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英雄高校の昼休み

「ちょっと来なさい!!」

 昼休み、昼食を食べ終え、男友達とくだらない話を繰り広げていた俺の腕を掴み、そう言ったのは留学生、レインボークリスことクリスティン・メイトリクス。

「な、なんだよ!?」

 グイグイと引っ張るその手に、俺は抗議する。

「うるさい!!大切な話!!いいから来なさい!!」

 あまりの剣幕に思わず俺は従い、引き摺られる様に廊下を歩く。


「許すまじ光…」

「もうあいつは友だちではない、裏切り者…」

「戻って来たら尋問…いや、拷問が必要だな…」

 そんな俺に向けどす黒い気を放ち呟く友だちだった奴らと、

「うそ〜、クリスティンちゃん、マジで〜!?」

 キャアキャアと色めき立つ女子たち。

 数多の誤解を生みながら俺とクリスティンはふたりっきりで校舎から離れた卓球場にいた。


「で、大切な話ってなんだよ…」

 溜息混じりに質問する。

「まず1つ目、凛樹は無事?あの子何回も連絡するのに反応がないわ。」

 真剣な目でそう問うクリスティン。その声からは、本気で心配しているのが伝わると同時に、後悔や歯痒さが感じられる。

「無事だ…今は検査の為に入院中。デバイスは没収されてるから見れてない。」

「そう…よかった…」

 俺の答えに、安堵の息を吐くクリスティン。

「じゃあ帰るぞ。」

「それともう1つ…」

 帰ろうとした俺の腕を再び掴むクリスティン。


「パパが日本に来るわ。百道神娘…アンタのママに会いに。」

「…なんで?」

 あまりにも脈絡のない唐突な話に理解が及ばなかった。

「なんでウチのババアにワンマンコマンドーが…」

「それが分かんないからアンタに聞いたの!!」

 

 元世界一位と最強、その2人の子は理解出来ない親の因縁に首を傾げた。


「ひぃかぁるくぅ~ん…」

 その後教室に戻って俺は、殺気を放つ同級生と決死の戦いを繰り広げた。

「クリスティンちゃんとどんなお話したのかなぁ~?」

「他人の…十数分前まで友だちだった男の幸福が憎いぃーーー!!」

「裏切り者に制裁を!!」

 狂気に駆られた同級生は、それまでとは比較にならない程の力を発揮し俺に襲い掛かる。

 その力を普段から発揮しとけばもう少し成績は良かったんじゃないか?

 そんなことを思いながら戦いを続けた。


 パタン、と教室に響いた本を閉じる音。

「香紅璃様…」

「黒瀬…」

 本を閉じ、無言で立ち上がった黒瀬香紅璃は一身に注目を浴びながら、全てに対し一瞥もくれず、ゆっくりと教室を出た。

 その間、まるで時間が止まった様。


「お前のせいで香紅璃様に嫌われたかもしれないじゃないか!!」

「うるせぇ非モテ王!!お前を好きな奴は存在しねぇ!!」

 再開した男たちの戦いは、昼休みが終わるまで続いた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



 トイレ行きたい…


 ワイワイと騒がしい昼休み。

 普段はデバイスにインストールした書籍を読んでいるが、その日は家にあったおじいちゃんの所蔵していた本を呼んでいた。

 電子とは違う紙の良さを味わいながら、話す相手のいない私は読書に没頭していたのだが、突然襲って来た尿意にブルッと身を震わせ、慌てて本を閉じた。

 思わず勢いよく閉じたそれは、想像した以上に大きな音を教室に響かせた。

 一斉に私に注目が向くのが分かる。

 

 トイレ行きたいから慌てたってバレたらいじめられる…

 私は長年ぼっちとして生きてきた。

 その過程で手に入れた後天的能力、『無の境地』に到っていた。

 今の私には何も見えないし、聞こえない。

 そう自己暗示を掛ける。

 あくまで自己暗示で、実際には見えてるし聞こえてる。ただ、そうなっている様に振る舞うだけ。

 実は凄くストレスが溜まるし、夜思い出してベットで後悔に悶え本気で泣く。

 しかし、今は時間が無い。

 ゾーンに入った私は、世界が私1人になったつもりで教室を出、廊下を歩いた。


 目指すべき場所(トイレ)に向かって。












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