

 ディレクターが慌てた様子で氷漬けになった役者に触れる。

「救急車!!カメラ止めろ!!」

 アシスタントプロデューサーが絶叫する。

「なにしてんの君ぃ!!」

 プロデューサーが絶望的な声を上げながらことを起こした幼女に詰め寄る。

「防災訓練。」

 幼女は淡々とそう答えた。


「洒落にならないからぁ!!放送事故じゃ済まないからぁ!!」

 泣き出したプロデューサー。

「手加減したのに…」

 何故か泣きそうな声で言う幼女に、私はアイドルヒーローとして恐怖を覚えた。

 可愛い…なによりなんだあの能力…

 一瞬で氷漬け、これまで冷気や氷を操る能力者やヒーローは見てきた。

 しかし、この能力はなんだ?

 認識したと同時に氷漬け、全てを凍りつかせる絶望的冷気。

 それをヴィラン役1人を狙いピンポイントに操っている。

 それだけの能力コントロールが小学一年生で出来、且つ能力自体は同系統の能力者の数十段どころか、遥か先にある圧倒的な能力(ちから)。まともにやりあって勝てる見込みを持てるヒーローが存在するのか疑わしいレベル。

 この子がヒーローを目指したら…

 自分など霞に消えていく。桁違いの幼女に恐る恐る歩み寄る。


「お名前は?」

「百道氷華。」

 私の質問に淡々と答えた幼女。

「氷華ちゃんは大人になったらなにになりたいかなぁ?」

 そんな私の問いにゆっくりと考え、彼女は、

「アイスプリン作る。夏限定で。」

 なにか意気込んだ様子で答えた。

「アイスプリン…」

「うん、アイスプリン。」

 彼女の返答に呆気にとられた。

 そんな私にカンペが上がる。


『ヤバい!!その子武生神娘の娘!!』

 血の気の引き、決死の表情でそうカンペを掲げたDに私の顔からも血の気が引く。

 ヤバい…ヤバいじゃ済まないよ!!殺される!!

 

 今でこそ中堅アイドルヒーローの地位を築いたが、嘗てはヤンキーだった私。

 そんなヤンキー時代、絶対的な強者として伝説となっていた人物がいる。私なんか及ばない恐ろしく強い先輩たちが名前を聞くだけで泣き出す程の存在。

 それが『武生神娘』。

 そんな伝説の娘が圧倒的力を示し目の前にいた。

「氷華ちゃん…ママってどんな人かな?」

 私の決死の問いに、

「ママ?ママは1番強いよ。でも1番好き。」

 ブルッと身を震わせろながら彼女は応えた。

 彼女の返答に私は確信した。彼女の母は伝説の不良娘、全ての不良集団や暴走族をたった1人で相手し、完勝したあの御方に違いないと。

「そっか…ママのお店宣伝しなきゃね…」

 私は死んだ目でそう言っていた。


 番組の趣旨は変わり、小学生による実家の事業宣伝となり、氷華ちゃんは拙いながらも一生懸命に『百道のプリン』を宣伝していた。

「子どもは可愛いね…」

「未来を担うのは子どもだね…」

 そんなプロデューサーとディレクターの死んだ魚の様な目で交わす会話を眺めながら、私はその表面的な言葉の裏に潜む意図を察した。

 『武生神娘の子どもで良かったね』、『本人出てきたらね…』

『『死んでる!!』』

 百道氷華という幼女の一挙手一投足に怯える大人たち。

 そんな光景を見ながら、私はADに耳打ちした。

 

「これって放送されるの?」

「しないと契約が…」

 その回答で天を仰ぐ。

「私の顔と名前、あの人に知られるのか…」

 

 これが私の伝説との出会い、そのきっかけだった。




 



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